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ロケットパンチが神殺しの剣より弱いのは不満なので覆します  作者: 黒井 冥斗
第2章:村の再興は安全保障という難敵がいます
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第30話:村の再興と人類の天座への揺れる天秤

第30話:村の再興と人類の天座への揺れる天秤

「レスティア、最近どう?」


レスティアは少し不満気な表情を浮かべながら、角砂糖を何個かコーヒーに投下する。


「そうね、人類の天座を一緒に目指す約束をした誰かさんが寄り道ばっかりするから、こんな特技まで覚えちゃったわ」

落とした角砂糖が時を戻すように、固まり始め、レスティアの手の元に戻る。

「!?レスティアの固有スキルは……」

「そうよ、私の固有スキルのベクトルアップは本来なら運動エネルギーにしか作用できない。だから固有スキルの性能を引き上げるためにお父様とモンスター狩りをしていたらスキル開花したわ。時間逆行も可能になったということね」


レスティアは得意気そうに笑みを浮かべ、また角砂糖をコーヒーに落とす。


「ディレオス君こそ、その右腕と肩だいぶ人間辞めてるね」

「まぁ……異適と戦うためにやむを得なかったから……」

「そうだと、思った。こんな話してても楽しくないから、もう直接聞くね。私との人類の天座を目指す約束を守る気はある?」


俺は黙ってしまう。今は村を再興したい。だけどレスティアと主人のエスターリア閣下には冒険者育成機関時代には本当にお世話になった。


「守りたい……」

「守る気はあるのね。村の再興が終わったら必ず私に着いてきて。私だって……ディレオス君のこと……好きなんだからさ。約束守ってくれないと怒るから」


大人になったレスティアは髪を揺らしながら、コーヒーを飲む。その姿と先ほどの発言を照らし合わせると、本当は怒りたい気持ちもある中で大人としての理性も働いてる。

レスティアとの約束守らないとな……


「わかった。村の再興が終わったら必ず着いていこう。レスティア隊長」

「隊長って……まぁ、いいわ。お父様からはパーティ新設の許可を貰ってるから、村の再興が終わった頃にまたここを訪ねてね。本当に約束だからね。嘘ついたら、ヒュドラの毒針1000本飲ますから」


ヒュドラが絶滅しそうだと思ったが、俺は覚悟を決めて、「約束する」と誓い、その晩は一緒にベッドに入ると、優しい香りと温もりが俺を安眠へと誘うには充分すぎた。


翌朝目覚めるとレスティアは居らず、不安になり、寝室のドアを開けて食堂に顔を出す。


「グラインさん、おはようございます。レスティアはどこへ?」

「ディレオス様、レスティアお嬢様は既に旅に出ましたよ。言伝も預かっております。『ディレオス君を導く隊長になるって決めたから行動に出るからね。あと昔と比べて男臭さが増えた』と……」


レスティア……俺も負けてはいられないな。


「グラインさん、お伝え下さりありがとうございます。朝食を頂いてもよろしいですか?」

「はい、ぜひとも。懐かしき当家の食事に舌鼓を打ってください」


席に座るとハムエッグトーストに、ローストビーフ入りのサラダ、コーンスープだった。

「いただきます!」と言って、一口、口に運ぶと懐かしい味加減と素晴らしい素材を活かした調理法だと思いながらあっという間に食べ切ってしまう。


「ごちそうさまでした。グラインさん、レイラ達はディレオス街の方に向かっていきましたか?」

「えぇ、レイラお嬢様もディレオス様に会いたがってましたよ」

「大切な妹ですからね。すぐに向かいます」

「はい、いつでも当家にお立ち寄りください。ディレオス様」


家を出ると朝日が眩しく、思わず手をかざしてしまう。


「さぁ、街づくり頑張るぞ!」


まだ人気も少ないアルノスの街で気合を入れた声を出して、馬に乗り、ディレオス街建築場へと向かう。

異変に気がつくまではそう時間はかからなかった。物凄い人の作業労働者や仮拠点、大量の建築資材がアルノスと繋ぐ道に設置されており、街に着く頃にはレイラが門番をしていた。


「レイラ!ただいま!」

「おかえりなさい!お兄様!すぐに交渉がしたいってセントラル・ビルドギルド団の方達が待ってるよ!レイラも参加してもいい?」

「あぁ、大丈夫だよ。すぐに向おう」


レイラを馬に乗せて、まだ少し大きくなっただけの仮集会所に入り、大会議室をノックする。


「失礼します」

「ディレオス君待っていたよ」


上座に座っていたのは国際ギルド連合軍の最高司令官こと、ギルセイド司令官だった。


「すっかり本部に戻ったのかと思っていました。なにかお忘れ物がございましたか?」

「あぁ、この地域の安全保障という忘れ物がな。現在のこのディレオス街はレオーサー帝国に対して最も直線距離で近い所だ。国際ギルド連合軍の支部を置きたい」

「構わないですが維持費とかは出せませんよ?」

「無論建築費や維持費はこちらで負担する。なにしろこっちの政治事情で置かしてもらうのだからね」


そしてギルセイド司令官と上座を代わり、セントラル・ビルドギルドの団長との交渉が始まった。


「初めまして、ディレオス街長殿。私はセントラル・ビルドギルドの営業部長クリシスと申します。そして我々セントラル・ビルドギルドは実は経営難に陥っており、理由としては人材不足で、昔みたいな職人が減り始めるのに、新素材が開発されていく。これでは営業部だけが肥大化してしまいます。そこでディレオス街長には街の建築費の10%減額の代わりに、建築職人育成学校を建てさせて欲しいのです」


俺は提示された資料と場所を確認するが、流石建築ギルドと言うべきか校舎と寮二棟をかなり交通利便性と市場が近いところに置いている。ここは冒険者用の住居を建てようと思っていたが……10%減額でも13億ルピーが浮く。これはかなり有難い。


「10%減額分で高速で移動できるインフラ整備をしたいですが可能ですか?」

「実は今、蒸気機関を用いた、鉄道網整備計画が世界中で進められております。ディレオス街にも整備する事も想定したので13億あれば機関車4台に客車が各5台。街全域をカバーしつつ、アルノスまで延ばせれます」

「では、それをお願いします。蒸気機関となると燃料となる石炭や木炭も必要になりそうですね」


俺の疑問と不安は一瞬で解決された。


「ディレオス殿、我々Aランク鉱物資源採取パーティ『アイアン・フロー』にお任せください。既にこの地域一帯の資源量は大体把握済みです。石炭であれば機関車を毎日フル稼働させても30年は耐えられます。木炭も丸太の焼き加工が終われば街全体の需要にも応えて60年は持つかと。その他の鉱物資源の推定埋蔵量については資料13ページをご覧下さい」


分厚い魔導書レベルの資料の13ページをパラパラと捲り、資源量に驚く。もはや通常の鉄装備や火薬の生産量などを考えれば列強国と戦えるレベルだった。即ち、ディレオス街の安全保障の重要性は一気に天井知らずにまで上昇するということだ。


「えーらいこっちゃなぁ、ディレオスはん。ギルセイドはん、我々第7機動機獣艦隊の司令部をここに置きまへんか?メリットはギョーサンあるはずやで」

「うむ。私も同意だ。国際ギルド連合軍の支部も置く以上、第7艦隊司令部も置くのは私としては賛成だ。ディレオス街長、いかがかな?」

「願ってもないお言葉です。機獣がダメージを負った際の治療用鉱物も揃えておきます」

「助かるわ、おおきにな。ディレオスはん」


そうして、会議が大詰めを迎えた時、いよいよニューオーダーズギルドの本部建物の設計となった。何週間も前にリーダーが出してくれた設計図を再び、建築ギルドの人達が眺め、可能だと判断されたため、あとは建築の優先順を残すのみ。


「優先度に関してはニューオーダーズ本部と国際ギルド連合軍の軍事基地を最優先してほしいです。そのあと鉄道網と街の開発に取り掛かってもらいたいなと」


俺の意見に特に異論は出なかったが、レオスリーダーの発言が来た。


「ディレオス、君の家の優先度はかなり高いはずだ。最優先の3件目として開発するべきだろう?いざとなればそこが会議室や民間人の保護施設にもなる」

「リーダー……その通りですね。最優先の中に俺の家もお願いします。設計図はこちらでどうですか?」


L字型の洋館で青い屋根に、茶色のレンガ。3階建ての窓にはバルコニーもセットされている。大きさは500坪だった。

白髪混じりで、会議室に来てからずっとシガレットを吸っていたおじさんがひと言呟く。


「職人の腕の見せどころだな。ディレオス街長、あんたの事信頼している。だからこそ金ではなく信念で聞かせてくれ。この街の展望を」

「……ここは昔、神の摂理で好奇心が奪われた村でした。そこが俺の故郷であるディレオス村です。ですが人々は貧しくも互いに助け合い、今を維持する事で仲良くしていました。だからこそこの亡びたディレオス村を再興して、今度は豊かに暮らせる街を作り、今度は神の摂理に縛られない、自由に学べて、夢を叶えれる街にしたいです」


全員が黙り、特に職人さんは静かに目を瞑る。


「……いいだろう。部長、最高グレード建築でいいな?」

「あぁ、大丈夫だ。職人長」


そして皆から拍手が鳴り響き、ディレオス街の計画が定まった瞬間だった。

こんばんは!いつもご拝読ありがとうございます!

昨日は投稿に寝坊してしまったので、アラームとコーヒーの二重対策にしたら今度は落ち着かなくなってしまったので、違う時間にも投稿してみようとも思い、この時間に投稿させて頂きました!いつも読者様がいるおかげで小説を書けています!本当にありがとうございます!週末を楽しんでお過ごし下さい!

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