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X線人間標本(仮)——人間観察掌編集  作者: 冬木香
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ルッキズム

「なんか最近美人が増えたよな」


 そう言われて周りを見渡す。渋谷のスクランブル交差点には確かに美男美女しか見当たらなかった。アニメの世界にでも入ったような気分だ。美の基本水準が上がっている。

 立ち止まっていると肩がぶつかって慌てて振り返る。「すみません」と謝りながら相手を見てみると若い女だった。相手は「こちらこそすみません」と言って会釈をして去っていった。


「おい、とんでもない美人だったな」


 ニヤニヤと友人が肩を叩いてくる。


「ああ、そうだな」と上の空で返す。


 隣で先ほどぶつかった美人がどんなに美しかったか延々と語っているのが聞こえたが、正直自分には他の通行人との違いはわからなかった。


 交差点を渡り終えて駅前に着くと、何やら人だかりができていた。


「一発ギャグやりまーす」


 若い女が大声で人を集めて芸をしているらしい。


「おい! とんでもない美人だぞ!」


 彼女はコーラの一気飲みをしようとして失敗し、鼻からコーラを垂れ流して涙目になっていた。


「めっちゃ面白い子だな! ちょっと声かけてくる!」


 そう言って友人は走って行った。

 自分には他の通行人との違いはわからなかった。

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