第34話:聖騎士騎士団の議会の謀略
第34話:聖騎士騎士団の議会の謀略
アスクレーサーという神話級の薬の存在を知り、なおかつ生産に成功していたことに驚きながら、話が進む。
「ですが、まだ低率量産すら届かない状態です……3年かけてようやく2瓶作れた程度で、まだ謎や不確定要素が大きいです。そしてあくまでも薬草学の理論上で蘇生できるという話なので、どのような副作用があるかも不明なのが課題ですね……」
なるほど……帝国の皇帝が死に瀕した時の最強の切り札にはなりそうだが……治験などがしてない以上最悪帝国との全面戦争になりかねない。そうなったら我々が宣戦布告したのも同然だ。
「レーチカ先輩、様々な種類の薬草酒を作って、帝国にチラつかせるのはどうですか?」
「それなら充分に量産やレパートリー、安全性を確保できます。少なくともこの土地であれば帝国の国民需要も満たせると思うので、簡単に滅せなくなります」
「よし、その方向で進めよう」
話がまとまったタイミングでストレイドさんが食事を運んできてくれた。どれも見ただけで空腹に抗えなくなりそうなくらい美味しそうで、見た目も良かった。
「俺のフルコースだ。存分に食ってくれ。会議の続きはまた今度だ。レイラちゃんのお楽しみのアイスパフェは食後に作るから少し待っててくれよな」
「はい!ストレイドさん!」
「それじゃあ食材とストレイドさんに感謝して、いただきます!」
「「「いただきます」」」
大陸渡り雄牛のステーキはとてつもないほど、肉汁が美味しく、歯切れもよくストレスを感じさせない調理となっていた。高級薬草香味パスタも、優しい香りで薬草も良い感じにパスタのニンニクとハムの強い味を中和してくれて、しかも少し水気が残っており、乾いてるパスタ料理なのにカルボナーラに近い少しトロッとした食べやすさと飲み込みやすさがあり、舌鼓を打つには充分すぎた。
「ストレイドさん、美味しいです!毎日作って欲しいなぁ」
レイラの甘え褒め言葉にストレイドさんも照れながら、「またいつでも作ってやるよ」とプロらしく返した。
その一方でアリーナ姉さんは料理の味などを観察していた。
「アリーナ姉さんも料理頑張ってください。ここまでの完成度は求めないので……」
「いや、私も大切な弟と妹の為に妥協などしないつもりだ。ストレイド殿、また今度でいいので料理の御指南お願いします」
「アリーナ総長の頼みなら任せてください。レイラちゃんの好みの料理も知ってるんで胃袋掴めますよ」
「ありがとう、感謝する。それにしても美味い……」
皆で楽しく、食事を楽しんでる最中に俺の携帯魔導通信機が鳴る。
「ちょっと部屋外すね」
食堂の外に出て、ロビーで応じる。
「久しぶりだね、ディレオス」
「おぉ!ジョンか!久しぶり!用件はなんだ?」
「今聖騎士騎士団で動きがあってね……ディレオス街を聖騎士育成の拠点にしたいそうなんだ。無論そこにアリーナ総長がいるから聞いてはいると思う。問題は育成の学校の教官達が……」
「ヘカテオール最先任上級聖騎士長だろ?」
彼は声を震わせながら、「彼だけじゃない」と言い出す。そこから放たれたのは国際ギルド連合軍の聖騎士達はレオーサー帝国の侵攻があった場合に食い止めるだけの戦力だけでなく、帝国への侵攻すらも可能な戦力の名前だった。
「魔導聖騎士団のトップ3から1名と、銃砲聖騎士団のトップ5から3名、人類決戦防衛聖騎士団から伝説主力級が4名向かうそうだ」
「待ってくれ!そこまでの巨大戦力を引き受けたら、レオーサー帝国に宣戦布告するようなものだろう!さすがに無理だ」
「国際ギルド連合軍の聖騎士騎士団の議会の狙いはそれだ。レオーサー帝国がディレオス街に攻め込ませ、損耗したところを主力軍で叩く。つまりディレオス街を主戦場とする狙いだ」
俺はため息に似た、絶望を吐き出して、少し深呼吸をしながら、一旦気持ちを落ち着ける。
「回避は出来ないのか?」
「すれば国際ギルド連合軍がディレオス街の敵になる可能性がある。もちろん現時点では聖騎士騎士団の議会だけが狙ってるわけだが、国際ギルド連合軍の中でも強い発言力と権限を持つ。ギルセイド最高司令官を解任させたり、資金提供を断ち切る可能性もある」
俺は少し考えるがここまで露骨に帝国との戦争の意志を見せてしまったら引き返せない。だからと言って国際ギルド連合軍を敵に回せば街の存続に関わる。
「国際ギルド連合軍の統括理事会は、この明らかな国際ギルド連合軍の人類存続のためのやむを得ない侵略行為として認識してるわけではないんだよな?」
「それが……国際ギルド連合軍はレオーサー帝国に魔導兵器監査団の受け入れを要請してるらしい。なんでも一撃で都市が吹き飛ぶような兵器の開発をしてるとかで……」
せっかく沢山の人々の協力のおかげで、旧ディレオス村を再興する計画ができて、良い感じに進んでいたのに……こんなところで諦めるわけには!!
「ジョン、俺は絶対にこの街を戦場にする気はない。何がなんでもだ。あらゆる手段、あらゆる戦力、あらゆる物資を使ってでも平和的解決をする」
「そう言ってくれると思ったよ。帝国は国際ギルド連合軍に絶対的平和への誓いの条件案として……本当に言いづらいんだが……ゼウス・スローター・カーテナを要求している……」
俺の顔から血の気が引いた。このかつて存在した農村であり、俺の故郷を亡ぼした奴らを全員抹殺するためにこの剣を作ったのに、その連中と思われる存在からこの剣を要求されるとは……
「少し……少し考えさせてくれ……」
「あぁ、辛いよな……僕も出来ることは可能な限りする。親友として、良識のある聖騎士として行動する。それじゃあ、ご武運を」
通信が切れた後に俺は、膝から崩れ落ち、ゼウス・スローター・カーテナを握る。
「この剣かこの街の未来か……どうすればいいんだ……俺は俺は……この街を守るためにこの剣を作ったのに……それを差し出すのが平和の条件なんて……」
絶望に明け暮れてる中で、ストレスからか、視界が暗くなり始め、フラつきはじめる。
「この街を守らなくては……」
ガタン!という音で何も聞こえなくなった。
暗闇の中で声がする。力強く、頼りになる声。
「我が主、我を平和のために手放すか?」
「ゼウス・スローター・カーテナなのか……?」
「如何にも」
この非現実的な空間と剣との対話にはあまり違和感などは覚えなかった。
「俺は故郷を亡ぼした奴を倒すためにあんたを作ってもらった。そしてこの新しく出来た街を守り通す為に……」
「なら、我を手放せ。それが主の目的なら、我を手放せば叶えられる。心配は要らない。我が身の主権は主にあり。何人たりとも我が身を主以外が使いこなす事は叶わず」
ゼウス・スローター・カーテナから強い意志を感じる。この剣も平和を望んでいるのか……
「1つ教えてくれ」
「なんだ、我が主」
「お前の真の力はなんだ?」
「……主神すら殺せる聖なる毒と我が主だけが持つ理想を合わせた神々を亡ぼす力だ。我が主よ、心配は必要ない。主が我を望む限り、我は裏切らない」
俺は少し黙る。だが答えは決まっていた。
「……必ず取り返して見せるよ。少しの間離れても大丈夫か?」
「問題ない。我も覚悟していた。主よ、再び我を取り戻した時まで、神への宣戦布告の気持ちを忘れるな」
俺の意識が少しずつ戻り始め、目をぱちぱちさせるとレイラが涙目で俺の顔を見ていた。
「お兄様!大丈夫!?苦しくない?」
「大丈夫だ……少し剣と喋っていたよ……」
アリーナ姉さんが言いづらそうに何かを伝えようとドギマギしてる様子を見せてくれた。
「アリーナ姉さん……帝国はゼウス・スローター・カーテナを要求してるんだよね?」
「え、えぇ……でも渡せるわけ……」
「渡すよ。この剣はこの街を守るために作った剣だから。それにこの剣自身が俺を主と認めてくれた。帝国の汚れた手なんかに扱えるわけがない」
そのままアリーナ姉さんは「ごめんね……力のないお姉ちゃんで……」と言われ、ゼウス・スローター・カーテナの帝国への譲渡会議がこの屋敷で近々行われる段取りとなった。
こんにちは!いつもご拝読ありがとうございます!
レイラちゃんが初登場した時にレイラちゃんの具体的なイラストを描こうとして、挫折して、俺は自分のキャラクターも描けないのかぁぁ!?って一人で悩んでました。
イラストを上手く描けるようになったら挿絵とかもやりたいですね。
そんなわけでいつも皆様お疲れ様です!良い夜を!




