第38話:レイラ防衛会議
第38話:レイラ防衛会議
ディレオス街のディレオス私邸にて
レイラとの秘密を守れそうで、なおかつ俺が信頼がおける人間だけを集めていた。アリーナ姉さんとアラム中将、エスターリア主人、ミーナ博士、ニューオーダーズの面々が集まり、俺の真剣な悩みに誰一人として愚痴をこぼしたり、あくびなどもせずに聞いてくれた。
「ふむ、私の過去の知識がまだ合っていれば、帝国には秘策があるはずだ」
「ワイも同感や。あのずる賢い帝国が暴走間際の戦力をコントロールする術も持たずに手に入れようとは思わへん」
「私も同意だ。帝国の機獣操作持ちと交流したことがあるが、戦略も機獣育成も合理性の塊であり、不確定要素など以ての外だった」
「総長殿はどう思います?」
俺の質問にアリーナ姉さんは一言。
「同意であると同時に、私たちの家族を易々と奪われるような真似はしない」
「我々ニューオーダーズもレイラちゃんが切り札的戦力である以上、仲間として守り切るつもりだ」
皆の心強い言葉に胸を打たれながら俺は「ありがとう」と声を返す。
「さて、ディレオスはん。実は今回スペシャルゲスト……というよりかはトラブルメーカーゲストも来てくれたで。ただかなりの知識吸血鬼なのは間違いあらへん」
「紅月の姫君ではないですよね?」
「あの子はレイラとあったら殺し合いしちゃうから無理じゃよ。だってよ、あのロリBBAらしい考え方やな」
「我らが主をロリBBAと呼ぶとは……アラム中将にはお仕置が必要かな?」
するとドアを開けた形跡もないのに、空いてる席に座りながら、ワインボトルとグラスを用意していた。そして黒いシルクハットに黒い紳士服。少し茶色の肌を隠しながらも、鋭い犬歯が見える。
「あなたは……誰ですか?」
「名遅れてすまない。ヴァルスーラ・レイドモッド闇光帝。人類側の吸血鬼にして、貴族吸血鬼達の長を務めている。アラム中将に呼ばれてきたが、無駄足だったかな?」
「あなたがレイラに危害を加えなければ参考人として居てもらいたいです」
「懐が深い領主様だな。安心してくれ。レイラお嬢様には手を出すなと紅月の姫君こと、我らが主に止められている。さて、帝国を狙うなら帝国地下魔導研究所を狙うといい。そこに魔呪界と天界が混ざり合い、生み出された異適の根源と繋がる場所がある」
俺の目がカッと見開き、貪欲にも情報を求める。
「そこを攻めればいいんですか?」
「簡単に言わへんでくれ。帝国地下魔導研究所の警備はワイら第七艦隊すら蹴散らすレベルや。そこのレイドモッドはんなら多少は戦えるんやないか?異界の魔呪さん」
レイドモッドさんはワインを飲みながら、ため息をつく。
「アラムも知っているだろう、あそこの人間達は人間を辞めた化け物共だと。丁寧に誓約書という人間の退職届も出している。それが人を魔物を超える力を与える鎖となっている事もな」
「わーかっとるわ。アンタさんの力を過信しすぎただけや。だが、ディレオスはんの願いを叶えるのはどうやる?」
レイドモッドさんは静かに目を瞑り、考えてくれるようだ。
2分……5分……
「レイドモッドさん?」
「んあ?……すまん……普段寝ている時間だからな……許してくれ。だが1つ手はあるんじゃないか?君の同期に魔導消滅などと言う化け物固有スキルを持つ友人が」
「レギオスを知ってるんですか!?」
「まぁ、番号を交換した仲だからな。たまに魔導通信機で通話しているよ。もっとも帝国を滅ぼすなら彼も敵になるかもしれないがね」
俺は最悪の想定が現実を帯びてきて、ペンを落としてしまった。
「レギオスは大切な親友だ、殺させるつもりはない」
「私にとっても大切な友人である。彼を殺さない選択肢を取るなら、私も協力しよう」
「ところでレイドモッド闇光帝閣下、ディレオスが所属するギルドの長として聞きます。ディレオスの剣はいつ頃できそうですか?」
「1週間前後と聞いている。だが使いこなすまでの時間はかなりかかるだろう。なにしろ文明殺しの剣だ、魔力の込め方、力の制御次第で全てを敵に回す可能性すらある」
俺の心は内心、安寧とは遠かった。俺はこれから1人の妹を救うために何百万人……もしかしたら何千万人も殺すことになる。それだけは避けたかった、人として、良き賢王として罪の無い人の命までも奪いたくない。
「レイドモッドさん……文明殺しの殺害対象は選べますか?」
「貴殿の努力次第と言った具合だな。君からはあまり強い魔力を感じない。失礼なことを言わせてもらうが武器頼りだったんじゃないかね?」
「……その通りです……俺はロケットパンチで世界最強になろうと思ってましたが……実際のところは武器やこの義腕があってこそです……」
「自分の弱さを認められるなら、それは強さだ。まだ作戦を行うのにも時間はかかる。それまでレイラお嬢様に精進させてもらうといい」
そして会議が終わった後に、レイドモッドさんはレイラに会わせて欲しいと頼んできて、レイラの部屋の前でレイラにドア越しで聞く。
「レイラ、レイドモッドという方が会いたいそうなんだけど……」
するとドアが無作法にバンっと開けられ、俺の頭にヒットする。
「レイドモッド!久しぶりね、また私の血を飲みに来たの?」
「飲みたくないと言えば嘘になるかな。レイラお嬢様。私の異界の顕現も見なくてもいいですか?」
「あのお菓子が沢山ある部屋のこと?お兄様がパフェ奢ってくれるから問題ないわ」
「それは残念。そのお兄様はクリティカルヒットしたみたいだがね」
「お兄様っ!?」
レイラの少しヒンヤリとした手がタンコブが出来た俺の側頭部に当てられる。そして僅かながらも回復魔法も使ってくれた。
「レイラが嫌いそうな人じゃなくてよかったよ」
「嫌いよ。この吸血鬼は私の血の欲しさに土下座するもん。気持ち悪いわ」
「レイラお嬢様、それは内密にしてくれる約束では……?」
「お兄様は対象外よ。それよりもレイドモッドは何しにきたの?」
「血を求めて……」
「おかえり願いますわ。お兄様見送ってあげて」
俺は「だそうなので、お帰りください」とタンコブを押えながら、レイドモッドさんに言うと彼は残念そうに、ロビーへと歩みを始める。家の外までは見送るつもりなので、軽い談笑でもしながらと、階段を降りていく。
「領主様にお聞きしたいのだが、そのロケットパンチを強くする算段はついているのか?」
「実を言うと……ほとんど手探りです」
「我々とは殺し合うくらい仲のいい、戦闘のプロフェッショナル集団がいる。神々の代行者と言えばある程度は分かるだろう。彼らの優秀な代行者を送らせてもらう、そのロケットパンチが明らかに強くなるだろうな。無論レイラお嬢様には手を出さない人物を選抜する。それでは」
俺の返事も聞かずにレイドモッド闇光帝はドアを開けると灰になるように消える。死んで灰になったわけではないと思いながらも、大丈夫だろうかと不安になる。
大海の孤島とも言うべきこの島では、代行者達の育成が行われている。通称、試練の島。普通の人間なら体か精神が壊れる訓練と戦闘演習を行い、普段は階層宮の魔物達、必要とあれば吸血鬼を狩る。最近の吸血鬼共は血を飲むために人を襲うことも少ないため、戦力の不完全燃焼感は否めなかった。
「代行長官、レイドモッド氏から魔力強化に特化した代行者を1人、ディレオス村に送ってほしいとの事。なお、レイラ氏には手を出すなと……如何なさいますか?」
我は少し、考えながら、首から下げているロザリオを握る。覚悟のいる決断を要する時の癖だ。
「我としては答えは決まっている。ゼルロット第4位代行管区長を派遣する」
我にとってこの決断は大きかった。代行者の中でもトップクラスの戦力であり、トップクラスの問題児であるからだ。それを差し引いてもゼルロットは教練と魔力は我ら神々の代行者達のトップなのは疑いようはない。
二日連続で定時刻公開が出来ずすみませんでした!そしてそれでも読んでくださってる読者様にはご心配おかけしました!
昨日は新作執筆に夢中で、今日は脈拍が大変なことになって気が回りませんでした…脈拍は多分大丈夫だとは思います。入院等があればまた改めてお知らせします!それでは良い夜を!




