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12・不埒な来訪者と不吉な来訪者

 天井から落ちてきたのは刺客――ではなく、ハイ・ヴォルクだった。

 尻を強打して涙目になっている……。


「痛かぁ……もうなんなん!」

「侵入者……始末する……?」


 ハイに銃を向けるアイロ。


「やめろ。敵じゃない」

「そ、そうたい!」

「でも、侵入者なのは間違いない……」

「そうだねぇ。男子寮の天井に忍び込んでるとなるとぉ……これは変態というセンが濃厚になるねぇ」

「あははー! 変態だ変態だー!」

「変態じゃなか!!」


 ブロックヒロインたちに煽られて憤慨するハイ。


「……じゃあ、何をしてたの?」

「それは……そのぅ……」


 急にもじもじとしだすハイ。


「やっぱりコイツ始末したほうがいい……」

「もー! 護衛しようと思ったったい!!」

「護衛? 何でだ?」

「そら、アンタが次から次に襲われるからたい!」

「お、おう……」


 まぁ、確かに、何度も襲われた。

 ツィニキートがあれで諦めたとも思えないし、乱闘でぶちのめした特待寮生は他にもいる。

 寝込みを襲われる可能性は、それなりに高いだろう。


「とかなんとか言って、実は夜這いする気だったんじゃないかと、拙者ぁ睨んでるね」

「なっ、なななななななな!!!???」


 顔を真っ赤にするハイ。

 獣人は独占欲が強く積極的なタイプが多いが、流石にハイとは幼馴染にしても兄妹に近い。

 それは考えにくいが……。


「う、うううううううちが、そ、そそそそそそげないやしか女なわけなかろうもん!!」

「これは動揺してますなぁ。ボクの第六感によるとこれはクロですね!」

「もう、好かーん!! わーーーーーーーん!!」


 いじられ放題だったハイは、泣きながら部屋を飛び出していった。


「いや、俺の部屋から泣きながら出ていかれるのも、それはそれで誤解を……」


 だが、止める間もなくすっとんで行った。

 あの身体能力には追いつけない。

 ……あーあ、こりゃ確実に噂になるぞ……。

 と、頭を抱えていると――


「失礼するぞ」


 ノックもせずに、ファルソーダ先生が入って来た。

 早い……。


「あー、あのハイ・ヴォルクの件は誤解で……」

「何を言ってるんだ。ハイに何かしたのかお前は」


 しまった。別件か。

 完全に藪蛇だ。


「い、いや、そんなことは」

「まぁいい。若さの暴走は適度な範囲でやっておけ。それよりお前と、神器たちに緊急で話がある」

「おや、拙者たちにも? これは面倒な気配がしますねぇ……」

「ボクが目立てるチャンスかも?」

「悪いけど、ちょっと静かにしといてくれ」

「もー、マスターのばか」


 ぷんすこする神器たちはほっといて。


「緊急とは、何かあったんですか?」

「【覚醒実習】を早めることになった。お前たちは強制参加が決定した」

「は?」


 何を言ってるんだ。

 流石に早すぎる!


「【覚醒実習】って何~? マスター?」

「【スキル】を目覚めさせるための強化合宿だ。普通、卒業が近くなった2年生がやるもので、入学したばっかの俺たちがやるようなものじゃない」

「その通りだ。だが、【魔界大隆起】がいつ起こるかわからんという時に、座してもいられないという判断が、元老院から下った」

「……!」


 元老院はこのバイルカルキ国の実質的、最上位権限を有する機関だ。

 すなわち、その決定は覆せない。


「無論、1年坊にやらせるのは危険すぎるから、全員参加じゃない。有望株だけだ」

「……まぁ、わかりました」


 サッカーでも、かなり無茶な引き上げはあるものだ。

 流石にその若さで上位カテゴリに引き上げられたら壊される……と、そんなケースはよくあった。

 多くはその通り大怪我をして将来を棒に振るが、まれに大天才がそのまま活躍するということもある。

 その意味では、単純な善悪での判断はしにくい。


「それで、場所はどこなんです? 毎年違いましたよね」

「……ああ。むしろ問題はそれでな」


 ……嫌な予感。


「あ、ヤな予感」


 エルピと意見が合った。


「そう言うな。私も頭を抱えている」

「……どこなんです?」

「……廃魔城だ」

「はぁ!!!!!???????」


 南米の麻薬カルテル本拠地並みの危険地の名前に、俺は思わず大声を上げていた――

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