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Das Heldenlied Neu ヘルデンリート・ノイ  作者: Siberius
Neu Drei Orpheus
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悪魔の植物

「ホホホ! オーホッホッホッホ! ついに、ついに忌々しい封印が解けましたわ! わらわは活動が可能になった! ああ、なんと甘美なことか。わらわが封印されているあいだに多くの者たちはわらわのことを、マンドラゴラ(Mandragora)のことなど忘れてしまったに違いない。フフフ……しかし、事は慎重に運ぶ必要があるな。再び封印されるなどまっぴらじゃ! わらわの復讐の始まりじゃ! オーホッホッホッホッホ!」


テンペルでは日々聖堂騎士たちがトレーニング……訓練をしている。

テンペルの聖堂騎士団は大規模な魔物の襲来やその他、魔物の大量発生などで出撃することがある。

その時は、ツヴェーデン軍と行動を共にすることが多い。

テンペルとツヴェーデンは同盟関係にある。

だが、最近、シベリア人のあいだでひそかに不満がある。

これはテンペルにいるシベリア人共通のことだった。

それは国を持ちたい。

自分たちの国を持ちたいという思いであった。

現在、旧シベリアはガスパル帝国の領土なっている。

旧シベリアではシベリウス教は弾圧されていた。

ツヴェーデンに住んでいるシベリア人は、旧シベリアから信仰の自由のためにツヴェーデンに逃れてきた。

いわば難民であり、ツヴェーデン人からすればシベリア人は外国人だった。

もちろん、ツヴェーデンに拠点を構えている以上、ツヴェーデンの法律に服す義務がある。

スルトやアンシャル、ディオドラ、ダリアもツヴェーデンに住んで世代を重ねたシベリア人である。

テンペルでは今、建国についてひそかに一部の関係者のあいだで話し合われていた。

だが、そのためには不当に占拠しているガスパル帝国をシベリアから追い出す必要がある。

ガスパル帝国は東の大国だ。

ただこの帝国は文化的には西側に属していた。

シベリウス教を敵視して国内ではシベリウス教は禁止されている。

この国は軍事力が強大で、それゆえツヴェーデンとテンペルは同盟関係を結んでいる。

いつかシベリアの地に帰ろう、と老いも若きも思っていた。

そんなロマンチシズムが特に子供たちに影響を与えていた。

シベリア人は外国人だ。

当然、二級市民という扱いを受ける。

ツヴェーデンとていじめや差別は存在する。

ツヴェーデン人の考えではツヴェーデンはツヴェーデン人の国なのだ。

そのため、シベリア人の子供の中にはツヴェーデンに愛国心を持てないでいた。

それはそうだろう。

あくまで「難民」なのだから。

ツヴェーデン人の中にはシベリア人はシベリアに出ていけと考える者も、少なくないのである。

そう遠くない未来で、シベリア人は新しい国を建国する。

それはシベリア人が胸を張って生きられる国であり、自分たちの尊い価値観の結晶でもあった。

国とは生きかたと無縁ではない。

どのように生きるのか――それはどのような体制を打ち建てるのかということでもある。多くのシベリア人は将来移住するが、ツヴェーデンに残る者も出てくる。

もはやツヴェーデンで職業や仕事を持っていて、適応している者たちがそうだ。

建国の日は近い。


今日、セリオンはスルトと訓練をしていた。

場所はテンペルの訓練場。

スルトはセリオンの剣の師だ。

そして代父でもある。

セリオンにとっては第一の父だった。

スルトはただ大剣を構えて立っていた。

スルトの大剣は「豪剣フィボルグ」=氷の巨人という意味――である。

セリオンは苦しい表情を見せた。

スルトから発せられる覇気がセリオンをすくませる。

セリオンはスルトと向かい合って対面していた。

セリオンはスルトと対決している。

ゆえにセリオンは冷や汗を流していた。

セリオンにはスルトに攻撃を仕掛けてもすべて撃退される未来が浮かんだ。

「? どうした、セリオン? 攻めてこないのか?」

「くっ、よく言う! 俺が何をしてもすべてはじき飛ばすつもりだろう? スルトの考えは修行でよくわかっている」

「だが、攻めないようでは勝てはしないぞ?」

「わかっているさ!」

セリオンがむきになって反論する。

セリオンはスルトと対面すると、子供っぽい一面を見せる。

スルトはそれがおかしかったのかかすかに笑った。

セリオンはスルトに斬りつけた。

双方大剣を武器としている。

大剣を武器とするのはスルトとセリオンくらいのものだ。

セリオンは一時後退すると、跳びかかりながらスルトを斬りつけた。

スルトはあっさりセリオンの攻撃をガードすると、セリオンの大剣ごとセリオンをはじき飛ばした。

「くっ!?」

セリオンが着地する。

そこにすかさず、スルトの大剣がセリオンの目に入り込んできた。

セリオンは動けない。

「……」

しばらく双方は固まっていた。

その後、スルトが武器を引く。

二人の硬直が解除された。

「フフフ、まだまだだな、セリオンよ?」

この光景を三人の女性が見守っていた。

エスカローネ、シエル、ノエルである。

三人はベンチに座って、スルトとセリオンの訓練を見ていたのだ。

「スルト様……強いわね。あのセリオンが歯が立たないなんて……」

エスカローネがこぼした。

セリオンは今度は違った攻め方をした。

攻撃するよう見せかけて、フェイントを入れたのだ。

「むっ!?」

「今だ!」

スルトは大剣を途中で止めた。

セリオンの攻撃がスルトを襲う。

「なっ!?」

セリオンは驚愕した。

スルトは余裕でセリオンの大剣を受け止めた。

しかも、スルトは片手だった。

セリオンは両手で大剣を持っていたというのに。

「まだまだ、甘いぞ、若き狼よ?」

セリオンはいったん後退する。

それからスルトに向かってセリオンは大剣で斬りかかる。

スルトはセリオンの大剣を打ち据えて、はじき飛ばした。

セリオンの大剣が地面に落下する。

「あー、お兄ちゃん負けちゃった」

「スルト様、強すぎるよお……」

シエルとノエルがうなだれて言った。

スルトは強い。

セリオンは一度も過去スルトに勝ったことはない。

しかし、スルトとは技を使って戦ったこともないのだ。

セリオンは訓練では技を使わないようにして、自身を律している。

純粋に剣術だけ取ったらスルトのほうがセリオンより強い。

だが、技を使ったら、セリオンにも勝機は生まれる。

もっともスルトのすさまじい技にセリオンが耐えられればの話だが。

「フッフッフ、どうだ? 訓練ははかどっているか?」

そこにアンシャルがやって来た。

「若き狼の実力を見ていたところだ。まだまだ甘い。これからも修業の必要あがるな」

「よく言う。スルトが強すぎるんだ」

セリオンはため息をはき、さらにふてくされて。

「そう愚痴をこぼすより、私を超えるために鍛錬に励むのだな」

「はっはっは、まったくだ」

アンシャルも笑った。

そこに緊急の用件で騎士が一人やって来た。

「た、大変です!」

騎士の様子は明らかに何らかの異常を示していた。

緊迫感が伝わる。

「? どうかしたのか?」

スルトが騎士を呼び止める。

それから報告を促す。

真剣な顔で。

「はい! 悪魔の植物が、市街地をツタで蹂躙じゅうりんしました!」

「何? 悪魔の植物?」

「被害は時間と共に広がっております。ご命令を!」

「場所はどこだ?」

「オルデンブルク(Oldenburg)地区です!」

スルトは握りこぶしをあごに当てると、直観的に判断を下した。

「オルデンブルクか……若き狼よ、そしてアンシャル。私はおまえたち二人を派遣することにする。すみやかにオルデンブルク地区へと向かい、敵の脅威を除去するのだ」

スルトが凛とした表情で告げた。

スルトの目には迷いがない。

スルトは決断力に優れていた。

それと同時にセリオンやアンシャルに対して信頼があった。

「わかった。行ってくる」

「よし、急ごう、セリオン」

セリオンとアンシャルは悪魔の植物を倒すため、オルデンブルク地区へと向かった。


オルデンブルク地区にて。

「これはひどいな……植物のツタが建物中に張り巡らされている」

思わず、セリオンが言葉をこぼした。

悪魔の植物は地区中の建物に生い茂っていた。

もはや現代というよりも原始の世界だ。

「これほどの被害をもたらすとはな。悪魔の植物か。いったい誰が名付けたのやら」

店やオフィスの窓はツタに貫かれ、建物はボロボロだった。

壁にはツタがくっついている。

「キュイイイイイ!」

「何だ!?」

「セリオン、空だ!」

「あれは……ハーピー!」

セリオンとアンシャルは上空からやってくるハーピーを見た。

ハーピーは二体いた。

セリオンとアンシャルをエサだとでも思っているのだろう。

上空から旋回して二人の様子をうかがっている。

「セリオン、そちらの緑のハーピーの相手をしてくれ。私は隣の青いハーピーの相手をする」

「わかった!」

二人は別れた。

その二人に対峙するかのように二体のハーピーもわかれた。

ハーピーは鋭い手の爪に足の爪を持っていた。

緑のハーピーが急降下し、足の爪でセリオンを攻撃する。

セリオンはバックステップでかわした。

ハーピーは建物の上に止まった。

ハーピーに魔力が集まる。

「魔法を唱えるつもりか?」

セリオンは警戒した。

ハーピーが出したのは風の魔法「竜巻」だった。

二つの竜巻が現れ、セリオンを切り刻もうとする。

セリオンは蒼気を大剣に収束した。

セリオンは収束した蒼気を刃として竜巻に放った。

合計二発。

セリオンの攻撃は竜巻を一瞬にして霧散させた。

竜巻が効かなかったせいか、ハーピーは直接攻撃に切り替えたようだ。

翼をはばたかせてセリオンに接近する。

ハーピーは両手を広げた。

ハーピーはセリオンに両手の爪で切りかかってきた。

ハーピーのほうから接近してくれたのだ。

これはセリオンにとってチャンスだった。

またとない機会だ。

セリオンは大剣を構えると、ハーピーが爪を振り下ろす前に、交差した。

刹那、重い音がした。

セリオンの重い大剣がヒットした音だった。

セリオンの斬撃がハーピーを撃墜した。

緑のハーピーは地面に落ちて、粒子化して消えた。

一方、アンシャルは……。

青いハーピーは上空を旋回していた。

あれは敵に対する目ではない。

獲物、エサに対する目だ。

ハーピーはアンシャルをエサとしか見ていないのだった。

青いハーピーは上空から雷魔法「雷撃」を放つ。

一筋の雷が地上に落ちる。

アンシャルは剣を構えたまま回避した。

青いハーピーがアンシャルに向かって降下してきた。

鋭い足の爪でアンシャルに襲いかかる。

アンシャルの風の斬撃がハーピーを斬り捨てる。

アンシャルの技「風月斬」だった。

この技は三日月のような形の斬撃だった。

ハーピーは一刀両断にされた。

「フッ、他愛もない」

「アンシャル!」

「そっちも終わったか。さて……!?」

その時地震が起こった。

しかし、ツヴェーデンには火山はない。

地震が発生する土地ではないのだ。

これは不審を二人に抱かせた。

「この揺れは……あちらから、市民広場のほうからしてくるな。セリオン、市民広場に向かうぞ!」

「ああ!」

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