先遣隊
カティアはシュヴェーデに向かう途中、森の中でオークの一部隊に発見された。
「くっ、私としたことが……まさかオークがこんな近くにいるなんて……」
オークは匂いを嗅いでカティアを探しているようだ。
カティアは息を殺して、木の中に隠れていた。
オークが何体か近づいてくる。
カティアは刀を構えると、木の下に降りて、オークを斬殺した。
オーク三体の死体が転がった。
「いたぞお!」
「あそこだ!」
「逃がすなあ!」
オークたちが追撃してくる。
カティアは森の中を走った。
オークたちが追いかけてくる。
カティアは崖の近くに追いつめられた。
カティアが後ろを振り返る。
カティアはオークと崖を交互に眺めた。
選択は二つ。
オークにくだるか、このまま崖を飛び降りるか。
「げへへへへへ、もう逃がさねえべ」
「がっはっは! どうする女あ!」
「そこから跳び下りるか、俺たちのおもちゃになるか、二つに一つだ」
オークたちは下品な顔をした。
その顔から欲情しているのが分かる。
オークは性欲が強い。
女性の敵とも言えた。
「く、来るな!」
オークたちは徐々にカティアとの間合いを近づけてくる。
「そこまでだ」
その時、その場にふさわしくない声が響いた。
蒼い刃が飛び、オーク二体を一瞬にして斬り裂いた。
「なんだ、てめえは!?」
オークの背後に人がいた。
金髪碧眼の戦士だ。
「俺はセリオン・シベルスク。テンペルの聖騎士だ」
「? なんじゃあ、そりゃあ!?」
「せっかくいいところだったのによく邪魔してくれたなあ! ぶっ殺してくれる!」
オークたちがセリオンにメイスで打ちかかる。
セリオンは大剣を構えた。
セリオンはオークのメイスを大剣で受け止めた。
「なっ!? どこにそんなパワーが!?」
「散れ」
セリオンは一瞬にして二体のオークを斬り捨て、白刃をひらめかせてオークたちを斬殺していった。
まさに刹那のできごとだった。
オークたちは状況を理解することなく死に絶えた。
「やれやれ、下劣な奴らだ。品性が感じられないな」
「あ、あの……」
セリオンはカティアに近づいてきた。
「もう大丈夫だ。安心してくれ」
セリオンは安心させるようにほほえんだ。
「あなたはテンペルの関係者なのですか?」
「ああ、そうだが?」
カティアはセリオンの前でひざまずいた。
「お会いできて光栄です! 私はエルフの里の隠密で名をカティアと言います。今、エルフの里は重大な危機に直面しています! どうかテンペルのその力を私たちにお貸しください!」
「ああ、わかっている。エルフの里にオークの大群が向かっていると報告があった。そこでスルトは俺をこの森に派遣したんだ。俺がスルトとの面会を受けもとう」
「はい、ありがとうございます!」
セリオンはカティアをテンペルに連れて行った。
カティアはテンペルで暖かく迎えられた。
スルトの執務室にて。
「フム……五万のオークか。これは確かに脅威だ。このままではエルフの里は落ちるであろう……」
「お願いでございます。テンペルのお力を私たちにお貸しください!」
カティアが懇願した。
カティアは必死だった。
ここでテンペルの助力を受けられないのなら何のためにここまで来たのか……。
スルトは理を説いて説明した。
「カティア殿、我々は無慈悲でもないが、傭兵でもない。我々は我々の理念……シベリアニティー(Siberianity)にもとづいて行動している。シベリアニティーを訳せば「シベリウス的精神性」ということになろうか。シベリウスは光と闇の闘争を説いた。光にとって最高の価値は『愛』だ。光の価値には希望や未来を含む。我々は我々の精神性のための組織だ。今回のエルフの里の危機は見過ごすことはできない。ゆえに我々はこの戦いに介入する。まず、セリオン、エスカローネ、アンシャル、アラゴンを送ろう。この四人を先遣隊とし、本隊は遅れて到着する。本隊はオークの軍勢を背後から襲いかかるつもりだ。四人の代表はアンシャルに任せる。それでいいか、アンシャル?」
「ああ、わかった。ではセリオン、カティア殿、すぐに出発するとしよう」
アンシャルが冷静にうなずいた。
「ああ! ありがとうございます!!」
カティアは感極まった。
本心からスルトに、セリオンに感謝する。
「我々の軍隊は闇と戦うためにある。それが我々の仕事だ。エルフの里のフレイナ殿によろしく伝えてくれ」
アンシャル、セリオン、カティアはスルトの部屋を退出した。
「それにしても、五万のオークか……いったいどこの誰がそのような数のオークを集めたのか……黒き闇がうごめいているようだな」
アンシャルが懸念を口にした。
セリオンたちはカティアの案内でエルフの里シルヴァニア(Silvania)へと入った。
エルフの里は多くのテントで構成されていた。
ここには木造の建物はなかった。
すべてテントでエルフたちは生活している。
エルフの武器は弓である。
ナイフも使用するが基本的には男も女も弓を使う。
四人はシカの肉とスープをごちそうになった。
「カティア、戻りました」
「ああ、カティア! お帰り。その方々(かたがた)は?」
フレイナは緑の長い髪をした女性だった。
白いロングスカートをはいている。
アンシャルが一同を代表して答えた。
「我々はテンペルの先遣隊です。私たち三人は戦闘を、この彼女は回復を担当します」
「そうですか……お初にお目にかかります。私はこの里の族長フレイナと申します」
「私はアンシャル・シベルスク。この三人の上司です。お会いできて光栄です」
アンシャルは握手を求めた。
フレイナはアンシャルの握手に答えた。
互いに手を握り合う。
「ああ、スルト殿の友情に感謝します! それで、スルト殿は?」
「スルト騎士団長は聖堂騎士を率いてまいります。戦力のおよそ八割を率いての参戦です。スルト団長は背後からオークを攻撃するつもりです。我々は戦略的に敵を引き付けておき、スルト団長率いる本隊が背後からオークの群れを攻撃して、敗走させるという作戦です」
「それはさすがスルト殿。わたくしどももエルフの強さをオークに思い知らせてあげましょう!」
「報告を申し上げます!」
そこに若い男性のエルフが入ってきた。
彼の髪は長かった。
これはエルフのスタイルだった。
「なんですか?」
「はっ! オークの軍勢が森の中に入りました! 我らの里を狙っています!」
フレイナはさきほどまでの穏やかな顔を一変させて、厳しい表情を見せた。
「そうですか。エルフの戦士たちに出撃の準備をさせなさい! オークどもに我らの強さを思い知らせてやるのです!」
「は!」
男性のエルフは立ち去った。
「族長、私たちも出ます。立った三人ですが強さは折り紙付きですよ」
「わかりました。ですが、客人に無理はさせられません。わたくしどもエルフの戦士のサポートをお願いします」
「では、セリオン、アラゴン、出撃だ」
「わかった」
「わかりました」
「エスカローネはここの残って、負傷者の回復を頼む」
「はい!」
かくして、五万のオークがエルフの樹海に侵入した。




