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箱庭?のロンド ―マリサはもふ犬とのしあわせスローライフを守るべく頑張ります―  作者: 彩結満
第1章

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56 箱庭の箱⑦ ~七日目

 

 リボンを乗せた巨大なプレゼントボックスを目の前にして、マリサはごくっと唾を飲み込んだ。急に身体に震えが来たが、プレゼントボックスに手をかざした。

 すると、四角な画面が現れ文字が浮かび上がった。


 《10000ポイント達成記念、ログハウス風の家 ☆開ける☆今はやめておく》


 震える指を、「☆開ける」の文字の上に慎重に運んでタップした。


 パタパタパタパタ!


 プレゼントボックスが四方に開くと同時に消え去り、小さな、けれどしっかりとした丸木小屋が現れた。


「うぅ、マイホームだ」


 マリサの胸にじわじわとこみ上げるものがあった。涙で視界がぼやける。


「アフゥー、オフワフッ?(これ、ぼくたちのいえ?)」

「そうよ。リアルで手に入れるのが、こんっなに嬉しいなんて」


 画面に新たに文字が浮かぶ。


 《ここに置く ☆はい☆いいえ》


 マリサはキョロキョロと辺りを見渡す。

 隣にはロバジイから譲り受けたテントが置いてあり、その隣には、一本だけ、青い実を付けた果樹がひょろりと立っている。

 目の前には瑞々しい野菜や果物が実る畑がある。

 テントをアイテムボックスに一旦しまい、マリサはシロリンを見る。


「ここでいい?」

「ワフッ!(いいよ!)」


(うん、やっぱここだよね)


 ここまで辿り着くのにがむしゃらだった。 

 だが、ここへ来る前は――ブラックな会社に隷属し続け、会社を一歩出たら、人と交流をする暇など一切なかった。親もいなければ、恋人もいない、友達もいつしか離れて行った。

 箱庭ゲームだけが、心の拠り所だったのだ。そんな、廃人の様な生活から、ある日突然この世界へ放り込まれたのだ。


 ここは、マリサが日課にしていた唯一のゲームの世界と類似していて、女神もいれば魔法もある、摩訶不思議な現実世界だった。

 僅か七日間で、様々な驚くような経験をした。良い隣人に恵まれたと思えば、非常な仕打ちに、怒りと共に、シロリンを失うかもしれないという、胸が張り裂けそうな程の悲しみを味わった。

 廃人の様だったマリサは、シロリンと出会って、人として生まれ変わったと言える。これほど感情を揺さぶられる日が来るとは夢にも思わなかったのだ。


 テントがあった場所に改めてマイホームを設置した。

 土で汚れた袖でぐいっと涙を拭い、ジーパンのつなぎ、麦わら帽子、長靴、それらを掌でパンパンと叩いたり、振ったりして、出来るだけ土を落とす。


「マイホームをいきなり汚したくはないものね」


 ある程度汚れを落としてから、ブロックイチゴで胸元のコートを赤く染めた上に、土にまみれたシロリンも一緒に、浄化魔法をかけた。


「よしっ、綺麗になったね」

「ワフッ(うんっ)」


 マリサは少し緊張しながら、ドアに近づく。


「は~、木の香り、癒されるー。これで夜、安心して眠れるわ。ううっ、また泣けてきたよ」


 いくらシロリンと一緒で、テントに魔物除けが付いているとは言え、やはりしっかりとした家は嬉しい。安心感が格段に違うのだ。

 ドアノブの下に鍵穴がある。このまま入れるのだろうかと首をかしげてしばし考えていると、目の前に金属製の鍵が現れて、ぽとんと落ちるのをキャッチする。


「マイホームの鍵ね」


 もう一度涙を袖で拭い上げ、くふりと笑ったマリサは鍵穴に鍵を差し込んだ。

 そして、ドアを開けたとたん、赤く点滅する四角いウィンドウが目の前に現れた。


 《使用開始と共に、初心者ギフト「簡易テント及び畑の外敵からの保護」は消失しました》


「ええーっ!?」


 びっくり設定に思わずのけぞった。

 どうもここには魔物が来ないと思っていたら、シロリンがいるからというのもあるだろうが、そもそも初心者用の設定として組み込まれていたらしい。


「ワフゥ?(どうしたの?)」

「うーんとね、もしかしたら、畑を魔物が襲うかもしれないって」


 シロリンがここにいれば大抵の魔物は近寄らないだろう。けれどここを離れた時はと考えると対策を考えた方がよさそうだ。

 ここへ来てこの世界のシビアさを思い知り、乾いた笑いが漏れる。


「現実に、とってもエグイゲームの設定よね……」


 マリサは溜息を吐きながらふと思い出す。ゲーム時代のマリーサの畑は、モモクマがいたおかげか、畑を荒らされたことはなかったと。


「ほんと、へんてこな世界……だけど」


 と、ログハウスに入ってみると、コンパクトに見えた外見より、結構広く感じた。

 そんな設定はなかったように思うが、気のせいだろうかとマリサは首を捻る。

 まだ家具も何もない、広々とした空間では、早速シロリンがはしゃいで走り回っている。


「ワフーッ! オフワフーッ。ワフーッ!(わーい! ぼくたちのいえだ。わーい!)」

「あははっ、もう、シロリンったら。ほんと、この世界に来て、私は初めて人らしく生きている気がするわ」


 そうだ、シロリンと二人で、しっかりと地に足を付けて生きていくのだ。

 マリサもシロリンを追いかけるように駆け出した。



こちらで一区切り、一章といたします。

ここまでお付き合いくださった皆様ありがとうございました。

この先は、某所にお呼ばれしたり、ライアン姉の出産、王都の動向等々、展開をあれこれ考えてはいますが、更新は未定となっております。

また他の作品や、箱庭が再開することがありましたら、その時はよろしくお願いいたします。


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