19・反省会
「正座」
俺の前で、神妙な顔で正座しているブロックヒロインズ。
口答えして来るかとも思ったが、案外素直だ。
そりゃまあ、そうだろう。
あやうくマスターを殺しかけたのだから。
「私たちは、ハイボールの処理中にモメて失点しました、はい復唱」
「「「私たちは、ハイボールの処理中にモメて失点しました」」」
意味はそのうち教える。
今は、怒っているというのが伝わればいい。
人によってはパワハラと取るだろうが、殺人未遂したという前提が抜けている。
ここで甘い対応を取れば、いつかまた同じことをやる。
その時、人が死ぬ。
主に俺が。
「前にも言っただろう。お前らはプロだ。プロならプロの仕事をしろ」
「「「はい」」」
彼女たちにはプロ意識がある。
それは美徳だ。
だからそこに期待している。
「なんや、キーボールの監督みたいやなあ」
キノコの上に立っているサルルバーンが呑気に見学していた。
助けてくれたのは彼だ。
落下する俺を、鎌で引っ掛けて地面の激突を回避してくれたのだ。
ちゃんとカエルの死体も避けてくれたおかげで血や体液や油を浴びずに済んだ。
ちなみに、キーボールとはこの世界のサッカー的スポーツだ。
キーパーとゴールだけあるイメージで、そのゴールには得点ボードが張られており、そこに当てたらその得点が入るというシステムだ。
基本は1~5点のボードがあって、大逆転もあるのが魅力だ。
要はストラックアウトとPKを足したようなゲームだ。
どこを狙うか守るか、その駆け引きがあり、監督も存在する。
「よく言われます」
厳密には前世でサッカーでだけど。
「それより、元に戻る方法わかったで」
「えっ」
「このキノコや」
キノコは小さくなった俺たちと同じくらいの身長がある。
よく見れば、キノコは廊下の中をぐるりと輪を描くように生えていた。
……あれ。
これ、昔見たことがあるぞ。
たしか、子どもの頃だ。
豪華な絵本みたいなやつで……妖精の本!
そうだ、あれだ!
「フェアリーサークル!!」
「なんや知っとったんかい」
キノコが輪になって生えることは、よくある現象……というか生態だ。
それを、妖精の輪と呼ぶ伝承が欧州にはある。
その輪の中は異世界への扉だとか、輪に入ると姿が見えなくなるだとか、何百年も経ってしまうとか、色々バリエーションがある……みたいなことが書いてたはずだ。
だいぶうろ覚えだが、おふくろがもっていたもので大好きな本だったので何度も読んだのだ。
欧州リーグに行っていたら、あの世界に近づけていたのか……と思ったが、それそのものの世界に来てるんだった。
「小人になる呪い……みたいな感じですかね」
「【アンチスキル】というやつやな。まんまとかかってもうたわ」
【アンチスキル】……魔物が使うスキルの総称だ。
その中には、呪いとしか呼べない効果を発揮するものもある。
「えと、それでどうやって解決するのー? あと、足がしびしびなんだけど……」
「ああ、もう正座はいい」
「良かったー!」
その気になれば、上手い事ブロック時の脚の畳み方をすれば平気だろうに、こいつらなりに反省はしていたということだろう。
「で、解決法だが……【アンチスキル】は基本的に術者を倒すのがセオリーだな」
「ま、そういうこっちゃ!」
サルルバーンがキノコを薙ぐ。
「なら、拙者らも!」
ヒロインズもキノコを切り倒していく。
最後の一本が切り倒された時、ボンッと俺たちの体が元のサイズに戻った。
「おお、戻ったー! ……って、箱から変形した時のサイズと変わらないから、ボクら的にはそんなに感動もないんですけどね」
「色々台無しだな……」
「しっかし、こんなキノコの【アンチスキル】でここまでのことが出来るなんてねぇ……参っちゃうね」
「……でもおかしい。廃魔城とはいえ、ドラゴンゾンビにトラップモンスターまでいるなんて、これじゃ城の機能が戻ってるようなもの」
確かにそうだ。
廃魔城は危険度が高い訓練場として使われているとはいえ、ここまでの魔物が出て来るのはおかしい。
サルルバーンがいなければとっくに全滅している。
「……油やな」
「え?」
「魔族は、魔界にしかない油で動く。こないに魔物が出て来るゆうことは、【魔界大隆起】がもう始まっていて、油が流出しているとしか考えられん」
「!?」
「その証拠に……ほら、来るで!!」
廊下の奥の扉が開き、首なし騎士が戦車で突っ込んできた――




