第三話 僕の魔法
あれから数日後、自宅謹慎が解かれた僕は久しぶりに外に出た。と言っても許されたのは家の近所だけで基本は親と一緒なのだが、それはもう仕方がない。
中身は成人済みとはいえ外見は五歳児だ。本当はもう静かに室内で大人しく過ごしていたいが、ルーアのような好奇心旺盛で騒がしい子供がいきなり大人しくなるとそれこそ親の不安が加速するため、しばらくは前の自分を演じようと思う。
「ルーア遠くに行っちゃだめよ」
「はーい!」
元気な子供を演じるのも疲れるものだ、一回目二回目共に好奇心旺盛な子供だった気がするのにこんなにも疲れるなんて。
久しぶりに外に出た僕は家の庭にどっかと座る。何も敷かずにそのまま地面に座り込んだため、草の感触を手で感じる。外で元気いっぱい動くことは嫌いだが、自然を身体で感じることは好きだ。
さて、一人になったところで魔法の練習がしたいが、誰かに見つかる可能性があるためうかつに魔法は使えない。
本来は魔法学園で魔力の扱い方を学んで魔法が使えるようになるのだ。こんな五歳児が魔法を使えるとかただの異端児でしかない。というかそれだけじゃなくて僕の魔法は魔訶不思議すぎるから外では使えない。
それは僕が出す炎が蒼い炎だからという話ではない、実は蒼い炎は全く珍しくないただの炎魔法だ、不思議なのは魔法の放出方法。
普通魔法とは自分の杖から放出される。よくあるアニメや漫画の魔法もそうだろう。だが僕はあの時、杖もなく手から魔法が出た。
あれから魔法を使うタイミングがないため、あれが奇跡だったのか、僕が魔法界の常識をひっくり返すような魔法が使えるようになったのかは謎だ。というかあまり覚えていないが、同級生のルーアの魔法は風だったはずだ。しかし僕からは蒼い炎が出た。しかもオルカのときの赤い炎ではなく蒼い炎。
炎の色は人によって赤や青、緑なんかもあるが対して威力に違いはない、それでもオルカのときと色が違うのはどこか不思議だ。なにかあるのではないかと勘繰るのか仕方がないが、今だこれといった理由は見当たらない。もしかしたら大して理由はないかもしれない。
次に風魔法についてだが、理屈で考えれば僕は風魔法も使える。しかし通常は先程述べた通り、魔法は学校で習わないと使えない。炎魔法は前々世の魔法であったため使える理由は分かるが、風魔法は習ったことがないため使えるとは思えない。しかしだ、杖がなくとも魔法を使えるのかもう一度試してみたいところ、炎魔法より見つかっても魔法だとバレないであろう風魔法は都合がいい。風魔法を試す機会でもあるし、やってはいけない理由もないため風魔法を試してみることにした。だが。これでもし風魔法を使えるとなれば、僕はいよいよ人間離れしてくる。僕はそう思いながら苦笑いを浮かべた。
いよいよ魔法を使うため、意識を集中させる。魔力の流れを意識し風を想像する。落ち葉を躍らせるような風、涼しいさわやかな風を。そして風属性の友達が使ってた魔法を思い出す。
「〝風よ、舞え〟」
ビューッ
音が鳴るような強い風が吹いた、髪がなびき草が舞う。僕は自然と指を向け、その風をなぞるようにしてから木の葉に向かい指を向ける。すると風は指になぞられ、木の葉を撫でた。僕が指をおろすと風は消えていった。僕はこの光景を見たことがある、それも魔法学校で、これは
「完全に使えていたな」
はは、と思わず乾いた笑いが僕からでた。
杖なしで風魔法が使えると仮定したのは確かに僕だが、属性魔法が二種類もあるのは可笑しいし、杖なしでしかも習っていない魔法が使えるのはさすがにやばい。
これは前世の漫画でいういわゆる主人公特典というものなのだろう、オルカという役を解かれても主人公属性が残っているのはもはやあきれが出てくる。いつまで神様は僕に主人公を演じさせるつもりなのだろうか。今のルーアはモブキャラだろうに。
だがこれは都合がいい、レニーを暗殺するのにバレにくい風魔法と杖なし魔法は暗殺に向いている。少しずつ練習をしていこう、風魔法を扱えるように。




