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Das Heldenlied Neu ヘルデンリート・ノイ  作者: Siberius
Neu Drei Orpheus
95/196

ゲシュマイトとカラカラ

オークたちは……。

ゲシュマイトはオークを率いて樹海に足を踏み入れた。

樹海は霧で包まれていた。

まるで死の樹海だ。

樹海の霧は侵入者を明らかに拒絶している。

「むむむ……ここが樹海か……霧で先が見えんな……」

ゲシュマイトたちの前には迷いの霧があった。

この霧は方向感覚を狂わせる。

この霧の中ではまともに戦闘を行うことができない。

視界も周囲三、四メートル以上はホワイトアウトする。

この霧はエルフの族長フレイナが樹の杖で操っていた。

この霧は味方にはプラスの効果がある。

まず、居場所を隠すことができる。

さらに味方の気配を敵からシャットアウトする。

この霧を利用して、フレイナは一進一退の攻防をするつもりだった。

「やれやれ……このままでは進めないではないか……まあいい……オルフェウス様に報告するまでもない」

ゲシュマイトが悪態をついた。

「我々は五万の軍勢を持っている。そのうちなん十体は死ぬであろうが、そんなことは知ったことではない。おまえたち! 死を恐れるか?」

「「「いな!!!」」」

すべてのオークから否定の言葉が帰ってきた。

ゲシュマイトは愉悦を浮かべた。

これこそ、死を超越した軍団だ。

これらの者どもは死をまったく恐れない。

コマとしては最高の存在だった。

「ようし、それでは命令だ! その数の有意さを生かして、突撃してこい!」

「「「ブオーーン!!!」」」

ゲシュマイトもオークの命に対してあきれるほど軽い認識だった。

彼の考えでは一部のオークがエルフの里シルヴァニアに到達すればいいのであって、その他のオークがどうなろうと知ったことではない。

ゲシュマイトもオルフェウス卿と同じく、オークの死に鈍感だった。

ゲシュマイトにとってもオークの命は使い捨てにすぎず、消耗品だったのだ。

「では、行け! オークどもよ!」

「「「ンゴオオオオオオオ!!」」」

ゲシュマイトの命令に忠実にオークたちは霧の中に入っていく。

これは地雷原の中に軍勢を送り込むようなものだった。

霧の中から正確な矢が飛んできた。

エルフの矢だ。

矢はオークの顔を狙っていた。

オークの体は頑強だ

だが、頭はそうでもない。

エルフたちはオークの弱点を看破し、オークたちを次々と射殺した。

その狙いは絶技ともいうべき技だった。

エルフたちは正確にオークの頭を撃ちぬき狙撃する。

オークたちがたちまち混乱状態に陥った。

「オークどもがおびえているぞ!」

「オークどもを恐れるな!」

「豚どもに恐怖を与えろ!」

エルフたちはオークを狙って次々と射殺していった。

オークたちは浮足立った。

エルフたちは霧の援護を受けて、遠くから狙撃してくる。

その狙いは驚異的なほど正確だった。

オークの群れに恐怖のさざ波が起こる。

ゲシュマイトは「執行部隊」に指示を出した。

「いいか、おまえたち! 私の命令通りにやれ!」

ゲシュマイトはあらかじめオークを選別し、執行部隊と名付けていた者たちに霧の中から逃げてきた者を斬り殺すよう命じていた。

そして実際、エルフの攻撃によって恐怖を覚えたオークたちは霧から「後退」した。

彼らは「執行部隊」によって情け容赦なく斬り殺される運命だった。

この命令は忠実に実行された。

もはやオークたちは霧の中に突撃するしかなかった。

前進する以外に道はない。

ただひたすら前に進む以外ない。

その狼狽と、うろたえを、エルフたちは鋭い観察眼で見抜いた。

オークの死体が続々とでき上る。

「ええい! 何をやっている! 迷いの霧など力づくで突破せんか! このバカ者どもが!」

ゲシュマイトが混乱するオークたちを見て、侮辱する。

このゲシュマイトの強気な発言は彼が「安全な」ところから指示を出していることによった。

オークの死体は増える一方だった。

それをアンシャルたちは後方から見ていた。

「さすがだな。エルフは弓の扱いにたけていると聞いていたが、これほど簡単にオークを葬り去れるとはな」

アンシャルが感嘆のまなざしを向けた。

一方、セリオンはただ見ていることに飽きてきたようだ。

その顔が前線に出たいと語っている。

「フッ、セリオン、おまえは前に出たいのか?」

「アンシャル……たっだここで見ていてもつまらない。俺は前線に出ていいか?」

セリオンがアンシャルに許可を求めた。

これは必要なことだった。

現在アンシャルはセリオンの上官に当たる。

これは軍事的なことだった。

「いいだろう。おまえを遊ばせておくほど、余裕があるわけでもないからな。アラゴン、セリオンのサポートを頼む。敵の数は膨大だ。決して包囲されないようにな」

「わかりました」

アラゴンがうなずき、セリオンに同行する。

そして戦場にセリオンとアラゴンが現れた。

オークたちはセリオンを見ると、今までの怒りを晴らそうと突撃してきた。

「では、行くぞ、オークども!」

セリオンのほうからオークに斬りかかる。

セリオンの刃が冷酷なほど無慈悲に斬り下ろされる。

セリオンはオークの群れに斬りこんでいった。

白刃のひらめきが戦場を支配する。

セリオンは大剣を楽々と振るい、オークたちを斬り捨てた。

それはまるで銀の閃光だった。

セリオンの獅子奮迅の大活躍に、オークたちの血しぶきが舞った。

「さすがは、セリオン、か。斬りこみつつも、包囲を警戒しているな」

アラゴンが黒炎刃でオークを焼き捨てた。

アラゴンも強い。

地味ではあるがセリオンを支援しつつ、オークたちに出血を強いていく。

それを魔道具「望遠鏡」で見たゲシュマイトは……。

「何をやっているんだ! 何を! ええいたかが小僧ごとき、数と力でねじ伏せろ!」

ゲシュマイトが絶叫を振り上げる。

もはやオークたちはただ刈られる的だった。

ちなみに、この望遠鏡は霧を無視して、遠くまで見渡せる。

それがゆえにゲシュマイトは「安全な」ところから罵声を浴びせることができるのだ。

「ゲシュマイト様!」

「何だ!」

ゲシュマイトはヒステリックに叫んだ。

オークどものふがいなさに怒りを覚えていたからだ。

もっとも、それは最高司令官の無能ぶりを示すものでしかなかったのだが……。

「オデの出番か?」

「おまえか……いいだろう! あの小僧を討ち取ってこい! 行け! カラカラ(Caracalla)!」

多くのオークの血が流れた。

戦場はオークの地獄だった。

そこにオークの群れをかき分けて、一回り大柄なオークがセリオンたちの前にやって来た。

「ガッハッハ! 小僧! いきがるのもここまでだ! このオデ様がおまえをぶっ殺してやる!」

カラカラはメイスを振りかぶった。

「俺の名はセリオンだ。おまえは?」

「オデ様はカラカラだ」

「それでは、戦場の流儀に従っておまえと戦うとしよう。死んでも恨むなよ」

セリオンは不敵に笑った。

それはカラカラを恐れていないということであった。

それを聞いたカラカラはセリオンを見下した。

「ガハハハハ! 勝つのはオデ様だ! 死ねい!」

カラカラは顔を歪めると、メイスを叩きつけてきた。

セリオンは後方に跳びのく。

カラカラの攻撃がむなしく空を切る。

「ふう……強いな。普通のオークよりも格上だ」

セリオンはカラカラに斬りかかった。

セリオンの斬撃がカラカラを襲う。

カラカラはメイスでそれを受け止める。

「ガッハッハッハ! 軽いな!」

カラカラはメイスでセリオンを押しのけると、セリオンに向かって横からメイスで打撃した。

しかし、そんな攻撃はセリオンには当たらない。

セリオンは今度はカラカラのメイスを大剣で受け止めた。

「な、なにい!?」

カラカラが驚愕のまなざしを向ける。

「どうした? おまえの力はこの程度か?」

「ふざけるな! 死ね! 小僧!」

カラカラがメイスを叩きつけてくる。

セリオンは後退した。

当然、カラカラのメイスが空振からぶる。

カラカラは怒りの表情を向けた。

「ええい、ちまちまと動きおって! この技で仕留めてくれる! ショックウェーブ!」

カラカラがメイスから衝撃の波を出した。

その衝撃は周囲のオークたちも巻き込んで爆殺する。

セリオンは蒼気を出した。

蒼気は冷たく練り上げられ、蒼白い輝きを発した。

蒼い闘気がセリオンの全身と大剣にまでいきわたる。

セリオンはそのまま大剣を振るった。

横に一閃。

すべてはこれで十分だった。

セリオンは翔破斬を出した。

蒼気の衝撃波はショックウェーブを粉砕し、カラカラにまで迫った。

翔破斬はそのままカラカラを、そして周囲のオークたちを呑み込んだ。

セリオンはこれでケリがついたと思った。

「終わりか?」

「ゲハハハハ! オデ様をなめるな!」

「何?」

カラカラは盾にしたオークたちを無造作に放り投げる。

どうやらカラカラは一般オークを盾にして、翔破斬を耐えきったらしい。

「……」

セリオンは味方に対する非道な仕打ちに憤りを覚えた。

「さあ、殺してやるぞ! 死ねええ! クラッシュボム!」

カラカラはメイスに赤い魔力を集めると、それを球体状にして、セリオンに放った。

セリオンは再び蒼気を収束した。

今度は大剣の刃だけだ。

セリオンの大剣が蒼白く輝く。

セリオンは蒼気の斬撃をクラッシュボムにぶつけた。

クラッシュボムは盛大に爆発し、蒼気の刃は相殺された。

カラカラが白目をむく。

「バ、バカな……」

カラカラは愕然とした。

今のはカラカラの自慢の技だったからだ。

それを破られるとは思っていなかった。

「これで、終わりだ!」

セリオンは隙だらけになっているカラカラの頭に大剣を振るった。

カラカラはメイスでガードしようとしたが、蒼気をまとった大剣の一撃は、メイスごとカラカラの首を斬り裂いた。

カラカラの体が倒れる。

カラカラは即死だった。

ゲシュマイトはこのすべてを望遠鏡で見ていた。

ゲシュマイトは狼狽した。

「くっ、あのカラカラが倒されたのか……おのれ……あの戦士はテンペルの援軍か……ええい、面倒なことになった。このままではオルフェウス様に申し開きができん! くそ! 撤収だ! 一時霧から離れた所まで撤収する!」

ゲシュマイトがオークの群れに命じた。

それは完全に敗走だった。

この好機をエルフたちが逃すはずはない。

また、オークたちは混乱していたため、互いに押し合い圧し合い、その圧力や足元に踏みつぶされたりして多くのオークが命を失った。

「敵が引いていく……よし、アラゴン、俺たちも戻ろう」

「そうだな」

セリオンとアラゴンは里まで戻った。

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