15・スキル覚醒
熱風が顔のそばを撫でる。
ドラゴンゾンビが吐いた火は廊下を焼き払った。
だが間一髪、俺たちはアイロが壁に開けた穴から、外に飛び出していた。
「あっぶなー! ボクの脚じゃなかったらまる焼けでしたよ!」
「ブロックでも焼かれたらアウトか」
「当たり前ですよぅ! ちょっと頑丈な生身みたいなものです!」
ツィニキートの低ランクの爆炎とドラゴンの炎では流石に違いすぎるか。
「悪いな。でもお前なら戻れると信じていた」
「! ふふーん! そうですよ! ボクなら楽勝ですからね」
ちょろすぎる……。
大丈夫なのかコイツ……。
悪い大人に騙されそうだ……。
……ならば俺は悪い大人か。
「よし、フォーメーションを組みなおす」
ここは外といっても中庭のようなところで、周囲を壁に囲まれている。
奥側には渡り廊下から見え、あそこからならドラゴンの背後に回り込める。
「エルピは穴から戻って注意を引いてくれ。その間に――」
「拙者が後から攻撃、という寸法かね?」
「その通りだ」
「ふぅむ、ま、いいでしょ」
手数が多く、素早いエルピはFW適正が高い。
道化特有の駆け引きが出来るのも、ずるい戦術――マリーシアの素養がある。
才能はあるがサボリ癖のあるナダレも、本来はFW向きだ。
前線から戻らず敵陣に張り付いてごっつぁんゴールを決めるタイプの。
だが、三人しかいないのと、細い廊下でツートップ戦術は向いていない。
いまは攻撃的MFのような使い方をして、機嫌を取りつつ運用するのがいいだろう。
「……じゃあ私は?」
「俺を守ってくれ」
長距離攻撃が出来るアイロは、俺のそばにいても稼働できる。
あり方としてはGKだが、フリーキックも得意なタイプ。
南米サッカー好きなら、まず一番に浮かぶあのGKのイメージだ。
「……了解。安心して。ハエ一匹通さないから……」
一番外側の壁を破壊してサルルバーンの元に逃げ込むという手もあるが、さきほど壊した内壁より遥かに頑丈そうでリスクが高い。
なら、奴を倒す方が確実……!
「シュルルルル……」
相談している間にも、ドラゴンがのそのそと廊下を進み、首を穴から突き出して来た。
「エルピ!」
「あいあいさーのホイッ!」
エルピは、くるくると回りながらドラゴンを幻惑する。
腐りかけの脳みそでは、それについていくのが精いっぱいに見える。
その隙に、俺とアイロは距離を取る。
同時に、ナダレが渡り廊下へ駆けていく。
「フシャアアアアア!!」
ドラゴンは翻弄されたことで怒り、壁を腕で破壊しながら体をねじ込んでくる。
「大チャーンスぅ!」
これを逃すごっつぁんゴーラーではない。
壁越しでよくは見えないが、背中を滅多切りにしているらしい。
「だはははは! 畑を耕してるようなもんだねぇ!!」
「ガアアアアアアアア!!」
ドラゴンは体をよじり、ナダレを吹き飛ばそうとする。
壁がめちゃくちゃに崩れていく。
「おおっと! 流石にこりゃまずいんじゃないのぉ?」
巨体の大暴れで、天井まで亀裂が広がっていく。
中庭は吹き抜けだからまだいいが、廊下側が危険だ。
「戻れナダレ!!」
「言われなくても戻りますよぉーと!」
だが、ナダレが戻るのをドラゴンは読んでいたのか。
俺たちが部屋に揃うや、大きく口を開いた!
「カウンターか!!??」
攻撃の後が一番危険。
そんなこと、わかりきっていたのに!
「マスター! 私の後ろに!!」
コートを広げ、俺の前に立つアイロ。
ドラゴンの口の奥で、炎がまたたいた瞬間、小柄な影が視界を横切った。
地面すれすれを回転しながら飛びこんだのはエルピ。
「よいしょー!!」
ドラゴンの顎を真下からカチ上げた!!
なんちゅう無茶を!!
「バフォッ!!??」
口が閉じられて逃げ場が無くなった炎が、ドラゴンの鼻や目からも噴き出す!!
「やーりぃ!! 流石ボク……ってあれぇ!?」
頭を炎上させながらも、ドラゴンの動きは止まらない。
大暴れしながらこっちに突っ込んでくる。
「く……!」
アイロが銃撃で応戦。
しかし、ドラゴンの勢いは止まらない。
このままでは自動車事故のように壁に挟まれて全滅だ!!
「くそっ、火力が足りん!」
「「「大丈夫!」」」
そう応えた三人の体が光っている!
【スキル】が覚醒しようとしているのか!?
「双剣スキル【クロスカウンター】!!」
「剣術スキル【三日月返し】!!」
「射撃スキル【スコーピオン】!!」




