55 箱庭の箱⑥ ~七日目
目の前に、リスに天使の羽がついたような、二対の白いもふもふが唐突に現れた。ほわほわと舞いながらラッパや笛を吹き鳴らしている。
(へっ?)
右肘を突き出してのけぞったマリサは、バランスを崩して後ろに倒れたが、次の瞬間、ふかふかのシルバーホワイトの毛並みに埋もれていた。
「ワフッ!(マリサ!)」
シロリンが素早く背後に横たわり、マリサを受け止めてくれたのだ。
「まあシロリン、ありがとう」
わしゃわしゃなでくると、べろべろその手を舐めてくる。
かわいいやつめ……なんて、デレた顔でシロリンを愛でている場合じゃなかった。
今、目の前で繰り広げられている、現実世界のものとは思えない奇怪な現象には、覚えがある。
見上げた瞬間、青空に鮮やかな紙吹雪が舞い上がった。
「ワフワフワフッ!(なんかくるよ、やっつけてやる!)」
ぱふん!
巨大な正方形のプレゼントボックスが、目の前に出現した。
『おめでとう! 10000ポイント達成!』
と、文字がきらびやかに点滅したのだ。
ゲームで体験しているから、覚えがあると言っても、それでもしばし、パニック状態になるマリサだったが、突如現れたバカでかいプレゼントボックスの違和感といったら、なんともシュールで滑稽なものだった。
そのせいか、次第に冷静になるマリサだった。
プレゼントボックスの中身はログハウス風の家で間違いない。マイホームを手に入れたのだ。
これも、女神か神かは知らないが、思し召しというやつだろうか、人知では推し量ることのできないものなのだと、マリサは理解を投げ捨てた。
ここへやって来た時は荒れ地に一人きりだった。しかもペラい簡易テント生活だったのだ。あの、発狂しそうなほどの恐ろしさと心細さは二度と経験したくはない。直ぐにシロリンがやってきてくれて、どれ程心強かったことかと思い返している内に、じわっと涙がにじんだ。
体感では長い道程のように思うが、たった七日でマイホームが手に入るとは、ありがたいことには違いないだろう。
白もふリスもどきと、荒れ地に落ちたはずの無数の紙吹雪が跡形もなく消えていた。
(しかし、白もふリス……ゲームで見るよりかわいかったわ)
一瞬で消えたそれらをちょっぴり残念に思いつつ、すっくと立ち上がって、マリサはくしゃくしゃの笑顔をシロリンに向ける。
「シロリン、私達、やったのね! 明日辺りかなって思ってたのに、もう一万ポイント達成だって、わーい、わーい!」
「ワフーッ!(わーい!)」
マリサが跳ねていると、シロリンも真似してジャンプする。
「びっくりしたー、不意打ちなんだもん。しかし、なんの前触れもなく起こるんだねぇ……って、当たり前か」
ぐぅぅー。
シロリンのお腹の音が盛大に響いた。
「ワフゥー(おなかすいたよぅ)」
とすり寄って来たその眉毛が情けなく垂れ下がっていた。
「ぶっ、ふふっ、じゃあ、ログハウスの我が家で、初ご飯にしよう? えーっと、ちょっとの間これ食べて、少しだけ待ってね」
アイテムボックスから小さめのジャーキーを取り出し、シロリンに差し出すと、マリサは巨大なプレゼントボックスへ近づいて行った。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです
※53話の後書きで、後二話ほどと書きましたが、後もう一話で一区切りの予定です。




