第33話:ディレオス街の安全保障は酒を使う
第33話:ディレオス街の安全保障は酒を使う
ストレイドさんが食事の用意をしてくれてるので、あまり静かにならないように俺から声をかけることにした。
「リーダー、近いうちにもっとニューオーダーズがデカくなると思うとワクワクしますね」
「あぁ、全部ディレオスのおかげだ。本当に感謝している。既にレーチカがSランク冒険者8名とAランク冒険者12名、Bランク冒険者20名の採用が決まっている。そして第2班以下を統括するSSランク冒険者を1名採用する予定だ。これがSSランクの冒険者の資料だ」
俺はリーダーから渡された資料を見て驚いた。これは凄い……女性の19歳にして南部大陸の最強の一人。異名は不屈の紅剣士。
武器はSS+級の伝説剣にあたる『不屈の堅固剣「スカーレット・グラジオラス」』火属性と花属性を共に操る強力な武器でありながら、本人の固有スキル、周囲魂灯『エリア・ソウルドレイド』。周りの敵の魂を燃やす花をいくつも咲かせる。悪意のある人間が持てば大量殺人にも繋がる危険なスキルだ。見た目は金髪のポニーテールに赤眼の瞳。軽装の鎧型スカートのSランク装備花騎士の舞月か……
「よくこんな凄い人材が募集に来ましたね」
「レオーサー帝国に家族を殺された過去があるらしい。だからその帝国の監視役にもなるこの街で戦う事もあるなら喜んで入るとの事だ。という理由だけじゃ強くても入れられないからレーチカが他の理由も尋ねると自分の知らない大陸で自分の強さを知りたいそうだ。大した剣士冒険者だと思ったよ」
俺はただ、「同意です」と返すのみだった。花の名前が付く剣は伝説剣にあたる事が多く、大抵は花の神に選ばれた者が扱える事が多いと冒険者育成機関時に学んだ。無理やりでも花の名前が付く伝説剣を使う場合は魔力や固有スキルで無理やり制御する必要があるため、かなり力が制限される。ただ彼女は選ばれたようなら、信頼できる戦力なのは間違いない。
するとミレーユさんがドリンクをついでくれて、ストレイドさんの食事作りを待つことにした。
「ねぇ、ディレオス君はレオーサー帝国と戦争するつもりはあるの?」
レーチカさんの質問に、俺はいずれは誰かに聞かれると覚悟していた。
「街の住民の権利が脅かされるのであれば迎え撃つ。資源貿易や外交で解決できそうであれば全力を尽くすと考えている。レーチカさん……もしかして……」
「お父さんがね、ようやく手紙を返してくれたの……だけど……『もう、手紙を送るな。俺は兵士に志願した』とだけ……だから戦争になったらお父さんを殺す必要があるかもと考えちゃうとね……」
レーチカさんのお父さんの想いの心を汲み取ってあげたかった。だが、帝国の兵士である以上、ここを攻めてきたら迎え撃つ必要がある。難しいな……
「レーチカさん、俺も戦争はしたくない。戦争はあくまでも外交の最終手段だ」
「ディレオス君……うん、任せたよ。この街が武力で暴走するかどうかはディレオス街長にかかってるからね」
「ありがとう。最大限努力する」
そんな時だった。扉が開き、アリーナ姉さんが顔を出す。
「ニューオーダーズの皆さんか、ようこそアークラー家へ。私も混ぜってもらっていいかしら?」
「レオスリーダー、判断を」
ギルドにまで昇格となった以上、この先機密情報等も出る可能性を考慮して、リーダーに判断を委ねる。そしてリーダーにも伝わったようだ。
「大丈夫です。アリーナ総長」
「感謝するレオスギルドリーダー」
そう言ってアリーナ姉さんは席に座ると、「ちょっとこの街の国防関連の情報をいいか?」と聞いてきたので、ここは街の全権を委任されてる俺が「構わない」と言って、会議を始める。
「国際ギルド連合軍聖騎士騎士団のトップは総長ではなく、最先任上級聖騎士長なのですが、その方がこの街に住みたいと仰っています。さすがにギルド連合軍も悩んだ末に、聖騎士育成学校も建てて、そこの教官騎士長なら構わないそうです。そこでディレオス街長には聖騎士育成学校を建てさせてもらいたい所存です」
「俺としては構わない。むしろこの街の防衛力強化にも繋がるから大歓迎だ」
だが意外にも苦言を呈したのはミレーユさんだった。
「私もほぼ賛成ですけど……この街の重要性が高くなりすぎるのは戦略的要所としてレオーサー帝国から目をつけられる心配があります。帝国への安全保障の提示が不可欠かと」
「確かにミレーユの言う通りだな。ディレオス街長、軍事バランスを考えればかなり危険になるかもしれません。何かしらの安全保障条約の締結などでリスク回避が必要だと判断します」
俺は悩みながら、考える。既に言い訳が難しいほどの資源と軍事力を有するこの街が聖騎士育成学校まで建てるというのは、国際ギルド連合軍を離脱した帝国からしたら厄介極まりないはずだ。
「攻める意思を無いとする方法か……」
「お兄様、不可侵条約ではどうですか?」
「不可侵条約は基本的に期限付きで決まるから、その期限を過ぎたら攻めるという意思表示に繋がりかねない。無期限不可侵条約としてもあくまでも期限を設けないというのであって永久ではない。レイラ、外交安全保障にはこのような言葉のトラップがある。覚えておくといい」
「はい、お兄様。勉強になります」
いつにも増して真剣で慎重に話すレイラを見ていて、いずれレイラもこの街を担う人材になるのかと感じるには充分だった。実際の話としてレイラが異適の力を封じてる以上、帝国の本心として戦略的脅威になるのは間違いない。
「ディレオス街長、総長としての提言ですが、お互いに必要になる物を明確に貿易する事で互いの首に刃物を当て合う、相互貿易生命線条約はいかがですか?」
「アリーナ総長。戦略レベルで同意する。問題は生命線が何かになるかが鍵だと考えてるが何か思いつくものは?」
「そこまでは……」
その時、レーチカさんに何か心当たりがあるようで身を乗り出して、意見を出したがってる。
「はい!はーい!レオーサー帝国の最大の生命線があります!」
「レーチカ先輩……どうぞ……」
「ずばりポーションと薬草関連です。帝国は北部に位置するため、薬草が少なく、なおかつ山岳地帯も多いため、高級薬草に必須な条件の日光と温かさが足りません。そのため、回復魔法に依存する傾向が多いため魔力回復薬と体力回復薬や総合回復薬などはかなり貴重品になっていたはずです」
流石元レオーサー帝国の回復騎士団の副団長。目の付け所が違う。なら、レーチカさんに俺の腹案を提示してみるか……
「レーチカ先輩、実はこの街で大規模な製薬会社を作ろうと考えていました。率直にお聞きします。レーチカ先輩が社長としてこの街の土地を大きく使えるとして、どれほどレオーサー帝国の首に刃物を当てられますか?」
レーチカ先輩は慎重に考え始め、数分の間に答えをまとめる。
「過去に私が帝国にいた頃の状況であり、なおかつこの土地の肥沃な土地を頂ければ2年の時間でレオーサー帝国が、総戦力でこの街を攻めてきた際に必要となると思われるポーション類をカバー出来ます。ですが帝国もバカではありません。既に対策を取ってる可能性もあります」
希望はあるにはあるが少し薄い状況か……何か何か最高の一手は……
「レーチカちゃんの薬草酒……あれなら酒好きの帝国軍なら喉から手が出るほど欲しいはずです。消毒や嗜好品だけでなく、疲労回復や滋養強壮、止血剤にも使えるはずです。しかもレーチカちゃんはアスクレーサーも作れます!まだ量産は出来ないと言ってましたが……」
お酒の知識が豊富なミレーユさんの一手は確実に帝国の首に刃物を当てられるものだった。だが……アスクレーサーとは……?
「レーチカ先輩、アスクレーサーとは?」
「肉体が残っていれば死者すら生き返らせる薬です。ミレーユちゃんと密かに研究していました」
その真実を知ったこの場の2名以外驚いてしまった。そんな神話級の薬がつくれていたとは……
いつもご拝読ありがとうございます!
今日は少し早いですね…抗生物質の投薬時間をこの時間にしてしまったのでちょっとこの時間に色々作業集中させたくて…他にも色々な時間の読者様を集めたいという狙いもあります。
最近は別のミリタリー魔法作品に夢中なっているので第2章を書き上げたらそっちに注力したいですね…
長い後書きも読んでくださりありがとうございます!それでは良い夜を!




