54 箱庭の箱⑤ ~七日目
「設定完了っと」
イチゴミルクを飲み干すと、「交換アイテム」より、収穫物との物々交換でシロリン用の肉を一週間分程購入し、改めて、交換アイテムの設定を「10000ポイントのログハウス風の家」とした。
収穫と共に畑を拡張している。畑の面積が約三倍になったため、マイホーム獲得も近いことだろう。
シロリンが、「ワホワホ♪」と楽し気に井戸の方へと駆け出して行った。
(ログハウス風だから、やっぱり内装はカントリー調がいいかしら。ギンガムチェックや小花柄で、テーブルクロスとかカーテンとか、クッションを統一しようかな)
マリサは、マイホームの家具や内装やなんかのことをにやけ顔で妄想しながら、スキップでシロリンを追って行く。
今朝はシロリンが荒れ地を耕した副産物の手ごろな石が増えたため、途中だった井戸の周囲にぐるりと石を積み上る作業を、シロリンに手伝ってもらいつつ頑張ったのだ。
そう言えば……、とマリサは自分の行動を振り返って、苦笑いする。
魔力が切れそうだったのもあるが、石を積み上げる作業のせいもあって、立ち眩みになったのかもしれないではないか。自分は魔力の扱いに慣れていないし、体力に至ってはへなちょこなのだ。シロリンの足を引っ張らないように、シロリンスマイルを翳らせないようにしなければ。マリサは再び、気を付けようと心に刻んだ。
井戸の出来は、少々……いやかなりいびつで不格好ではあったが、取り敢えず、井戸らしくなったとマリサなりに満足している。
ちょろちょろと石の間から水が漏れ続けている井戸に向かって、マリサは水の女神や様々な女神へと祈りを捧げた。
そして、しばらくして目を開ければ、知らぬ間に滑車と木桶が付いており、でこぼこと不格好だった井戸は、石が整然と積み上げられ、水漏れも一切無くなっていた。
目の前にあるのは正しく井戸だった。
「……あ、あれーっ? 私、また別世界に飛んだ?」
と一瞬青ざめるが、横にはシロリンがいて、「アフゥウウ、クゥウウ、ワフッ! (めがみさまがね、あぶないわ、なおすわね、っていってた!)」
と、無邪気に教えてくれたのだった。
「へ?」
頑張ったつもりだったが、どうも崩れそうな酷い代物だったらしい。女神様方から多大なご心配とお世話を頂いているようだと、マリサの顔は恐縮で強張ってしまうのだった。
よく見ると、井戸の内側、側面もブロック状の石でしっかりと固定されており、マリサは驚きで二度見、三度見をする。
「……感謝しますっ」
ぴしっと背筋を伸ばして深々と頭を下げるマリサだった。
パシパシと身体に当たっているのはシロリンの尻尾だろう。隣を見れば眩しいほどのシロリンスマイルだった。
「ふふっ、シロリンも嬉しいね。うんうん、この木桶付きの滑車なんて、ほんとうにありがたいわ。ロバジイに相談しなきゃって思ってたのよ」
「ワフッ、ワフワフワフッ!(ぼく、がしがしって、がんばったよ!)」
ドヤ顔でいるシロリンに、マリサはプッと噴き出した。
「はははっ、そうだね、シロリンが頑張って掘ってくれたんだもんね」
「ワフワフッ!(ねぇ、お水ちょうだい!)」
「はいはい」
シロリンは自分でも水を汲み上げられる……というか噴水のように水を吹き上がらせたり、吸い寄せることが出来るくせに、マリサに甘えているようだ。
木桶にたっぷり水を汲み、シロリン用の深皿を出して水を注いでやると、シロリンは嬉しそうに水を嘗め始めた。
そうして、ランチの後、本日二度目の収穫を終えた時だった。
パピラ~ピラプララン~♪
ファンファファファー―――ン♪
と、ノー天気なメロディと共に、ファンファーレが鳴り響いた。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです




