第6話:ヒュドラ・ストライクソード
第6話:ヒュドラ・ストライクソード
エルザイムは少し砂っぽい空気と、春なのに少し寒い。そして……冒険者の貧富の差が激しいと感じた。
エルザイムはルピー属性と呼ばれる物理的に硬い代わりにレア鉱石やルピーを多く落とすモンスターが豊富に湧き出る。だから貧しい冒険者や金策中の比較的裕福な中堅から上級冒険者が集まる。逆に言えば硬い装甲を貫けない装備しかない初心者冒険者あるいは貧しい冒険者はリスクを承知で挑む必要がある。だが、俺には秘策があった。
まずは武器屋に寄る。さすがにいきなり神器のお店に行くのはお金が少なすぎる事もあるのと、秘策の武器を作るにはスカーレット・リブレイドの改修予算も足りない。
簡素な石壁で出来たお店のドアを開けるとカランカランと鐘が鳴り、「いらっしゃい」と店主さんは声をかけてくる。
「すみません、片手剣で柄の先がスパイクになってる物ってありますか?」
店主さんは不思議そうな顔をして答える。
「あるにはあるが……初心者にはおすすめできないなぁ……ストライクソードは自分や味方を傷つけるぞ」
「冒険者育成機関卒業だから心配はいらないよ。それとも売れない理由が……?」
店主さんは慌てて、「いえいえ」と答える。
「実を言いますとこういうスパイク付き片手剣は人気が無くてですね……無駄に重く、重心も掴みにくく、扱いづらいという酷評を受けてまして……あの本来の片手剣の鋼製なら8万ルピーでお売りしますが、ヒュドラの毒も混じったスパイク付き片手剣買って貰えませんかね……?5万ルピーでお譲りしますよ」
え?大特価過ぎないか?ヒュドラの毒は魔物の生体組織を破壊することで冒険者には重宝されるはずだぞ?片手剣なら100万ルピー下らない事もよくある事だ……
「その……破格過ぎて怪しいのですが……?」
「このヒュドラは人間の生体組織も壊すほどの毒性がありまして……冒険者達は犯罪者の疑いをかけられるのを恐れて買わないというのと味方を傷つけたら治療費が何百万ルピーにもなるので買われないのですよ……お客さん新人冒険者に見えますが技量はあるとお見受けします。だから買ってもらえませんか?」
俺の答えは決まっていた。
「6万ルピーで小型爆薬丸も付けるだけ付けて欲しい」
すると店主さんは笑顔でスパイク付き片手剣と木箱に詰まった巨大おにぎりクラスの大きさの小型爆薬丸を渡してくれる。
「お客さんは変わってるね。もしかして……ルピー属性の突破方法が……?」
「また来た時にお教えしますよ。それでは」
チップとして100ルピーもつけ加えて、お店から去り、家にもどる。
「さてと……思わぬ強力な武器が手に入ったな……」
武器だけ見れば俺の戦闘力はSランクレベルの戦闘力と見て間違いない。だがヒュドラのスパイク付き片手剣「ヒュドラ・ストライクソード」は本当に危険だ。一撃でも味方や自分を傷つければ破産か大損失となる。ヒュドラの毒は人間なら恐らくタイムリミットは2時間。新人冒険者の俺にそんな短時間で銀行が融資してくれるわけでもない。冒険者融資機関ですら、鼻で笑って返されるだろう。
その時胸ポケットに入れていた魔導通信機が鳴る。
「レギオス?久しぶりだね、と言っても卒業パーティーから数日か」
「元気そうだね、ディレオス……僕のことは今でも不思議に思ってるか?」
俺は冒険者育成機関の入学式の話も交えながら今の気持ちを話す。
「まぁ、最初は関わりたくないと思ったけど自らの若命の運命に抗う姿はカッコイイと今でも思ってるよ。今はやっぱりBランク首席?」
彼は黙る。何か聞いたらマズイことを聞いたか?
「新しくパーティを作ったんだ……魔法戦力を中心とした魔法騎士系パーティ「マギアス」だ……よかったら来ないか?僕の読んでいた本を見て何故?ではなく、目的を聞いてくれた君だから頼める事だ」
「ごめんな……卒業決定でパーティが決まってるからそれは破りたくない……だけど都合が合えば支援するよ。約束する」
レギオスはしばらく黙った後に一言。
「すまなかった。いざと言う時は頼りにさせて欲しい、僕は君の知能と発想がSランク以上だと確信してるから……じゃあまた今度」
「あぁ、またな」
通信を切ると今月で500ルピーも通話したことになっていた。魔導通信機の通信料は距離と通話時間で決まる。今月はエルザイムのこの家の契約の通話の時点で200ルピーだったからレギオスは相当遠い所にいるのだろう。
さて、明日にでもルピー属性モンスターに対する必勝法を試す時だ。今日は早めに休もう。
実を言うとワクワクして眠れなかった。ロケットパンチのスキルは俺の獲物とも言える必殺技だ。だが剣術はロケットパンチ後の保険にもなるし、汎用性も高い。最弱スキルと呼ばれるロケットパンチを必殺技にする為にはその必殺が通用しなかった時の「奥の手」が必要なのだ。
正直ロケットパンチを必殺技にするなど人生一度切りしかチャンスがない固有スキル習得で使うなど他の冒険者から酔狂にも程があるかもしれない。だが、俺はこれを必殺技にすると11年間決めていた。
そして迎えた翌朝、3個の小型爆薬丸とヒュドラのスパイク付き片手剣を持ち、朝焼けの平原へと向かった。村の再興の第1歩が始まろうと思ったら日の出の鐘がなる。勝った、上級冒険者や高ランクパーティが荒稼ぎする前に行動する、これが第1段階である。
ご拝読ありがとうございます!こんばんは!黒井冥斗です!投稿二日目ですが、昨日は予約投稿を済ませた後に床屋へ向かったら不規則な休日日でした…ボサついた髪は落ち着かないですね…皆様も髪の手入れは早めにをどうぞ。それでは、いい夜を!




