第16話:命を費やした神殺しの剣
第16話:命を費やした神殺しの剣
ちょうどエルザイムに着いたのは国家休日の夕方だった。
ジョンが住んでいたはずの少し古い建物のドアをノックする。一軒家だが、20坪ほどで、二階建て。ただし壁の石が削れていたり、木製のドアも少しカビが生えている。
「誰ですか〜?」
ジョンの声だ。
「ディレオ……」
ガタン!とドアが開くと私服姿だがやつれたジョンが飛びついてくる。
「ディレオス!会いたかったよ!とりあえず中に入ってくれ」
「お邪魔します」
1階は明らかに御手洗だと思われる個室の角ばった壁とキッチン、食器棚、酒棚、椅子とソファがあった。
「まぁ、ソファに座ってくれ。お酒は何がいい?」
「俺が出すよ。グラスを頼む」
「でもディレオス……仕事が……って、レンドジョワール250年熟成物!?何百万ルピーするんだ!?」
「110万ルピーだったかな、750ml入だからじっくり味わおうぜ」
「わかった、金食器出すよ」
そう言うとジョンは黄金色に輝く、金色のワインカップを用意してくれる。
俺が栓を抜き、注ぐ。そして乾杯。カコンという音と同時に二人で美味い!と言ってしまう。
「それで、ディレオスは何があった?」
「少し長くなるぞ」
ミーナ博士との出会い、Cランクパーティへの入団、旧友の父親の支援で莫大な富を得たことを伝えた。
「そんな奇跡が起きたのか……白銀の機装元帥か。僕も聖騎士の教科書で勉強していたら出てきたよ。ここだけの話だが……聖騎士候補生にも予備役確定召集がかけられてるんだ。だから近いうちにこの街を出る」
聖騎士候補生は聖騎士の入団試験を受ける者にも適用される。俺達の国は何を考えている?
「俺も村を再興させる予定だが、ここだけの話にしてくれ。神殺しの剣を今作ってもらってる」
「まさか!グライン家の鍛冶屋か!?」
「あぁ。もしかして俺と共にゲットしたレジェンドミスリルで両手剣をって……」
「一足遅かったよ。閉店の看板が立っていた」
俺は謝罪し、彼の器に再びワインを注ぐ。
「だけどディレオスのヒュドラのストライクソードでも階層宮の最前線でも戦えるだろ?なんでそんな力を……?」
「俺の村を滅ぼしたヤツに復讐するためと、二度と村を滅ぼさないようにするためだ」
「実はディレオスの経歴を元同期ということで故郷を調べさせてもらった。村の名前はディレオス村だったらしい」
俺はワインを飲む手が止まり、考え直す。どういうことだ?村の名前が俺の名前?
「名前の由来は?」
「レオーサー帝国の帝国聖騎士団の団長家系デュランダル一族の親戚らしい。名前少し似てるだろ?」
村が滅ぼされた原因とレオーサー帝国は繋がっているのか?あるいはデュランダル一族が?
「ディレオス、そんな考え込まない方がいいよ。僕も情報は集めるからさ。だけど1つ提供出来る情報がある。これは僕が聖騎士学校に見学に行った時に自由時間で図書館の裏部屋のドアが空いてたからこっそり近くにあった1冊を読んだ。デュランダル本家は神と同等の力を得たという日誌だった。そしてすぐにしまって、過去の新聞も読んだ。ディレオスが恐らく村が破壊された同タイミングで複数の村や街が滅びたらしい」
どうやら、俺の問い詰める敵は決まったらしい。
「……デュランダル一族……必ず問い詰めるぞ……」
「それにはまずSランクパーティにならないとね。今レオーサー帝国は民間人の立ち入りを厳しく制限してる。下手な侵入でもすれば周りを危険に晒すし、君のご両親も望まない結果になるはずだ」
「クソッ!」と俺は机を叩き、せっかく神殺しの剣を手に入れても法律という壁に阻まれ、苦虫を噛む思いだった。
「悔しい話は一旦おしまい。ディレオス、村を再興するなら聖騎士が必要なんじゃないか?」
「あ、あぁ……確かに……」
「実は僕の教官になってくれてる聖騎士の先輩がいてね。聖騎士候補生には全員に教官騎士が着くんだけど、彼に滅びた村を再興させたい友人がいるって言ったら、近くの聖騎士事務所に連絡すれば数週間以内に答えが帰ってくるそうだよ。そして先輩がもしダメなら出世の道は消えるけど僕が聖騎士として行くのは可能らしい」
俺は嬉しくて涙を零してしまった。ジョン・レスター、彼をなんとしても聖騎士にしたい。ここまでの恩を返さないのは俺の信条に反する。
「ジョン今の武器は?」
「残念ながらミスリルの片手剣だけだね。先輩の譲り品だから強度も落ちてるよ」
「ジョンが聖騎士になるように手伝わせてくれ。2日後のグライン家の鍛冶屋に武器を買おう。好きな物を買ってやる。鎧の費用も聖騎士の正式な物なら信頼も強くなるはずだ。その費用も出す」
ジョンは「いくらディレオスが金持ちでも申し訳ない!」と言うが俺は「なら俺の再興した村の聖騎士になってくれ」で説得した。
そして2日後まで、俺の村の再興計画を話しつつ、彼が町や村の監督役となる聖騎士としての知識を活かして、アドバイスを貰い、昼頃にグライン鍛冶屋に訪れた。
ガチャと開けると、グラインさんの兄が座って、目を瞑っていた。
「グラインさん!」
「……来たか……すまねぇが……俺はお前の信念に惚れ込んでよ……寿命も込めちまった……職人バカってやつさ……」
そして、グラインさんは立ち上がると、裏手の金庫を開けて、剣を取り出す。
紫色の剣身に、フラーと呼ばれる剣の真ん中には黄金のルーン文字が刻まれた黒い金属、リカッソと呼ばれる剣身と鍔を繋ぐところは逆三角形を描きながら真ん中には聖石の根源玉に寿命を込めたと思われる生命の根源玉が、三角形と丸を使ったシンボルマーク、グリップは焔煌龍の剣のグリップの為、ロムス家の信頼がある証にもなる。そして柄頭の先端にはストライクソードの短剣くらいの刃が取り付けられていた。
「この剣の名前は……?」
「神殺の降臨剣「ゼウス・スローター・カーテナ」……さ……レアランクは……出来た時にはZと書いてあった……恐らくだが人類の未知の領域の剣だろう……絶対に……手放すなよ……その剣がお前を主だと認めてる……って教えてくれたからな……」
「ありがとう……本当にありがとう……最期にお買い物してもいい……?」
「なんだ……?」
「彼に見合う剣を……」
グラインさんは少し笑みを見せる。そして震える指で奥の部屋を指す。
「この剣の前に俺が作った中では……第2位の剣が鍵付きの……ロッカーにある……その……短剣が……鍵……だ……」
腕ごと倒れる。
「グラインさん!こんな……こんな……俺なんかの為に……」
「ディレオス!グラインさんはお前はこんなヤツじゃないと思って寿命を込めたんだ!村を再興して、平和な暮らしを取り戻そうとしたお前に全てを託したんだ!それを俺なんかとか言うな!」
「あぁ……あぁ……そうだな……ジョンの武器、取りに行こう」
奥の部屋に入り、左脇に高さ150cmほどの黒い金庫があり、カーテナの短剣を鍵穴に差し込むと開いた。
そこには白銀と蒼色の鞘と剣身。黄金の装飾を混ぜ合わせた剣があり、仕様書には潔白の聖剣「イノセント・エクスカリバー」と書かれていた。
「S+ランク……こんな業物を僕に……ディレオス。グラインさんの墓を立ててあげよう」
「そうだな……家族には俺が連絡する」
二人で夜まで穴を掘り、遺体を埋めて、上に置く物を二人で考える。
「これ……返さないとな……」
俺は死霊水晶の剣を突き刺して、二人で手を合わせる。
「なぁ、ジョンなんとかして、これを抜けないように出来ないか?」
「ちょうどいい物があるよ。兄が固有スキルまでは行かないけど護符の制作スキルがあるから、それで作った封印の札がある。これを死霊水晶の剣に貼ってと……」
護符が金色に輝きながら消えて、俺が抜こうとしても抜けないことを確かめる。
「ありがとうジョン」
「僕こそ礼を言うべきだよ。本当にありがとうディレオス」
「これは俺の村に来るまでの費用にしてくれ」
2億ルピーの入った皮袋を渡す。その重みは俺とジョンの絆を永遠に繋いでくれると信じたい。
「しばらくのお別れだが、俺はお前を応援して、ディレオス村で待ってる」
「僕も聖騎士として、可能なら仲間も連れて会いに行く。ディレオスの冒険に祝福を」
そして俺達は分かれ、レスティアに通話をかけて、グラインさんの兄が亡くなった事を伝えて、剣の作成料金として全く足りないのは分かっていたが5億ルピーを郵便局で送金した。
俺はロアノスへと帰る。まだ休日は残ってるので、ジョンと立てた村の再興計画の費用の概算を見積もる予定だ。
こんばんは!黒井冥斗です!いつもご拝読頂きありがとうございます!
今日は久しぶりにマクドナルドに行ってきました。ビックマックの美味さには感服するばかりですね。特にあのソースが大好きです。ちなみに黒井の調理・料理スキルは最底辺もいい所な感じです。
今日の晩御飯も楽しみですね、皆様もよい食事に巡り会えますように!




