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第二話 思い出してしまった

「もう、ルーアはしばらく外出禁止だからね」


倒れた後たまたま通りかかった村の人間に保護された僕は高熱を出し、それはそれは両親と村の大人たちにこの世が終わるかと思うほど怒られた。


当然謹慎処分のわけで、今日も母さんに言い聞かされた後自室に閉じ込められた。


前の僕だったら抜け出すことを考えていただろうが、今は違う、どちらかと言うと記憶を整理するための一人のこの時間はとても助かった。なんていたってあまりにも情報過多で今でも記憶が混濁しているからだ。僕があの時思い出した記憶は、所謂前世の記憶だ。しかも二つの人生の。僕は今三回目の生なのだ。


前世は日本という今とは違う魔法もない世界に生まれたただの人間だった。


いろいろ・・・本当に色々あり人間不信になりかけていた僕だが、最後は友達に背中を押され車道に飛び出し、車に轢かれて死んだ。人間不信になりかけていた僕は完全に裏切られ友達に殺されたのだ。思い出そう程、殺意が芽生える。


だがこの際そんなことはどうでもいい、問題なのはそこじゃない。問題なのはそのとき僕が一番好きだった漫画だ。


『一番星の魔法使い』という魔法学園物語。主人公〈オルカ・ハンウィン〉が仲間たちと共に魔法学園で魔法を習いながら起こるトラブルを解決し、魔物を倒すというよくあるお話だ。僕は前世主人公オルカに憧れを抱き、オルカを目指していた黒歴史があるほど好きであった。


今ではそれがとてつもなく恥ずかしい、しかし理由は黒歴史だからではない。黒歴史であることに違いはないが、一番の理由はそこじゃない。


そのオルカこそ”一回目の人生の僕自身”だからだ。


誰が信じられるだろうか、一回目の人生が二回目の人生で漫画になっていて、二回目の僕はそれが大好きだったという話を。本当に意味が分からない、だれがあんな人生を漫画にしたというのだ、あんなバッドエンドを


そもそも僕が『一番星の魔法使い』を知ったきっかけもバットエンド作品として紹介されていたからだ。先ほど言った通り一番星の魔法使いは、学園を舞台に主人公と仲間が一緒に協力し成長していく物語だ。いや、ではあった。


この話は最後の最後、主人公の親友でライバルだった男が実は魔物と取引しており魔人化していた。というオチで、仲間と一緒に親友を倒すか光堕ちさせるかと思いきや、親友は悪魔と魔物の仲間を呼びだし、主人公とその仲間を皆殺しにするというなんとも胸糞悪い終わり方なのだ。


魔人化は作中、他の人間でも何度か出てきが、まさか自分の親友でライバルであった男がまさかそれだとは思わないだろう。一番信頼していた親友だと思っていた男に裏切られ、目の前で仲間かつ友達を皆殺しにされたあの景色は、前世の人生がちっぽけに感じるほど思い出したくないトラウマだ。


思い出せば吐き気が止まらなくなり、呼吸が分からなくなりそうになる。それが僕にそのことを忘れるなと言っているようであった。


前世も合わせそんなことを経験した僕は、オルカの紹介文のような仲間思いで正義感あふれる諦めが悪いお人よしにはもうなれない。人に裏切られ、年を重ねた僕はもうあんな無条件で人を信じられない。二回の人生は僕に教えてくれた、信じられるのは自分自身だけだと


僕はこの経験を活かし、今後の生活ではおとなしく過ごして生きたい。一人でひっそり、もう裏切れられるのは散々なのだ。


だがそれにはとてつもなく大きな問題が発生する。それは僕がルーア・アステリだということだ。


ルーア・アステリ、それは記憶が正しければオルカの時に魔法学園で同級生だった男だ。漫画では顔が出てくるくらいで名前すら出てこない同じクラスの生徒、オルカ時代も数えるほどしか会話をしたことがない目立たない生徒。


つまりだ、大変意味が分からいが、この生では一回目と時間軸に生まれてしまったのだ。どんどん話がややこしくなってきた。


全部繋げると一回目の人生が二回目の人生で漫画になっていて、三回目の人生でその漫画の脇役に転生してしまったということだ。整理するとさらに本当に意味が分からない。


この世に今、僕の魂は二個存在するわけだ。僕としても信じられなくて頭が痛くなる。だがこれはもしかしてこれは神様がくれた復讐のプレゼントなのかもしれない。


僕はあいつが裏切ることを知っている、だからその前に抹殺してしまえばいいのだ。前々世なら復讐なんてなにも生まないと反対する派だったのに随分僕も堕ちてしまった。


それに僕はほかにも起きた事柄を知っているわけで事前に防げてしまう。面倒ごとはもう避けたいが、オルカは僕自身だ。自分自身は助けてあげたい。自分が苦しむ姿はこちらも苦しくなる。僕だけはずっと僕自身の味方でありたいのだ。


この世界でやることは決まった、まずは元親友のあいつ〈レニー・グレイ〉の暗殺だ。


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