第5話:新たな旅立ちエルザイム
第5話:新たな旅立ちエルザイム
その日の深夜にレスティアが訪れた。
泣いてるところは見せたくなく、無理に笑顔を作る。
「お疲れ様首席殿、俺は結局次席止まりだよ」
「ディレオス……私の家に来て……お父様ならロケットパンチを選んだディレオスも問題なく養子にしてくれるから!」
俺は少しため息を漏らし、本音を漏らす。
「俺は……しばらく自由な冒険者になるよ……ごめんなレスティア……」
「ディレオス!」
椅子に座っていた俺にすがりつくようにレスティアは抱きつく。強く、背骨が折れるかもしれないくらい強く抱きしめる。
「私が、あなたの家族になるから!」
「ハハハ……レスティアは昔から変わらないな……実は……俺の所属する卒業後のランクBパーティはレスティアとは違うんだ……だから主人の迷惑にもならないように家も借りる契約をした。今まで、本当にありがとう。だからこそ強くなってから戻ってくるよ」
レスティアは俺に初めての泣き顔を見せつつ、手を握ってくれる。
「私、絶対に人類の天座を諦めないから!だからディレオスも……!」
「そうだね……俺はまず金を稼いで村を再興したいと思ってる。神の摂理とかも勉強した。結界系統の魔法の勉強もした。あとは村を再興するお金と土地を豊かにするだけだ。その後は人類の天座を目指そうかな」
レスティアは一旦、俺から離れ、ドアの方を向く。
「人類の天座……約束の場所だからね……」
彼女はそう呟き、部屋を出る。
俺も寝る準備するかと思いながら、いつも持ち歩いていた両親との唯一の旅行で撮った山の写真を枕の下に入れて眠る。
「母さん、父さん……お別れの挨拶が言えなくてごめん……」
そんな一言がポツリとごぼれ落ちた。
翌朝、主人にレスティアとのパーティが分かれたという事とそれに伴って、勝手に家を契約したことを告げさせてもらった。
「ディレオス君の行動力には毎度感心させられるよ。Aランク試験に受かった時にまた来てくれ。君を歓迎しよう、それと……これを受け取ってくれ」
主人からジャリと鳴る皮袋を置いてくれる。
「40万ルピーだ。私からの卒業祝いと娘の教育給料だと思って構わない。半年弱は生活できるはずだかは当面は困らないだろう」
「ありがとうございます。主人、命の恩人です」
主人はチーンとベルを鳴らすとグラインさんがカバンを持って訪れる。
「ディレオス様、荷物はまとめておきました。馬車も準備しております。新居までご案内しましょう」
「ありがとうございます、グラインさん」
俺は深々と頭を下げる。
「……ディレオス君、君に1つ譲りたいものがある」
主人はそう言うと袖から鍵を取り出し、主人の部屋に昔からあった大きなロッカー型金庫を開ける。そこから1本の剣を取り出す。
「これは当家の絆の証だ。焔煌龍の利刃「スカーレット・リブレイド」、普段は隠しておくのがいいだろう」
焔煌龍……冒険者育成機関で学んだことだが、主人のこのロムス家は焔煌龍と呼ばれる複数の街を焼き尽くした炎獄の龍、階層宮の第60層のボスモンスターの異常出現時に討伐した。その時の素材は複数の騎士家・冒険者家系などで分け合ったとの事。
「こんな凄い物受け取れませんよ!第60層のボスモンスターの装備なんて……」
「ロケットパンチのスキルを取ったんだ。片手でも戦える戦力になるのに必要な投資でもある。受け取ってくれないなら新居に郵送するぞ?」
俺は人生で1番頭を下げて、有難く受け取る。重さは3kg弱ほどで、紅い刃に黄金に輝く刃文、そして鍔に付けられた焔煌龍の紫の瞳は、軽く見るだけでも心を恐怖に飲み込まされそうになる。
「我々ロムス家はディレオス・アークラーB級冒険者を全力で支援させてもらう。では、その日を楽しみにさせてもらう」
「はっ!主人の気持ちを裏切らない事を約束します!それでは、しばしのお別れになります!」
俺はこの5年間に毎日やらされて、磨きあげられた、冒険者の正姿勢をして、グラインさんと共に馬車へと向かう。
「東の王国エルザイムまで向かわれるのですね」
馬車に乗ってしばらくした時にグラインさんが口を開ける。
「はい、ルピーを多く落とすモンスターが多いそうなので……」
「ディレオス様、あなたのような故郷思いの冒険者は初めてお会いできました。改めてお仕え出来たことを誇りに思います」
「自分こそ、短い時間でしたがお世話になりました」
最後に男同士の固い握手をした後に、グラインさんからメモ用紙を渡される。
「これは?」
「エルザイムは私の兄の家がありまして……支援冒険者の神器生成『レジェンドウェポン・ジェネレード』の固有スキルがあるので、よろしかったらその剣とグラインの名を口に出せば少し値引きしてもらったり、優先的に整備していただけるかと……それでは」
俺はグラインさんにも冒険者の正姿勢で見送り、街壁に囲まれたエルザイムの門を叩き、大通りから少し離れた、二階建て6部屋の冒険者住まいに入り、自分の部屋の番号の部屋に入ると八畳一間のフローリングに白いベット、木でできた椅子と机、棚とタンスが1個ずつ、そして武器掛けが剣3本分。
そして家賃は月々3万ルピー、新人冒険者の中には5000ルピーの半個室の狭い部屋に住まざるを得ない方々も多いと聞くが、俺は恵まれてるほうだろう。
スカーレット・リブレイドを横向きに立て掛け、普段使い用の剣を買いに街へと繰り出す。俺の新しい冒険の始まりだ!
ご拝読お疲れ様です!そして黒井とディレオスの新たなスタートダッシュを見ていただきありがとうございます!文字数が安定しないのは申し訳ございません…話数を重ねる毎に少しずつ直るようにはなってるのでご安心ください!そして毎日20:00更新となります!皆様のこれからの日々のちょっとしたお楽しみになれば幸いです!それではお疲れ様でした!




