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第五話 懐かしきあいつと入学式

入寮した次の日、僕は街に出た。


街は人で賑わっており僕の村とは全く違う。人の多さの違いは勿論なのだが、この街は魔法学園があるという理由で魔法使いが多く住んでいる街なのだ。だからか観光客も多く余計に人が多い。しかし今回僕が街に出てきた理由は観光ではない、入学までに自分で制服と杖を買わなくてはいけないため仕方がなしに街で出たのである。


入学用の持ち物が書いてある紙には売っている店が書いてある、紙で記載された店で買った制服は懐かしくもあり、嫌な記憶でもあり、大切な青春の思い出だ。制服に腕を通したときは戻ってきたかという実感が湧いてきた。杖も前回と同じ店で買えばいいのだが杖は書いてあるお店を通りすぎた。


この杖屋は大体の生徒が杖を購入するお店でちゃんとしたところではあるのだが、そのお店よりもいい店を僕は知っている。街外れのくたびれたお店、年期が入っていて店が営業しているのかも怪しい、ここはオルカとして在学中、杖が折れたときにたまたま見つけたお店だ。そのため営業をしているのは分かっているのだが、明かりもついていないため不安になってしまう。僕は恐る恐るドアを開け、顔をのぞかせる。


「なんだ」


途端に不機嫌そうな男の声が聞こえてきた。男は七十代くらいの老人でこちらを不機嫌そうに見ていた。


「街を探査中、迷ってしまいまして。ここはなんのお店なのでしょうか」


元から用意していたセリフをいうと、男は興味なさげに手元の新聞に目を戻した。


「はっ、魔法学園の新入生といったところか、貴様には関係ない店だ、さっさと出て行った。」


この男が作る杖はとても上等なもので、昔は学園お抱えの杖職人だったが性格が面倒くさく、学園から縁を切られてしまったのだ。そのため学園に対し不満を持っていて、生徒に杖を売ることはまずない。ここを訪れるのは、お抱え時代に杖を買ったこの男の能力を知っている人間くらいだ。とは言え、僕に杖を売ってくれなくては困る。


「雰囲気見たところ、杖屋かと思ったのですが」


男はピクリと反応する。僕はそれ以上何も言わず、おいてある杖のうちの一つに近づく。この杖はオルカのときの相棒だ、学校お抱え杖屋の杖よりもとても上等で僕の魔法を最大限引き出してくれた。杖なしでも魔法が使えるといっても杖はあったほうがいいに決まっている。


僕が近づくと杖が薄く光った、まるで僕のことを待っていたかのように、自分の存在をアピールするように白い光で、驚いたような表情を見せながら僕はバレないよう小さく微笑んだ。予想通りだ。杖は魂から人を選ぶことがある、オルカと魂が一緒の僕は魂で人を見ている杖に選ばれる自信があったのだ。


「杖が光ったのですが」


まるで意味が分からないというように男を見れば、男は驚いたようにこちらを見ていた。


「杖が人を選ぶのか、珍しい。貴様がここに来たのも杖に呼ばれたのか運命というものか」


前は確かに運命に近かったが、今回は運命とは言えない。どちらかというとやらせだ、しかしこれは言えない内緒だ。


「気に入った。持ってけ、泥棒」


笑ったりしていないが、すこし機嫌よさそうに男が言う


「いいのですか」


「杖が貴様を選んだのだ。大事にしてやれ」


先ほどから貴様呼びなのは全く持って気にいらないが、これはありがたい


「ありがとうございます。」


杖を握るととてもしっくり来た。まるで何年物の相棒のよう、実際それに近い、前々世でも幾度の戦いを共にしてきた相棒、僕は待ってたよとおでこに杖を当てた。僕はそのまま大切に杖をカバンの中にしまい感謝を述べる。面倒くさい男だが杖に関してはとても信用できる男だ。もう用がなくなったため背を向け、店を出ていこうとすると後ろから声で止められた。


「おい、金は払っていけ」


知ってた。


_______________________________


入学式の朝、懐かしい制服に着替えていると、部屋の扉がリズミカルに叩かれた。嫌な予感がするため無視を貫こうとするが、扉を叩く人間にはそんなもの通用しないらしい。ドアをたたく力が段々と強くなる。


「おい、ルーア寝てんのか?!遅刻するぞ!」


朝から元気そうな男の声、マヌだ。寝ているわけではなく無視しているのだが、マヌがそんなこと気が付つくはずがなく、一生騒がしい。正直言ってとても近所迷惑だ。こんな最初の頃から周りの人間に迷惑な人間だと思われたくはないため、仕方がなく扉を開ける。扉を開けた先には、一瞬いきなり空いたドアに驚いた間抜けそうな男が立っていた。


「あ、おはよう、ルーア!一緒に行こうぜ」


朝からとても元気である。


「マヌ、先に行ってくれないか」


マヌと行くと嫌でもとても目立ってしまう、僕は大人しくしていたいのに。しかしそんな気持ちマヌには通じない。


「なんでだよ、もう準備できてんじゃねぇか」


早く行こうぜと動く気配のないマヌを説得することは難しいだろう。仕方がない、とため息をつく


「わかった、ちょっと待っててくれ」


再び部屋に入りカバンを取ってから戻ると、マヌは行くぞと先導し元気よく歩き出した。声も歩みもルンルンとしていて、学園を楽しみにしているのがよく分かる。きっと昨日も楽しみでよく寝られなかったことだろう。


「ついに今日から俺は魔法使いになるんだ!俺の属性魔法なんだろうな、なぁルーアはなんだと思う?」


マヌの属性は土だし、ついでにいうと僕の魔法は炎だ。分かりきっているが、当然そんなこと言えない



「さあ、なんだろうな」


「俺は炎だと思うんだよ、だってやっぱかっけえだろ炎とか」


前回ならわくわくを隠せないマヌの気持ちも分かり合えたが、今回はもう自分の魔法だけでなく皆の魔法も全部分かっているため何も楽しみでない。僕からしたら再度確認のよう。そのため適当に返事をしておく、僕が適当に返事をしてもマヌは元気に一人でしゃべっており、こちらをなにも気にしていない。助かるような、人の話を聞いていない男に対して呆れればよいのだか


そうしていると入学式会場に着いた。会場はもう人がだいぶ揃っており賑やかだった。席はクラス別になっており、事前にもらった紙にクラスが書いてある。僕はB組で予想通りでありマヌやオルカと同じクラスである。


「なぁ、ルーアは何組?」


「B」


「おぉ!同じクラスじゃん!」


マヌはすっげぇ奇跡じゃん、と騒いでいるが知ってた。一生騒がしいマヌとやっと別れることができ、静かに自分の席に着く。もうこの時点でこれからの学園生活が不安である。マヌは無邪気、元気なムードメーカでいいやつなんだが、一緒にいると目立ってしまう。


僕らが来たのは大分最後の方であったらしくすぐに、騒がしかった会場が段々と静かになり緊張感が流れ始めた。眼だけで見渡すと見覚えのある先生と生徒ばかり、まだ始まってもいないのに早く終わらないかと考えているうちに、硬い男の声が開式の言葉を告げた。


入学式はつまらない、特に学園長からのありがたいお堅い挨拶はあくびが出てきてしまうほどつまらない。学園長はとても強く尊敬できる人ではあるが、それとこれとは別である。この無駄に長い時間をもう少しどうにかできないものか、話の内容に大切なことが入っていてもこれでは気づけない。もう少し簡潔明瞭に話してもらいたいものだ。


「くぁ、っ」


思わず出てしまったあくびを我慢していると学園長と目が合った気がした。こんなにも人がいるのだ、気のせいだと思いたいが、目が合った鋭い金色の瞳に背中がとてもぞくっととした。恐怖か、怯えか、武者震いか、嫌な予感か僕にもそれは分からない。あくびをしたのがバレたというのだろうか。まじめな挨拶の途中であくびをしたのは謝るが、気が付くとはとんだ化け物だ。早く終われよと思いながら聞いているとようやく挨拶が終わり、新入生代表の挨拶になった。


「新入生代表、オルカ・ハンウィン!」


僕はパッと前を見る。代表は前回同様オルカだ、オルカを今世で初めて見た。暗い蒼髪、藤色の瞳全く変わっていない。存在しているのだろとは思っていたが、自分自身がこう存在しているのはなんだか気持ちが悪い。今の姿はまるで違うのに、鏡を見ているようだ。


堂々挨拶をしている姿は流石と言える、前はなぜ貴族もいる中、自分が新入生代表になったのだろうと思っていたが、そこは漫画で学園長が語っていた。


オルカ自身も気がついていないが実はオルカは一度、幼い頃に学園長に出会っているのだ。その時にはもう学園長はオルカから高い魔力を感じ取っており、目をつけていたと・・・いうことなのだが、言ってしまえばご都合展開、主人公特典というやつだ。


新入生代表挨拶は、何か失敗するわけでも、イきり散らかすわけでもなく平和に終わる。もし、何かあったとしたら羞恥心で僕はここにいない。緊張しながら未来に希望を抱いているオルカの姿は懐かしい、ここからオルカの人生は始まったといっても過言じゃない。


「以上を持ちまして、新入生代表の挨拶とさせていただきます。」


キリっとした終わりで挨拶が終わる。オルカ・ハンウィン僕であって僕じゃない人、これから苦労をしながら仲間と成長する人、そして卒業できなかった人。そんなオルカ・ハンウィの僕が未来を変えてやる、僕はオルカに誓うように拍手をした。


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