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Das Heldenlied Neu ヘルデンリート・ノイ  作者: Siberius
Neu Drei Orpheus
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カリグラ

「はっ!? オルフェウス様!? それはどういうことですか!?」

ゲシュマイトが樹海の前で狼狽した。

青天の霹靂である。

「言った通りだ。エルフの里への攻撃は中止。オークの軍はヴァウカ(Wauka)王国に向ける。ゲシュマイト……君の指揮ではオークに無用の犠牲が出るようだな。だは、私は君に期待している。次のヴァウカ王国攻撃でオークどもを指揮せよ。なお。私はほかに用があるので、行動を共にできない」


「何!? オークの軍が我らが王国をめざしているとな!?」

「は、ガゼル(Gadzel)国王陛下!」

場所はドワーフの王国ヴァウカ。

その首都ジャンガラ(Jchangala)にて。

「至急軍を編成せよ! そして、現在ある既存の軍もゴンファイの山で待機させろ!」

ガゼルは軍事的才能に恵まれていた。

彼は国王としても第一級の人物であった。

「はっ!」

「……オークどもめ……エルフの里に行ったかと思えば、今度はヴァウカにまで来たか……いったい何を考えている?」


その後ドワーフの軍はオークの大群を退治した。

ドワーフの軍勢は総勢二万。

それに対して、オークの大群は四万にまで減っていた。

ドワーフたちは山の上から岩石を落としてきた。

その岩石が斜面を転がり、オークに犠牲を出していく。

ドワーフは火と土、そして鍛冶の技術に秀でる。

そのため、歩兵部隊は火炎放射器を装備していた。

それによってオークが丸焼きにされる。

「豚」の焼き焦げる焼き肉のにおいが辺りに充満した。

オークの犠牲は増える一方であった。

それに対してドワーフの軍は優位に戦況が推移しているにもかかわらず、動揺し始める。

このオークどもは死を恐れていない。

それが不気味であった。

それはオークたちが闇の魔法によって操られていたため、多少の痛覚や恐怖では動揺しないよう感覚をマヒさせられていたからであった。


オルフェウス卿はドワーフの城にいた。

彼はドワーフの宝をあさっていた。

オルフェウス卿がゲシュマイトに行動を共にできないと言ったのは城に忍び込むためであった。

「ゾハルはここにあるだろうか? さて……」

オルフェウス卿は部隊が死闘を繰り広げているところ、宝物庫にいた。

ドワーフの趣味か、武器や防具、そして鉱石が置いてあった。

「フム……ここも外れか」

オルフェウス卿は失望したような声を出した。

実際、彼は失望していた。

いや、失望させられていた。

「まったく、ドワーフどもにも失望させられる。さて、では撤収するか」

オルフェウス卿の姿が宝物庫から消えた。


ゲシュマイトはドワーフの騎兵部隊に後方から攻撃され死亡していた。

彼は「安全な」後方にいたため、オークともども殺害された。

ゲシュマイトの死はあっけなかった。

そのため、現在はオークの最高位、オークエンペラーのカリグラが指揮を執っていた。

いや、このカリグラはそれさえ放棄した。

実際は、カリグラは蛮勇な人物であり、指導者としての器ではなかった。

そのため彼は前線に出てきた。

現在オーク軍は前面のヴァウカ軍と、後方の騎兵部隊とで二分されている。

カリグラは後方のヴァウカ軍をたった一人で壊滅させ、撤退に追い込んだ。

その後、カリグラは前面のヴァウカ王国軍に現れた。

カリグラは最強のオークであった。

「グフフフフ、俺様はオークエンペラーのカリグラ! ドワーフどもよ! 死ぬがいい!」

カリグラが斧でドワーフたちを薙ぎ払う。

ドワーフの部隊はカリグラの猛攻によって部隊の戦列を維持できない。

カリグラの斧でドワーフたちは吹き飛ばされるか、引き裂かれるかのどちらかだ。

カリグラのすさまじい暴威に、ドワーフの軍は動揺し始める。

それだけではなかった。

カリグラはニヤリと笑い、顔を歪めた。

彼はドワーフの軍が怖気づいているところ、なんと奇行を行った。

「うぐえっ!?」

「おえっ!?」

前線にいたドワーフたちはおう嘔吐おうとした。

それはカリグラがドワーフの死体をむさぼり喰らったからだ。

「フン、ドワーフの肉はあまりうまくないな」

カリグラはドワーフたちが目を点にしているのを見て、むしろ「食事」を見せつけるようにした。

「岩を、岩を落とせ―!」

ドワーフたちが正気に戻る。

ドワーフたちは左右に分かれ、岩をカリグラめがけて落とした。

岩が転がって、カリグラを押しつぶそうとする。

さすがのカリグラもこれで終わりかとドワーフたちの誰もが思い立った。

ところが……。

爆砕斧ばくさいふ!」

カリグラはみじんも恐れた様子はなく、爆炎の斧を転がってくる岩に斧を叩きつけた。

カリグラは爆砕斧で岩石を木っ端みじんに粉砕した。

砕かれた岩の破片がカリグラの前に散らばった。

カリグラは相撲を取るようにそれを足で踏みつける。

カリグラにはパフォーマンスを見せつけるところがあった。

そして、カリグラは舌を出し、指を下に下げて、これがおまえたちの末路だとドワーフたちに示した。

カリグラは下品な笑みを浮かべていた。

ドワーフたちの背筋に悪寒が走った。

すさまじい蛮勇ぶりであった。

もっとも、このようなやりかたは賢明とは言えない。

なぜなら、このようなやりかたは敵に恐怖を植え付けても、敵からさげすまれるからである。

「何をぼうっとしている! 岩を砕かれたところで動揺するな」

指揮官がドワーフを叱咤する。

「火炎放射器だ! 火炎放射器で奴を火だるまにしろ!」

複数の火炎放射器が火をはいた。

カリグラは炎の前に呑み込まれた。

「ははは、これならあのカリグラも……!?」

大きな影が炎の中から飛び出てきた。

「ガッハッハ! ぬるいわ!」

カリグラが火炎放射器を持っていたドワーフたちを真横に斬り裂く。

カリグラに炎が通じなかったのは彼は闇の魔法によって身体能力を底上げされていたからだ。

ただし、そのため洗脳されるという代償も伴ったが……。

カリグラは斧を離れた位置で振るった。

ドワーフたちはふしぎに思った。

その瞬間、ドワーフの部隊はすさまじい衝撃で吹き飛ばされた。

ドワーフの部隊は悲鳴を上げて地面に転がる。

カリグラはそれを見てにやにやと声を出さずに笑っていた。

「救護班! 負傷者を助けろ!」

ただちに負傷者は看護兵に救出された。

「クックック、まだ、やるか? この俺様の力を見たろう? 死にたい奴からかかってこい!」

もはやドワーフたちには武器を持っての白兵戦しか残されていなかった。

ドワーフたちはカリグラめがけて殺到しようとした。

まさにその時。

「おまえの相手はこの俺だ!」

そこにバイクに乗ったセリオンが現れた。

ドワーフの軍とカリグラのあいだに入るよう、割り込む。

「ククク、これは片腹痛い! この戦闘、いや、虐殺に自ら割り込むとは!」

カリグラはこれを戦闘とは思っていなかった。

カリグラの認識ではこれは虐殺なのだ。

強者による無慈悲な殺戮だった。

「誰だ、おまえは?」

「俺はセリオン。セリオン・シベルスク。ドワーフたちよ、義によって助太刀すけだちする!」

セリオンはバイクを亜空間収納魔術でしまうと、カリグラと対峙した。

「おまえの名前は?」

「俺様の名はカリグラだ! 俺様はオークエンペラー! オークの最高位だ!

小僧! ぶっ殺してやる! 死ねえ!」

カリグラが斧を振るう。

セリオンは大剣をカリグラの斧に合わせた。

カキーンと金属が鳴り響く高い音がした。

セリオンは白刃を振るう。

カリグラを斬り刻むつもりだ。

カリグラはそれに対してすべて攻撃を合わせてきた。

(こいつ、ただ蛮勇というわけではないようだな)

実際カリグラの斧の技は蛮勇で武骨だったが、合理的ではあった。

それがカリグラがセリオンの剣術についてこられた理由である。

セリオンは後方に跳びのいた。

仕切り直しだ。

セリオンは蒼気を大剣にまとわせた。

大剣が蒼い闘気を宿す。

「くらえ! 蒼波刃!」

セリオンは蒼気の刃を飛ばした。

それも、三発。

「フン! その程度!」

カリグラは斧に爆炎を集めると、それを蒼波刃三発に当てて、叩き斬った。

二つの刃がぶつかり合い、爆発を巻き起こす。

セリオンは蒼気で攻めた。

セリオンは全身から蒼気を放出すると、カリグラに接近して、叩き斬る。

「うおおおおおおおお!?」

今度はカリグラが押される番だった。

セリオンは全身に闘気をまとうことによって身体能力を爆発的に向上できる。

セリオンのパワー、スピード、共にカリグラのスペックを超えていた。

しかし、カリグラもしぶとい。

この強化のセリオンにカリグラはついてきているのだ。

セリオンはこれが闇による強化だと思った。

蒼白い刃がカリグラを斬り刻む。

徐々にカリグラは押されていた。

ところが……。

カリグラはニヤリと笑った。

「? 何がおもしろいんだ?」

「ガハハハハー! おまえ生きがいいな! 決めた! 俺はおまえを喰う!」

「フン、その願望はかなえられない。俺がおまえを殺すからだ」

「ガッハッハ! 爆炎斧!」

「氷星剣!」

セリオンはレベル2の氷技を出した。

レベル1の氷結刃ではカリグラの技に対抗できないと、とっさに判断したからだ。

二人の刃がぶつかり、爆風を巻き起こす。

爆風はゆっくりと流れて、散っていった。

それを見ていたドワーフの誰かがつぶやいた、「す、すごい」と。

爆風が消えたところからセリオンとカリグラが無傷で現れた。

カリグラは斧でセリオンを叩き割ろうとした。

しかし、カリグラの攻撃は空振りに終わった。

「むう……このエサは生きがいい。この俺様の炎で焼き肉にしてくれる! 燃えたぎれ! ヒートウェーブ!」

カリグラは炎を斧に集めると、それを叩きつけて炎の波をセリオンに向けた。

この技はカリグラの高位の技だった。

カリグラの技は苛烈を極めた。

そのため、セリオンはレベル3氷技「氷粒剣」を出した。

氷の粒子が大剣にまとわれる。

ヒートウェーブがセリオンに迫る。

セリオンはヒートウェーブに氷粒剣を叩きつけた。

ヒートウェーブは真っ二つに割れた。

カリグラはセリオンに追いつめられた。

「ヒートウェーブも通じんか。なら、この俺様の最強の技で応えるしかないな! 砕け散れ! そして死ぬがいい! 帝王爆炎撃ていおうばくえんげき!!」

カリグラの斧から爆炎が放たれた。

セリオンは蒼気を全身から放出した。

そして大剣にまで蒼気をいきわたらせて、蒼気の刃を収束した。

一本の蒼気の刃ができる。

それはただひたすら、斬り裂くことを目的とした蒼気の剣。

セリオンは帝王爆炎撃を蒼気最強の技で迎え撃った。

「蒼気凄晶斬!!」

セリオンの斬撃が爆炎を斬り裂いた。

セリオンはカリグラに一気に近づくと、蒼気の刃でカリグラの首を叩き落した。

カリグラは死んだ。

カリグラの死によって「オーク戦役」は終結した。

オークたちは闇の洗脳を解かれ、もといた村々に帰っていった。

セリオンはテンペルに帰る前にシルヴァニアに、招かれた。

そこでは宴が催されて、料理や酒、音楽に踊り、歌が披露された。

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