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Das Heldenlied Neu ヘルデンリート・ノイ  作者: Siberius
Neu Drei Orpheus
91/196

マンドラゴラ

二人は市民広場まで走った。

市民広場の中央には噴水があった。

「危ない!」

アンシャルが叫んだ。

セリオンはしゃがんだ。

セリオンの頭上を風の刃が走り、広場に傷をつけた。

その攻撃のぬしは空にいた。

「あれは……ハルピュイア(Harpyia)!」

ハルピュイアは女の顔に肢体、そして翼を持つ怪物である。

ハルピュイアが手に雷を集めた。

その手に一本の槍が形成される。

雷電槍である。

ハルピュイアは雷の槍をセリオンに向けて投げつけた。

「そんなもの!」

セリオンは横に跳んでよけた。

ハルピュイアは多くの雷の球を作った。

それらは放電し、形を整えていく。

これはハルピュイアの魔法「多雷球たらいきゅう」であった。

ハルピュイアは多くの雷の球をセリオンとアンシャルに叩きつけてきた。

「くっ!?」

「うおお!?」

二人に向けて雷の球が殺到する。

セリオンとアンシャル武器でこれらの魔弾を打ち破った。

二人にとってこの程度の攻撃は大したものではない。

「ちい、やってくれるな」

アンシャルは上空を苦々しく見つめた。

「あいつはあくまで上空にとどまるつもりだ。厄介だな。どうにかして奴を地上に落とせないものか……」

アンシャルは思案する。

そのあいだもハルピュイアは上空から鋭い牙を出して、威嚇してきた。

地上に降りるという考えはないらしい。

「くっ、あの高さから攻撃されたら、反撃は絶望的だ。どうする、アンシャル?」

「……一つ方法がある」

「何だ?」

アンシャルが事態を打開する光明を見つけた。

「セリオン、私が上昇気流を起こして、奴の高さまでおまえを運ぶ。そこをおまえは一撃で仕留めろ。もっとも、私を信頼してくれればの話だが……」

セリオンはまっすぐな瞳でうなずいた。

アンシャルのことを微塵も疑っていない顔だ。

「ああ、信じるさ。俺をあの高さまで送ってくれ!」

「わかった」

ハルピュイアは威嚇をしつつも次の攻撃を考えていた。

ハルピュイアはこの二人を強敵と見なした。

まともに戦うのは危険だ。

そのため、上空から一方的に攻撃するという戦術を選んだのだ。

ハルピュイアが多連・雷電槍を出そうとしたところ、それは起こった。

回転する風が渦巻き、セリオンを上昇させる。

ハルピュイアは不意を突かれた。

セリオンは大剣を思いっきりハルピュイアの頭に叩きつけた。

ハルピュイアは地上へと落下した。

ハルピュイアは己が死んだと認識することなく闇へと落ちた。

セリオンの一撃が決まった。

アンシャルはセリオンをゆっくりと下降させる。

セリオンはゆっくりと着地した。

ハルピュイアの死体は桃色の粒子と化して消滅した。

「ほう……ハルピュイアを倒すとはな」

「!? 誰だ?」

セリオンが言い放った。

セリオンは背後を振り返った。

そこには植物のツタでできた女性のボディーがいた。

「!? おまえは……まさか、マンドラゴラか!?」

「知っているのか、アンシャル?」

アンシャルがうなずく。

アンシャルは博識だった。

アンシャルは剣の技量も一流だが、その頭脳もまた一流だった。

「ああ、50年前に封印された悪魔の植物の名だ」

マンドラゴラはニヤリと笑い、

「ホホホ、そう。わらわはマンドラゴラ。わらわは長き眠りより目覚めた。この地上を阿鼻叫喚あびきょうかんの地獄絵図にするためにな」

「このツタの原因はおまえか!」

正解とばかり、マンドラゴラは口元を吊り上げた。

「フフフ、わらわとすぐにでもお手合わせを願いたいが、そうもいかないのでのう。わらわはハイルブロン(Heilbronn)研究所にいる。そこまで足を運ぶがよい。ククク、オーホホホホホホ!」

そう言うとマンドラゴラは地中へと消えていった。

セリオンはそこをじっと眺めていた。


セリオンとアンシャルはハイルブロン研究所に来た。

ハイルブロン研究所はシュヴェーデの新市街地にある。

ここは周辺から見捨てられた一角だった。

緑のツタが建物の壁を占拠していた。

人は誰もいなかった。

「ここは廃棄された研究所か? マンドラゴラはどこだ?」

「セリオン、おそらくマンドラゴラはこの奥にいるのだろう。厄介だが、このツタを切除しないと先に進めそうもないな」

アンシャルは長剣を出した。

それから風のカッターを放った。

一気に倒れるようにツタが斬り裂かれていく。

しかし……。

「!? これは!?」

アンシャルが軽く驚いた。

緑のツタはすぐさま再生し、元に戻った。

道は閉ざされてしまった。

「どうやら、地中より養分を吸い上げているのだろう。それが無限に近い再生力の源だ。セリオン、切除した後駆け抜けるしかないぞ?」

「そのようだな」

セリオンとアンシャルはツタを切除しながら奥へと向かった。


「どうもわらわが眠っているあいだに地上は変わったのう。あの者たちは軍の者か? ハーピーをたやすく倒すとは……フッ、まあよいわ。我が本体の活動まであと少し……この少しの時間だけ持ちこたえればよいのじゃ。むっ!? どうやら奴らが来たようじゃな」

「これで!」

アンシャルが風切刃でツタを薙ぎ倒した。

セリオンとアンシャルはダッシュして先に進む。

その部屋の奥に、マンドラゴラがいた。

「ようこそ、わらわの城へ。歓迎しよう」

「おまえと戦うために俺たちはわざわざこんなところまでやって来たんだぞ!」

セリオンが大剣をマンドラゴラに向けた。

「おまえは地上をどうするつもりだ?」

アンシャルが冷静に尋ねた。

マンドラゴラはそれを小ばかにするように。

「フッ、知れたことを。地上は廃墟となる! この国の首都は消し飛ぶのよ!

アーハッハッハッハッハ!」

マンドラゴラは嬉しそうに哄笑した。

自分が心底楽しくて仕方がないという様子だ。

「そんなことを俺たちが許すと思うか?」

「ホーホッホッホッホ! いきがるなよ、小僧! わらわの力の前にひざまずき、許しを請うがよい!」

マンドラゴラが魔力を高めた。

マンドラゴラの魔力は毒だ。

「これで苦しみ、死ぬがよい! 毒弾どくだん!」

土属性下級魔法「毒弾」。

この魔法は名前通り、毒の弾を撃ちだす魔法である。

威力はそうでもないが、強力な毒の作用を持っており、危険性は高い魔法であった。

セリオンは大剣を横に構えた。

毒弾に合わせて、バットをスイングするように大剣で毒弾を斬る。

「死ね! 多連・妖毒槍ようどくそう!」

多くの毒の槍をマンドラゴラは形成した。

妖毒槍――土属性中級魔法で、この魔法は毒の槍を発射する。

毒弾以上に強力な毒を持っており、直撃すれば死を招く。

「!? 毒の槍か」

「オーホホホホホホ! これで刺し、貫かれるがよいわ! そしてもだえぐる死ね!」

セリオンのもとに毒の槍が飛来する。

それも多数だ。

大剣での迎撃は絶望的だ。

セリオンは蒼気を放出した。

そして、膨大な蒼気を毒の槍めがけて叩きつけた。

毒の槍は一本残らず、迎撃された。

「なんじゃと!?」

マンドラゴラが血の気を変える。

「くらえ、蒼波刃!」

セリオンは大剣から蒼気の刃を飛ばした。

それがマンドラゴラの首を切断した。

「これで、マンドラゴラの最期か。悪魔の植物と言われるほどでもなかったな」

セリオンは大剣を振るった。

その時、アンシャルが何かに気が付いた。

「待て、セリオン! まだ終わっていない!」

「?」

その瞬間大地が揺れた。

震度5はあっただろう。

セリオンとアンシャルは姿勢を正そうともがいた。

「まさか……これは……」

「アンシャル? マンドラゴラは倒した。もう事件は……」

「違う! 今のは本体じゃない!」

アンシャルが声高に叫んだ。

「なんだと? では本体はどこだ?」

「下だ! 私たちの足元だ!!」

「オーホホホホホホホ!! よく気づいた! だがもう遅い! 今までの活動はすべて本体が活動できるようになるための時間稼ぎ! ようやくわらわの真の姿が地上に出るのだ!」

「来るぞ! そなえろ、セリオン!」

「くっ!?」

マンドラゴラの本体――巨大な球根が地中から姿を現した。

その球根には大きな目が一つ付いていた。

「オーッホッホッホッホ! ホーッホッホッホッホ! これがわらわの真の姿! わらわこそがマンドラゴラじゃ! さあ、こしゃくな若造ども! おまえたちを始末してくれるわ! 逝ねい!」

マンドラゴラは目にエネルギーを集めた。

レーザーアイだ。

マンドラゴラは巨大なレーザーをセリオンたちに向けて発射した。

「まずい、伏せろ!」

アンシャルの的確な判断がセリオンを救う。

二人は地面にふせた。

二人の頭上をレーザーが進んでいった。

レーザーは研究所の壁を次々とぶち破った。

「なんて一撃だ……」

セリオンが漏らした。

レーザーが通り過ぎた後は、瓦礫の山と粉塵があふれた。

「ホホホホホ! オーホホホホホホ! これがわらわの本当の力よ! さあ、大地にひれ伏して祈るがよい! わらわの偉大さをほめたたえよ!」

「フン、誰がそんなことを」

アンシャルの周囲に膨大な風が駆け巡る。

渦巻く風は打ち付けられるべき敵を求める。

「くらえ! 風王烈衝破!」

アンシャルからものすごい風が放たれた。

すさまじい風の刃がマンドラゴラを傷つけていく。

「ぎいやああああああ!?」

マンドラゴラにダメージは与えたが、致命傷ではない。

「むう……私の技を耐えるとは……」

「なら、この攻撃はどうだ! 蒼気凄晶斬そうきせいしょうざん!」

セリオンが最強の蒼気技でマンドラゴラの目を斬りつけた。

セリオンは膨大な蒼気を一つの刃に収束していた。

絶大な切れ味を誇る刃が振り下ろされた。

「ぎゃあああああああ!!??」

セリオンの刃はマンドラゴラを斬り捨てた。

「これで、どうだ!」

「あああ……わらわが消える……消えてしまう……このマンドラゴラが……」

マンドラゴラは紫の粒子と化して消えていった。

かくして、マンドラゴラ事件は解決された。

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