第31話:兄妹愛はカメラに残される
第31話:兄妹愛はカメラに残される
計画が定まった翌日からディレオス街の建築ラッシュが始まった。舗装する余裕も今はないため、土の道が荷物を運ぶ馬車が通り、あまりに削れすぎた道は技術が低い者が均していく。
俺の家は最優先という事もあり、200名がかりで進めてもらった。もちろん材料運搬や足場組みも込みである。
俺も何もしないわけには行かず、井戸水を組んでは作業員の方達に配っていた。
「街長の仕事じゃ……ないけど……俺も頑張らなきゃ……」
何kgもある水を運んでは周りに配る作業は、それだけでレベルが上がっても不思議とは思えない感じの作業量なのは確かだ。
「ディレオス街長!すんません……俺達に水を配ってもらって……」
「いえいえ……疲れますけど皆さんは俺の家を建ててくれるんです。それくらいさせてください。昼食もすぐにお持ちします!」
ニューオーダーズのメンバーが、常に食事を作りっぱなしでようやく全作業者に回るレベルなのは人を雇いすぎただろうか……
「ドラゴン唐揚げカレーライス200人前できたよ!ディレオス君!すぐに運んで!」
「はい!レーチカ先輩!」
「あと、疲労回復の薬草果実ドリンクも1人1杯用意してるから。外でストレイドが馬車の準備してるからそれに載せて運んでもらって!」
「承知しました!」
何十kgの食料運んで、ストレイド先輩の馬車に載せていた。
そしてレイラは馬車の馬と遊んでいた。
「ストレイドさん!お馬さんって優しいね!」
「だろ?馬っていうのは人よりも人を信頼するんだ。そして信頼してるから大きな荷物を素早く運んでくれる。だから優しくしてあげないと可哀想なんだよ」
「ストレイドさんもお馬さんの事を信用してるの?」
「もちろんだ。ここの仲間と同じくらいにな」
俺は眺めていたかったが、グズグズはしてられない。カレーライスが冷めてしまっては作業員の方々の士気も下がるというもの。
「ストレイド先輩!食事持ってきました!」
「後ろに積んでくれ。レイラちゃんも馬車乗ってくか?」
「うん!お馬さんもストレイドさんも頑張って!」
「任せてくれ!いくぞ」
馬車がゆっくりと進み出し、レイラと俺は食事を入れた鍋とかが倒れないように支えていた。
「レイラの部屋の希望は聞いてなかったけど何か希望とかはあるか?」
「お兄様と同じ部屋!……が良いんだけどそれだとお兄様に迷惑だから隣の部屋でお願い♡」
「りょーかい。ちょうど俺の部屋の隣はロフト付きの広い部屋だから満足できると思うよ」
レイラはニコニコしながら、時折吹くこの地域の山風に、帽子が飛ばされないように片手で押さえていた。
そして俺の家の建設現場に着くと、職人さん達は手を止めて、こちらに駆け寄る。
「レイラちゃん!俺大盛り!」
「レイラちゃん!俺唐揚げ2個でお願い!」
など無数のオーダーをレイラは一つも間違えず、笑顔で「頑張ってください!」と言って配る姿は天使そのものだった。
「レイラは人気者だね」
「レイラはずっと教団に閉じ込められて、異適の為に酷いこともされた……でも今は楽しいの!すっごく、すっごくね!だから皆に恩返しがしたいの!」
レイラの純粋な気持ちに俺の未熟さが浮き彫りになった気がして、改めて反省しつつ、そんな頑張り屋で優しいレイラにカレーライスを盛ってあげる。
「お兄様、ありがとう。レイラの分の薬草果実ドリンク飲んでもいいよ?」
「あぁ、ありがとう」
少し飲ませてもらい、ふぅ……と疲れを吐き出す。
そんな時ストレイドさんが声をかけてきた。
「ディレオスもレイラちゃんも夕方まで休んだ方がいいぞ。晩御飯運びで疲れるだろうからな」
「ありがとうございます、ストレイドさん。レイラも休憩室で少し休もうか」
「うん!ストレイドさんはどうするの?」
「俺は他のお馬さんの面倒や武器や防具の整備だな。リーダーからレイラちゃんのお兄さんを託されてるからな」
「無理しちゃダメだよ?」
ストレイドさんは「ありがとう、レイラちゃん」 と言って、俺達を仮拠点の休憩室前まで送ってくれる。
休憩室は決してプライバシーがあるわけではないが、それでもカーテンで視界を遮る事はできる。
「レイラ眠いわ。お兄様、少し一緒に寝てほしいな……」
「わかった。腕枕はいるか?」
「うん……ふぁぁぁ……」
俺が先にベッドに横になり、腕を伸ばす。そしてレイラは頭を俺に預けてくれると自然と耐え難い眠気と疲労と共に視界が真っ暗になる。
それからしばらくしてからだろうか。パシャという聞き慣れない音とトラブルを巻き込む女性の声が聞こえる。
「よし、カメラはしっかり保存できてるな」
「……ミーナさん?何してるんですか?」
「いや〜兄妹愛を保存しておこうと思ってね」
「絵を描いてくれたんですか?」
「まぁそんなところだ。今現像が終わったよ」
1枚の薄い紙に俺とレイラが仲良くお昼寝してる絵がとんでもないハイクオリティで描かれていた。
「この紙は没収しますね。俺はもう少し寝るんで」
「あぁ。大丈夫だとも」
それから夕方頃
休憩室の前から慣れた殺気を感じた。
「ディーレーオース!!」
アリーナ姉さんだ。なんで怒ってるんだ?
「レイラ起きて!」
「お兄様……ふふっ、だーいすき!……Zzz」
「起きて、アリーナ姉さんが来たから!」
「もう目の前にいるわよ」
アリーナ姉さんは鬼の形相で仁王立ちしていた。大丈夫、俺は罪なんかしていない。
「姉さん、レイラと休憩していたんだ」
「そう、激しい休憩らしいわね」
と言うと、アリーナ姉さんは新聞を見せてくる。一面に『人類最強の1人ディレオス氏、妹とイチャイチャお昼寝か!?』という見出しがある。は?
「え?何これ……」
「姉として、清廉な聖騎士の総長として、少しお仕置が必要かしら」
「いや、いや。ただ、レイラとお昼寝しただけです」
「へぇ〜ミーナさんから聞いたけど愛し合っていたそうじゃない」
ミーナさん!あのトラブルメーカー天才科学者!!あの黒い機械みたいなものって……まさか……
「姉さん!その新聞どれくらい売れた!?」
「50万部突破らしいわよ。聖騎士総長の弟が不純な兄妹愛とは困ったわね。本当なら今は聖騎士総会議中だったけど飛んできたわ。レイラちゃん、ディレオスに何された?」
レイラ!頼む!今は……今は変なこと言わないで!!
「お兄様優しくて……気持ちよくしてくれた……Zzz」
アリーナ姉さんは新聞を見たことない属性で黒い破片のようにして消した。
「これは……その……」
「聖騎士はね、未成年に手を出すと重労働が待ってるの。すぐに鉱山労働者の皆様にお水運びなさい」
「すみませんでしたぁぁ!!」
俺はすぐに起き上がり、地獄の20kg飲用水を往復5kmを数回繰り返した。
筋肉が悲鳴をあげる中で夕食配りをストレイドさんに手伝ってもらった後に、仮拠点の自室へと入る。
半分レイラ恐怖症になっており、隠れてないか確信した後に、ベッドに横になる。
「疲れた……もう眠い……」
「そうみたいね。お姉ちゃんに気が付かない時点でヘトヘトよね」
「!?アリーナ姉さ……」
口を手で塞がれて、「静かに」と言われ、奥に引きずり込まれる。
「固有スキルの森閑投影を使って隠れないでくださいよ。姉さん」
「固有スキルを柔軟に使うのも大事だぞ〜?ディレオスのロケットパンチも色々な使い方があるかもね〜。じゃあお姉ちゃんは明日も会議があるから朝早くに立つわ。早く寝ましょ」
「そうですね、俺も疲れた……」
「おやすみ、ディレオス」
それを聞いて安心したせいか、俺が言葉を返す前に意識が閉じる。
レオーサー帝国国家魔導兵器開発局にて
「まさか旧友に手紙も出せない、魔導通信機も使わせてくれないとは酷い話だ」
僕は魔導消滅『マギアス・アニヒレーション』の固有スキルを覚えたことを半ば後悔していた。このスキルは僕の家系の呪いに対抗するために覚えたのに、実際は帝国の単一破壊兵器扱い兼魔導兵器開発だ。
「レギオス主席研究員、聖剣龍の剣玉の使用許可が下りたぞ」
生意気そうな口を使うのは帝国の資源管理局副局長であり、俺の上司にもあたる。兵器開発は資源との兼ね合いが重要である以上、資源管理局に支配されるのも仕方がないのかもしれない。
「よくそんな希少素材が手に入ったな」
「君の旧友が用意してくれたよ。彼は今大富豪の仲間入りだ」
「ディレオスの賢さならおかしくないさ。それより、この剣玉で本当に魔導消滅を再現する気なのか?」
「皇帝陛下のご命令だ。逆らえば死刑だ」
「はいはい……」
ディレオス……すまない。俺は今一撃で階層宮すら破壊する強力な戦略兵器の開発をさせられている。こんな兵器、存在しちゃいけないんだ……
罪悪感に押し潰されそうになりながら、兵器設計図を書きながら、そろばんで理論の計算をする。
いつもご拝読ありがとうございます!黒井冥斗です!
今夜というより夕方から少し予定が入ったため、早めに投稿します!月曜日からも頑張って楽しく執筆していきたいと思います!それでは良い1週間を!




