第39話:古き友の逃走劇
第39話:古き友の逃走劇
冬がようやく終わりを告げ、短い夏が訪れたレオーサー帝国では皇帝陛下への贈剣の儀が執り行われており、外交団のトップとしてゼウス・スローター・カーテナを手に入れた私は皇帝陛下に献上する。
黒いマントに黒い鎧、胸には金色の十字架が描かれた金髪ロングの男性の皇帝は片手で剣を持つ。
「ふむ……これが現世界最強の剣か。思ったより軽いな。固有スキル発動、魔装支配『デリート・コレクション』」
皇帝陛下の右腕から赤黒い雷が放たれ、神殺しの剣にまとうが弾き返す。
「ほーう、私の固有スキルを破るか。そうでなくては神殺しの異名は付かないであろう。神代の術式団にこれを渡して、持ち主を解除させろ。この剣は必ず我が物にする」
「はっ、かしこまりました」
そして人類の天座のパーティリーダーが次の対話の番として、皇帝陛下の前に立つ。
「皇帝陛下、レイラ氏の誘拐作戦を実行するのでしょうか?」
「うむ、神殺しの剣も、異適の触媒もないディレオス村など植民地がお似合いだ」
「承知致しました。我ら人類の天座の総力でレイラ氏を誘拐しましょう。皇帝の威厳は我らの力に」
そうして、パーティリーダーの私は帝国城のパーティ幹部室へと足を運ぶ。
「閣下!作戦はどうなされますか?」
「はぁ……実際のところ作戦成功は難しいと考えている。何故ならレギオス魔導兵器開発者が逃げたからな。この帝国から最も近い、他国エリアはディレオス村だ。そして奴はディレオスと交友関係もある」
「それでは……」
「作戦開始と共に我々人類の天座は、レオーサー帝国から離脱する。準備せよ」
「「「はっ!!」」」
帝国海岸国境線岩山山脈にて
僕は今必死に帝国と大きな海を隔てる岩山を登っていた。僅かな食料と水。体温を冷酷なまでに奪う冷たい風と雪解け水。
夏頃のこの時期まで待ったが、帝国からの亡命は困難を極めた。
「ディレオス……待ってろ……僕が必ず助けて……やるから……」
視界が少しずつ暗くなり、フラフラと転びそうになる。もはや体力の限界に近い。
リュックからハイカロリーチョコレートを取り出して、かじるが体温や疲れが回復する気配は無さそうだった。
少しだけ、横になろう。そんな誘惑には頭脳派の僕は勝てるわけもなく、ゴツゴツした岩肌を背に、冷たい風というパーティを立てておいて、旧友の為に裏切った僕にお似合いな布団として吹き荒れる。
「少しだけ……寝ようかな……」
意識が閉ざされようとした時に、懐かしい女性の声がした。
「……ス……レギオス……!!」
誰だろうか、今は少し……休ませて……くれ……
次に意識が戻ったのは、少し暖かい砂浜で、軽装備の女性が僕の隣に座っていた。
「レスティア……?」
「あ、レギオス!目覚めたのね!良かったぁ……ディレオス君の剣を取り戻すために密入国しようとしたらまさか、あなたがいたから急遽助けてあげたのよ。感謝してよね」
「あぁ……ありがとう。ディレオス君は……どこ?」
「魔導通信機で連絡済みよ。そろそろ来るはずだから、私はこれで。食料は少し頂いたけど許してね。それじゃあ」
僕はレスティアの手を掴み、縋るように引き止める。
「共にディレオスの為に……戦わないか?」
「私には人類の天座に行くっていう目的があるから。ディレオス君と一緒にね、それを果たせられる時までは会わないつもりよ」
「ディレオスは……君を必要としているはずだ!君達は冒険者育成機関で階層宮第4層を2人で攻略した良いパートナーじゃないか!」
俺の言葉が少し届いたのか、彼女は歩みを止め、一言呟く。
「私はディレオス君を超えたい。冒険者育成機関の時の第4層攻略はディレオス君あってのことだった。だから独りで強くなりたい」
「ほーん、それが本音か。レスティアはん」
「誰!?」
僕の見る限り、彼は第7機動機獣艦隊の司令官……アラム中将!?
「ワイはディレオスはんの友達みたいなもんや。彼が言うとったで、レスティアと共に戦える日を望んでるってな。レスティアはんはディレオスはんのこと嫌いなん?」
「そんなわけないでしょ!私は大好きよ!愛してるよ……でも……周りは皆強くて……優しくて……可愛くて……私なんか……」
「その『なんか』って言うのはよしとき。ディレオスはんはあんたを信用してるんやで。そんなディレオスはんからもう1つの伝言。初恋の盟友が居ないと寂しいとさ。それじゃあワイはレギオスはんを運ぶで」
僕はアラム中将に担がれ、少しずつ、立ち止まっているレスティアから離れていく。
僕はどうするのが正解なんだ……
ディレオス街に着くと、小さな背の青いギルド服に身を包んだ女性が駆け寄ってくる。
「アラムさん!この方がレギオスさんですか?」
「せやで〜、レーチカさん看病してあげてな」
「レーチカ……アスライア衛生騎士長の娘さん……?」
「苗字は合ってるわ。お父様も医者から軍人になったからもしかしたらね。衛生騎士長さんは何してるの?」
僕は言おうか悩んだ。今温かい回復魔法で低体温症と岩山で削れた肌を回復させてくれる女性の父親があんな研究をしてるなんて言えない……
「後悔しないと……約束してくれ」
「大丈夫よ、教えてください」
「毒ガス兵器の研究と対策を両方してる……」
レーチカさんの回復魔法の魔力乱れを感じた。だが、思ったよりは乱れてはなかったのも事実。
「そうか……そうなんだ……お父様の人を救う道を外しちゃったのは私のせいだからさ……」
「レーチカさんは元回復魔法騎士団だと聞いてます。そしてかつて帝国を襲った感染性敗血症を終結させた英雄の1人だと。責任を負う必要は……」
「お父様は15年間国立医大の教授をしていたから、私の魔法が狂わせちゃったのは責任だよ。はい、治療終了。ディレオス君なら丘の邸宅にいるから会いに行ってあげてね」
「レーチカさんはお強いですね」
彼女は笑顔を見せながら「ありがとう」と言ってくれて、診療所から見送ってくれる。
僕は街づくりが進んでいるディレオス街を歩きながら丘を登ろうとしたら、入り口に門番と彼がいた。
「ディレオス〜!久しぶり!」
「レギオス!体はもういいのか!?低体温症になったと聞いているが……」
「レーチカさんの治療のおかげでよくなったよ。そこにいる門番さんは……」
「ヘカテオール聖騎士です。現在はディレオス街長の護衛を務めている次第ですね」
「ヘカテオールさんはディレオスがどんな風に見えますか?」
「……難しいですが1つ確かなのは住人想いであることですね」
僕は「彼は昔から仲間想いでしたから」と返し、丘を登り、ディレオスの巨大な邸宅に入る。
ダークブラウンを基調とした面談室に通され、久しぶりにフカフカのソファに座り、ディレオスと対面で会話をする運びとなった。
「レギオス……知ってると思うが……」
「ゼウス・スローター・カーテナの件は分かる。僕が痺れを切らしたのもそれが原因だ。親友の大切な武器を奪う皇帝に仕えるのは御免だからね」
「あとレイラについては……?」
「向こうでは異適の触媒と呼ばれていた。正直少女のことを触媒扱いするなんて狂ってると思うよ」
僕は今伝えなきゃいけない事を脳内でまとめるが、回復魔法で腹が満たされるわけでもなく、少し疲れが出始める。
「ディレオス……すまない……食事と仮眠取らせて貰えないか?」
「あぁ。そうだよな、本当にここに来てくれてありがとう」
僕は綺麗なクラシックな客室のベッドに寝かされ、30分後の食事を待つだけとなった。
そしてディレオス私邸 ギルド本部会議室では
「君が新しくニューオーダーズ入ってくれるという不屈の紅剣士かな?」
赤い髪の女性冒険者は冒険者の正姿勢で応えてくれた。
「はっ、ディレオス閣下。ユルミナ・フェニーティスSSランク冒険者です。現在はギルドを離席し、こちらのニューオーダーズに希望した運びとなります」
なるほどね。かなり綺麗な冒険者の正姿勢だ。相当な修羅場はくぐり抜けた感じに思える。
「帝国への復讐心があると聞いたけど、この街は無闇に戦争を仕掛けるつもりはない。向こうが動くまではこちらも動かない。それは良く理解して欲しい」
「何故ですか!ここまで強力な味方がいるのに!」
「帝国軍人も、帝国の冒険者も人間だ。無闇に殺生をするつもりはない。神殺しの剣を奪われたり、妹に下衆な言葉をかけられたが、まだ命を奪うほどでは無いと考えている」
ユルミナさんは「何かあればギルド本部へ」と言って、一礼し、去ってしまう。
「はぁ……面接って大変だなぁ……」
その時扉が強く開かれた。こんな開け方をする人物に数名心当たりがあるのも変な話だなぁ……
「ディレオスはん!大変や!あんたさんの教官と代行者が戦っとるで!!」
想定以上のトラブルに頭を抱えつつ、席を立ち、駆け足で現場へと向かう。
いつもご拝読ありがとうございます!
そしてこの作品のストックが無くなりつつあるのに、別のミリタリー作品の執筆が楽しくてなかなか手が回らないです笑
正直自分と同じ脳を持ったもう1人が欲しいですね。黒井はミリタリー好きなのでもう1人の自分と交代交代で執筆したいです。あと単純な話し相手としてですね。意外かもしれませんが黒井はクローン技術が出来て、作りますかと聞かれたら1人くらいなら欲しいです。自分がバグってるのかもう一人自分がいたら楽しそうだし、執筆交代やゲーム交代とお互い平等にしたいですね。自分で言うのアレですが黒井は基本的に受けなのでよっぽど責められない限りは喧嘩には発展したことないです。それでは皆様、良い夜をお過ごし下さい!




