アイドル
大学に入って僕は初めて一目惚れをした。
長い黒髪に整った顔立ち、そして天真爛漫な笑顔がとても魅力的だった。
僕は彼女に少しでも近づくために努力を惜しまなかった。
ジムに通い体を鍛え、中身を磨くためにマナー教室にも通った。
とにかく彼女に相応しい男になることだけを目標に色々なことを身につけた。
いつからか女の子に声をかけられる回数も増えた。
それが自信に繋がって、ますます努力を惜しまなくなった。
そして理想の男性像に近づいたと思えた僕は彼女に告白することを決意した。
ゼミの終わりに彼女を呼び止めると、人気のなくなった講義室で彼女に告白をした。
僕は自信に満ち溢れていた。これだけ努力をしたのだから当然だ。
彼女に相応しい男になるためだけに、全ての時間を注ぎ込んだのだ。
ただじっと彼女を見つめて答えを待つ。
不安は一切なかった。視線が交じり合い、体温が上がるのを感じる。
目が合った彼女は、何かを考えるように視線を逸らす。
そして彼女は口を開いた。
「ごめんなさい。私、ストイックな人って苦手なんだよね」
そう言っていつものように天真爛漫に笑った。
その笑顔はとてもグロテスクに見えた。
僕の愛した彼女はどこへ行ってしまったのだろう。




