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第四話 久しぶり、言わないけど

十四歳になった僕は村人が来ないような静かな村のはずれで炎の魔法を練習していた。


ここは五年前、両親が一人で外に出ることを許してくれた後、魔法の練習場所を探し始めていたときにたまたま見つけたところだ。のどかで静かで落ち着いていて誰もこないここを僕はとても気に入っていた。時折、興味をもった動物たちが様子を見に来るのも心地よい。


あれから魔法を練習しつつ考えた結果、たどり着いた結論がある。

それはレニーを今、暗殺するのは難しいということだ。


なぜならまずレニーが今住んでいるところが分からないのだ。漫画やオルカの時に故郷の話を聞くことは度々あったものの、それは偽の情報だった。これは漫画の作者が後に明かした話であり、オルカが語った自分に関わることは全部偽物だったという小話だ。なので、彼がどこで生まれたのか、どこにいるのか分からないのだ。


探し出せばいいんじゃないの、と誰しもが思うだろうが実はそれは難しい。まず、この世界は日本の時と違いネットとかがないため、情報収集が難しいのだ。前世のような情報世界だとこの世界は厳しいと思う、僕も少しだけスマホというものが恋しくなった。


それにまだ子供だったため自分の足でレニーの居場所を探し出すのも難しいし、家にあまりお金の余裕がないため親に色んな所に連れて行ってもらうのも難しかった。一人で動いても可笑しくない年の頃、旅をしながら探そうと考えたが旅をしようにもレニーがいる場所の目途すらない中、見つけ出し殺すというのは砂浜の中で星型の砂を見つけるくらい難しいし、これもまたお金がないため諦めた。


したがって暗殺のタイミングは入学後くらいしかないのだが、そうなると暗殺のレベルは超高難易度になる。なぜなら小話から分かるようにレニーは入学前から魔物とつながっているのだ。だからいつ魔人化してもおかしくない。


オルカの時は仲間と一緒に立ち向かったというのに全滅した。僕らも弱いとは思っていたなかったのに、全く歯が立たなかったのだ。


そのため暗殺するにしても今の僕では到底かなわない。炎も風ももっと使えるようにならなくてはいけない。だから僕は時間があれば村のはずれにきて、特訓の日々を送っていた。力をつけるために


明日は教会で〈適性の儀〉がある。明日僕は魔法適性が発覚して、もうすぐ学園に入学する。あと少しで漫画がスタートするのだ。うまく立ち回ろう、目立たぬように、ただの脇役を演じるのだ。




_______________________________



教会で無事魔法適性が認められた僕は、荷物をもって学園の前についていた。教会の話をしようにもただ教会で触った水晶の色が赤色に変わるだけで何もおもしろいことはないため、省略させてもらう。


親は僕のことを誇りだと言い村総出でお祝いしてくれた、そんな両親を見ていると、とても申し訳なくなって途中から正面から顔を見えなくなった。僕がやろうとしているのは所詮人殺しだ。この世ではとてもよくしてくれた両親の一人息子の将来をそんなものにしてしまうのがとても申し訳なかった。だが二人はそんな僕に何か感じとったのか最終日、十四歳になった僕を久しぶりに抱きしめ言ったのだ。


「私たちは何があってもずっとあなたの味方よ、何かあればすぐ逃げてきなさい。自分を大切にしなさい。魔法が使えるから自慢の息子じゃないの、あなたが好きだから自慢の息子なのよ」

「ここはお前の居場所だ。ずっと愛しているぞ、ルーア」


親とは偉大である、僕が何も言わずとも親は感じ取ってしまうのだ。僕は目を少しだけ潤ませ、何も言わず二人の背に腕を回し強く抱きしめた。


オルカのときも母親がいた。死んだ父親の分まで働き僕を育ててくれた母は入学中、病気によって息を引き取った。その間、母はオルカに一ミリも最後を悟らせなかった。頑張っているときに気を使わせたくなかった、という粋な計らいだったのだがそのせいでオルカは、僕は母の最期に立ち会えなかった。それも仲間とともに乗り越えるのだが、オルカとしては全く立ち直れてなどいなかった。漫画でも立ち直っていた描写だったが心の中ではずっと荒れていた。たった一人の家族を亡くしたのだ、それは考えられないほどの喪失感に襲われた。オルカは皆に心配かけまいと立ち直ったようにして、周りを安心させたのだ。


二次創作で死んだオルカと母が天国で再開するイラストが多く生まれたが、今の僕からすればふざけるなという話だ。だって会えていないのだ、死んだあとは息つく暇もなく転生させられ、母と天国で再開なんてできていない。


今回、一度我慢できず、今世の親には旅行といい一度だけ遠目から母の姿を見に行った。ちょうどオルカはおらず母が一人仕事をしていた。ボロボロの服で糸を紡いでいる姿は、昔となんら変わらず思わず涙ぐみそうになった。今世でも母を救うことはできない、母がなった病気はこの世界では治すことができない難病。何が原因なのかも分からない、無理を繰り返したせいだとも言えないのだ、裕福で苦労という言葉を知らないオルカたちとは真反対の人間ですら同じ病気で死んだ。


変えたくても変わらない未来はあることを実感し絶望した瞬間であった。それからもう母には会いに行けていない、今はオルカじゃない、ルーアなのだ、母はもう今の僕の母じゃない。だから割り切っている。いや嘘だ、本当は今も大切な母だと思っている、でももう怖いのだ、もう一度失うことが、あの喪失感をもう一度体験することが、だからもう近づかない、結局僕は怖くて逃げるのだ。


随分考え込んでしまった、早く寮に荷物を持っていかなくては


「なあ、」


後ろからの声にびっくりして振り返る。


「お前も新入生か?さっきからそこで固まってたけど」


見られていたのか、しかもこいつに


「君は」

「俺はマネ・ブライアント」


眩しい笑顔でマヌと名乗ったこいつを僕は勿論知っている。僕らのクラスのムードメーカー担当、マヌ・ブライアント。オルカの時はとても仲良くしていた友達だ。そして最後はレニーに殺された仲間の内の一人だ。まさかこんな初日から中心人物と出会うとは、マヌはよろしくと手を差し出してきた。さすがにここで断るのは感じが悪すぎるため僕も手を差し出す。


「僕はルーア・アステリ、君の予想通り新入生だ、なんだか緊張してしまってね。」

「わかる!まさか自分が魔法使いになれるとかやばいよな!子供の頃から夢だったのに今でも信じられないぜ!」


相変わらずうるさいく、表情すら騒がしいが、こいつがうるさく喋っていることに安心してる僕がいる。あの時は動かない人形のようだったから


「なあ、顔色悪いぜ、大丈夫か?」


心配そうなマヌの声にハッとなる。


「なんでもない、もう入ろう」


気が付いたら気持ちが暗くなってしまう、気を付けなくては。


マヌと共に寮に入る。当たり前だが寮は何も変わっておらず懐かしい気持ちになる。

ここでオルカの時はやんちゃしていたのがとても遠い記憶のようだ。


そう思い返しているうちに自分の部屋についた。僕はさっさとマヌに別れを告げ部屋に入る。マヌには悪いが必要以上に仲良くなるつもりはない。暗殺に失敗したらマヌは死に、暗殺に成功したら人殺しとして皆からマヌからも失望される、どっちにしても自分が怖いだけだが、僕からしたら最初から仲良くしない方が楽なのだ。数日もすれば入学だ。しばらくののどかな時間のんびりしよう

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