第41話:代行者からの魔力錬成は干物になるまで続く
第41話:代行者からの魔力錬成は干物になるまで続く
翌朝、夜明けと共にそれは訪れた。
玄関がノックされ、その行儀の無さからすぐに、ゼルロットさんだと分かり、飛び起き、寝巻き姿で対応する。
「まだ時間は……」
「魔力錬成に定時なんてあるかよ。さっさと始めるぞ」
少し時間を貰い、戦闘用の軽装に着替えた時に思い出す。レオスリーダーとの鎧購入まだだったな……そんな古い約束を思い出し、玄関へと戻る。
まだ陽が空を照らしきれてない中で初夏の涼しげな風を浴びながら、庭に立つ。
「さてと、魔力全開でロケットパンチを俺に打ってみてくれ。そこから錬成教育の算段をつける」
「純粋な魔力のみでですか?」
「そうだ、装備は使うなよ。まぁ、その機械化された腕なら、可能な限り魔力と固有スキルのみで打ち込んでくれ」
俺は腰を下ろし、腕を後ろに下げて、叫ぶ。
「弾丸殴打『ロケットパンチ』!!」
右腕が凄まじい速さで飛んでいき、ゼルロットさんは手を前に出すだけ。怪我しないか不安だったがゼルロットさんの前で腕が止まる。激しく、空気に亀裂が走りそうな拮抗状態が続いていたが、腕が負けた。
「ふむ、代行者で言うなら新入りの方が魔力量的には多い。だが、ディレオスからは魔力の動線は力強く太い。魔力量不足だな、そして瞬発力というより持久力に特化している。持久力も悪くないが瞬発力の方がロケットパンチを活かせるだろう」
俺は頷きながら機械化された腕に挟まれたメモ用紙にメモする。そのまま腕を取りに行き、また付けて、少し捻ったりなど調整を済ます。
「これからどのような感じで行きますか?」
「魔力を打ち放つ特訓だな。ディレオスはどんなに頑張っても魔力単体では俺を殺せないからロケットパンチを打たず、魔力を打ち続けろ」
「はい!」
そして、その後は何度も腰を下ろし、腕を後ろに下げて、脳内で魔力を放つイメージをしながら、ゼルロットさんに打ち続ける。
ゼルロットさんは涼しげな顔で、髪や服が揺れるだけだ。俺の力はこんなに弱いのか……
悔しくて、地面に伏せてしまう。
「はぁ……はぁ……」
「魔力切れか?やめるか?」
「いけます……ゼルロットさんに痛いと言わせるくらいにはっ!!」
「その意気だ。さぁ、来い」
俺は膝がガクガクと震えながら、拳を構えて、咆哮と共にパンチする。
「はぁぁぁぁっっ!!!」
その時魔力の動線?青いラインが見えて薄く、細かった。そこに向けて魔力を残る限り全て詰め込んだら数センチ程度だったのが20センチほどまで太くなり、青く薄く輝いた。
パァン!という音と共にゼルロットさんが少し、後ろに下がる。
「やるじゃないか。朝ごはんにしよう、これ以上は魔力は出ないだろうな」
「は……はい……」
ゼルロットさんに担がれ、屋敷へとはいる。真っ先に心配してくれたのはアリーナ姉さんだった。
「ディレオス!朝ごはん出来てるから、座って!レギオスさん!なにか楽にする方法はある!?」
俺の朧気な視界にレギオスという親友が映る。
「ディレオス、無理しすぎだよ。少し魔力を注ぐから楽になると思うよ」
温かいオーラが身体を包み込み、疲労感や倦怠感が和らいでくる。そして視界もハッキリして、頭も普通に回るようになり始めた。
「レギオス、ありがとう。楽になったよ、だいぶ魔力使ったんじゃない?」
「大丈夫だよ、僕の固有スキルはこれの十数倍の魔力を使うからね」
「凄いね……流石入試首席」
彼は特に自慢もせずに、「それは古いデータだよ」と言って、ゼルロットさんから下ろされ、レイラも含めて朝ごはんを頂く。
アリーナ姉さんが作るサンドイッチは絶品で、特にハムのソースがコクが深く、食パンの味の少なさを強くカバーしてくれる。
サンドイッチを食べた後にレイラが率先して、食器をアリーナ姉さんに預けて、へカテオールさんとレギオスは雑談を交わしていた。
「あ、へカテオールさんは今日はレイラの警護をお願いします!俺はゼルロットさんに鍛えられると思うので」
「承知した。レイラ様、この後はどちらへ?」
朝からオシャレと防御を両立させた可愛らしい鎧を着た妹が答えてくれた。
「今日はニューオーダーズの新しい幹部さんとの稽古だよ」
「かしこまりました。飲み物等も準備しておきます」
「ありがとう♪へカテオールさん」
そして俺は午前の錬成第2部へと移動し、再び庭に立つ。
「ディレオス、1つアドバイスだ。お前剣の声が聞こえたことがあるだろ?」
「え、あ、はい!ゼウス・スローター・カーテナの声なら……」
「それは強い魔力が必要な証だ。ディレオス、難しいかもしれないが俺の脳内を殴るつもりで魔力を放ってみてくれ」
そんな無茶な……だが、やるしかない。ゼルロットさんの顔を見て、腰を下ろし、拳を下げる。
「ほーう、線が繋がったみたいだな」
「え?」
すぐにゼルロットさんが返事をする。
「集中切らすな。これで来い」
「行きますっ!!」
今度は蒼白い雷のようなものが右腕から放たれ、ゼルロットさんを直撃する。
「大丈夫ですか!?」
しかし彼は傷1つどころが焦げた形跡すらなかった。これが代行者パーティの最強クラスの魔法幹部……
「これなら階層宮第10層くらいなら戦えるな。どれくらい魔力使ったか分かるか?」
「え、えーと……あんまり?」
「そう、そこが大事だ。少ない魔力で量を増やすにはかさ増しするしかない。それも高純度な魔力を維持できるもの。それが相手と魔力の動線を繋いで、敵の魔力すら利用するのがこの錬成の目的だ」
そのまま昼食まで魔力を打ち続けて、半分干物になりかけた俺をゼルロットさんが運び、レギオスが魔力を注入する流れになった。
昼食はディレオス街で初めて放牧された牛の肉を使ったステーキという事もあり、まだスタートラインに立ったばかりのこの牛がどんな味か楽しみで仕方なく、ワインを軽く嗜みながら待つ。無論レイラはぶどうジュースだ。
「お兄様!レイラこの牛さんの牧場の警備も朝から見回りしてるんだよ!」
「偉いなレイラ。お兄様は寝坊助だから……」
するとレギオスが会話に混ざってくる。
「レイラちゃん、ディレオスは冒険者育成機関時代に3回寝坊して、教官に寝た秒数分の腕立て伏せされられたんだよ。ちなみに最高記録は3600回」
「え!お兄様1時間も遅刻したの!?」
「僕が相部屋だったからその時以来僕が彼の点呼確認もするようになった。ねぇ、ディレオス街長?」
「恥ずかしい限りだよ……」
そんな学生話をしているとなんだか、レスティアの事を思い出す。彼女は今どこで何を……
「なぁ、レギオス。レスティアに会ったんだよな?どうだった?」
「……元気ではあったよ。ただディレオスを超えたい、そしてディレオスと共に人類の天座を目指したいと……」
俺は胸が重くなる。レスティアとの最初の約束を守れてない俺は最悪の男だ。レスティアとレスティアのお父様が居なければ今のこのディレオス街は無かった。俺が取るべき判断は……
「ゼルロットさん、魔力錬成もっとハードで高速でお願いいたします」
「無茶言うな、今日初めてこれだけ成長しただけでも儲けものだ。無理すれば死ぬことに繋がりかねない。とりあえずここの街のアイスワインの甘さとまではいかないが、厳しくやるぞ」
「はい!」
そして、アリーナ姉さんが用意してくれたステーキをワインと共に楽しみながら、ゼルロットさんからは今日はもう休むように言われ、レイラとユルミナさんの訓練の観ることになる。
いつもご拝読ありがとうございます!今日は自分の書いてるまだ未公開作品の魔法×ミリタリー作品第1章92200文字を1ヶ月で書ききりました。1/3は今週で書いてますね。黒井はプロット通りに書くのが苦手なんですよね…プラモデルでもイラストでも説明書通りとか模写通り描くのが嫌いです。
自我が強いのか、なんかの発達的特徴なのか分からないですけど、自由にやらせると基本的に長続きします。
はい、サラリーマンとかには多分向いてないですね…学生時代は高校に入るまでは非常に残念な成績でしたが読書感想文とか作文は比較的高評価でした。なので夏休みは読書感想文は勉強したくない時の切り札でしたね。ちなみに思い出に残ってるのは星座の図鑑です。長話してもよくないのでここら辺で。皆様あと一日で週末です!ロケットパンチシリーズもなんとか区切りをつけたいです!それでは良い夜を!




