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Das Heldenlied Neu ヘルデンリート・ノイ  作者: Siberius
Neu Drei Orpheus
92/196

ツァーミラ

ヨーハン公と一人の女が会話していた。

ヨーハン(Johann)はヴァルトブルク(Waldburg)公国の公爵だった。

一方、女は青いレオタードに青いマントを着用しており、髪は金だった。

煽情的な肢体をさらしている。

女の肢体は魅力的な体だった。

「ヨーハン様、我ら闇の軍勢の出撃準備は整いました。これでいつでも出撃できます」

女は恭しく礼をする。

もっとも女はだじゃくなヨーハンをひそかに軽蔑していたのだが……。

城の広間で二人の会話は続く。

「そうか……大義であった。その軍はツァーミラ(Zaamila)よ、おまえが指揮するがいい。我らは闇の民。闇こそが我らの祝福。我々の求めに闇は応じてくれるであろう。ツァーミラ将軍、光の都(Lichtstadt)を攻め落とせ」

「はは!」

ツァーミラは内心ほくそ笑みながら恭しくうなずいた。

ヨーハンはツァーミラに操られていた。

ツァーミラの力「魅了」の力に魅せられていたのだ。

もっとも、ヨーハン自身も望んだことでもあったが。

闇の軍勢は光の都に出撃していった。

かくして、闇の軍勢が光の民を攻めた。

闇の軍勢は闇の祝福を受けた兵士や魔物で構成されていた。

闇の民とは闇を崇拝する民のことである。

光の民とは互いに敵対関係にあった。

闇を崇拝するとは西州エウロピアの価値観では異端以上に否定的なことであった。

それはなぜか?

世界は神によって創られた。

その時神は光と闇を分けた。

その時から光は善、闇は悪となった。

闇の民とは悪しき民に他ならない。

少なくとも、民衆はそう考える。

その闇の軍勢が光の都を包囲したのである。

戦況は包囲した闇側に有利に展開していった。

闇の軍勢は光の都を兵糧攻めにした。

時間をかけて都全体を封鎖し、食料が尽きるのを待つ戦術である。

当初、光の都は川沿いの道を封鎖されていなかった。

そのため、川の水や、魚を捕ることができた。

しかし、闇側が川沿いに射出機を備えると、状況は一変した。

光の側は闇の軍勢を破ろうと、出撃してきたり、会戦を挑んできたがツァーミラは相手にしなかった。

そのうち光の側の食糧の備蓄が危険な水準になってきた。

そのため、将軍たちはテンペルに救援を送ることで一致した。

このため、光側は陽動作戦を行った。

まず、門から攻めて、闇側に打撃を与えるという方法である。

そのあいだの隙に複数の使者を送り出すという作戦だった。

作戦自体は成功した。

しかし、そのうち一人は捕らえられた。

ツァーミラは自らその使者を拷問にかけて、あらいざらい吐かせた。

その時のツァーミラは愉悦を浮かべていたという。

ツァーミラはテンペルが援軍を送ってくる可能性を考慮せざるをえない状況に追い込まれた。

そのうちの一人がテンペルにたどり着き、事情を説明した。


スルトは聖堂で使者からの報告を受けた。

「なんと……リヒトシュタットが闇の軍勢に包囲されていると!?」

「はっ!」

「光の都リヒトシュタットは我らの象徴たる存在だ。それが闇の軍勢に落とされれば光の価値が減少してしまう。それで、闇の軍勢を派遣したのは誰か?」

「ヴァルトブルク公ヨーハンです」

「ヴァルトブルク……あの森の多い地か。至急聖堂騎士団は出撃する! 一刻の猶予もない!」

スルトは聖堂騎士団を引きいて出撃した。

聖堂騎士団は闇の軍勢を背後から突いた。

ツァーミラはヒステリーを起こしてわめき散らした。

スルトは少数の利点を生かし、スピードを最優先に行動した。

スルトの果敢な策により、闇の軍勢は背後を突かれ、散り散りになった。

「くっ、聖堂騎士団! これほどとは……ここは一時ヴァルトブルクまで撤退する!」

ツァーミラは残存部隊を率いて、ヴァルトブルクまで後退した。

スルトはヴァルトブルクを攻めた。

スルトはセリオンを敵の大将のもとに送った。

セリオンは一人、窓から城に侵入した。

窓が叩き割られる。

「俺はテンペルの聖騎士セリオン・シベルスクだ。死にたい奴からかかってこい」

手近の兵士たちがセリオンに襲いかかる。

「きさま! 窓から侵入するとは! 生きて帰れると思うな!」

「散れ」

セリオンは白刃をきらめかせて、兵士たちを斬り刻む。

セリオンの大剣が夜の城の中で明かりを反射して光っていた。

いや、セリオンの大剣自体があまりに速い斬撃で光っていたのだ。

セリオンは死体の山を築く。

城の広間にはヴァルトブルク公ヨーハンがいた。

ただし、彼はもう人ではなかった。

「これは……どういうことだ?」

「ウッフフフフフ……ヨーハンは狼男となったの。この私のしもべとしてね」

そこであでやかな美女が言った。

それはツァーミラだった。

「おまえは?」

「私は月の魔女ツァーミラ。闇の軍勢のあるじよ」

「なら、おまえを倒せばこの戦争は終結するというわけか」

「ウッフフフフ、さあ、どうでしょうね。さあ、ヨーハン! あの男をその牙でかみ殺しておしまい!」

ツァーミラはヨーハンに命令した。

主従関係だ。

いつしか主従関係は逆転しており、今はツァーミラがあるじだった。

ヨーハンはセリオンに襲いかかってきた。

それに対して、セリオンはすばやく一閃を、薙いだ。

セリオンとヨーハンが交差する。

ヨーハンの首が落ちた。

ヨーハンの体も倒れる。

それを見てツァーミラは顔色を変えもしなかった。

「あらあら、ヨーハンはあっさりとやられてしまったわね。フフフ、いいでしょう。この私が相手をしてあ・げ・る♡」

ツァーミラは大鎌を出した。

「さあ、行くわよ。この鎌でその命を刈り取ってあげるわ!」

「いいだろう。かかってこい」

ツァーミラは大鎌を操って攻撃してきた。

ツァーミラの攻撃は銀の黒い刃が鈍い光沢を発した。

まるで闇を象徴するかのような暗い鎌だった。

ツァーミラの鎌の刃はさながら舞や踊りのように乱れた。

セリオンは牙のような鎌をさばきつつ、はじいた。

ツァーミラは月の魔力を高めた。

「はああ! 三日月斬り!」

ツァーミラの三日月斬り。

その名の通り、三日月の斬撃がセリオンを襲う。

セリオンは光の大剣「光輝刃」を出して、この攻撃をガードした。

「ウフフ、くらいなさい! モーント・シャイン(Mondschein)!」

満月が現れてその光をセリオンに放つ。

セリオンはとっさに後退してこれをやり過ごした。

月の光は幻想的で、うっとりさせるようなところがあった。

ツァーミラはダッシュしてセリオンに鎌で斬りつけた。

ツァーミラの大鎌が振り下ろされる。

脳天直撃の一撃だ。

セリオンは大剣を鎌の刃に当てて、この攻撃を防いだ。

セリオンは反撃する。

今度はセリオンの刃が躍った。

白刃がひらめき、振るわれる。

しかし、どちらも決定的な一撃を与えることができない。

「フフフフ、楽しいわね! でも、これまでよ! 死になさい! ボウヤ! ツォルン・モーント(Zornmond)!」

ツァーミラが大きな満月をセリオンに向けて放った。

これはツァーミラの最高の魔法だった。

大きな満月が回転し、セリオンを殺すべく迫り来る。

セリオンは全身から蒼気を発した。

凍てつく闘気が場を支配する。

空気が震え、こごえた。

セリオンは蒼気を大剣に収束させると、蒼気凄晶斬を出した。

蒼気の斬撃が満月を真っ二つにする。

「そ、そんな!?」

ツァーミラから漏れた言葉は驚愕。

ツァーミラはこの攻撃でセリオンを亡き者にできると、そう踏んでいたのだろう。

だが、ツァーミラの魔法はセリオンに破られた。

セリオンはこの一瞬の隙を逃さなかった。

セリオンはツァーミラに接近すると、大剣でツァーミラを斬った。

ツァーミラは動揺していたが、正気を取り戻し、バックステップした。

セリオンの斬撃はツァーミラをかすった。

ツァーミラの顔から一筋の赤い血が流れた。

「なっ!? この私の顔に傷を! よくも!」

ツァーミラが激高する。

しかし、その怒りの矛先は冷たかった。

「さて、これ以上続けるか?」

冷厳な宣告。

それは勝者の態度。

「くう! 覚えておきなさい! 今度会った時はあなたを闇で殺してあげる! 今回はここまでよ!」

ツァーミラは闇の渦の中に消えていった。

かくして、光の都は救われた。

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