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Das Heldenlied Neu ヘルデンリート・ノイ  作者: Siberius
Neu Drei Orpheus
89/196

剣舞祭2

雨が上がった次の日は快晴になった。

今日はすがすがしい晴れだった。

風が気持ちよかった。

太陽の光が地面を照らし、青い空が晴れわたる。

今日はエスカローネと友人のライザ、ナターシャが応援にやって来た。

もちろん、セリオンを応援するためである。

試合はすみやかに始められた。

「さあー! 試合も残りわずかになりました! 次の対戦は誰と誰でしょうか! 私も燃えて熱くなっております! 続いては、セリオン選手対アラゴン選手です! 二人ともステージへ!」

セリオンとアラゴンは会うなり笑いあった。

口火を切ったのはセリオンだった。

「アラゴン、今日はダキの目の前でやられる姿をさらすことになるな」

「フッ、おまえこそ、エスカローネの前でひどい醜態をさらすことになるだろう」

舌鋒鋭く互いに口撃する。

二人とも舌先が滑らかではない。

二人は鋭く視線をかわした。

もう言葉は必要なかった。

二人は剣を抜くと、一気にぶつかり合った。

二人には意地があった。

セリオンはエスカローネに、アラゴンはダキにそれぞれ、負けるところは見せられないということだ。

そのせいか二人は最初から激しく剣で打ち合った。

セリオンも本気で攻める。

セリオンの大剣は脅威だ。

大きいし、重量もある。

幸いなのは片刃ということくらいだろうか。

それをセリオンは片手でも軽々と扱えるのだ。

その斬撃は恐ろしい。

この大剣は切断力を調整することができた。

もっとも鈍い状態では打撃しかできず、斬ることもできない。

もっとも、この大剣で打撃されたら、骨が折れることは確実だった。

反対に、もっとも斬れる状態は戦車でも斬ることができる。

重たい白刃が太陽の光に照らされて、すばやくすさまじく振るわれる。

セリオンはアラゴン相手に本気の斬撃を繰り出した。

「うおおおおお!?」

セリオンの剣の舞はアラゴンを圧倒した。

アラゴンの緊張感のある声色が響き渡る。

アラゴンはセリオンの斬撃に舌を巻いた。

また、強くなっている!

長期戦は、また白兵戦は不利とアラゴンは判断した。

アラゴンは技の出し惜しみをしないことにした。

アラゴンは長剣に黒い炎をともした。

アラゴンの技「黒炎剣こくえんけん」である。

黒い炎が燃え盛る。

それは闇ではなく、炭火すみびの炎だった。

アラゴンの炎がセリオンの大剣を押し返していく。

それはさながら炎の舞を思わせた。

だが、そこまでだった。

セリオンは笑った。

逆にアラゴンには悪寒が走った。

背中を冷たいしずくが駆け抜ける。

セリオンは氷の刃を出した。

セリオンの技「氷結刃」である。

アラゴンの炎とセリオンの氷がコントラストをなしてスパークを巻き起こす。

「くっ!? さすがはセリオンか」

剣撃のぶつかり合いを制したのはセリオンだった。

アラゴンは後退に追い込まれる。

「アラゴンこそ、いい炎を持っているじゃないか」

「おーーっと! 二人の激しい攻防! これはもはや私の口が追い付かない!

二人とも戦いにかける情熱が伝わってきます! さあ、攻防を制するのはどちらだー!」

「セリオン、おまえとこうして戦うのは久しいな。この戦い……この私のすべてを出し切って見せよう! はっ! 『光炎剣こうえんけん』!」

アラゴンの炎が光輝く炎に塗り替えられていく。

アラゴンが輝く炎を出した。

これはアラゴンの最強の技だった。

光の炎であった。

「ならば俺もそれに対して敬意を表しよう。氷粒剣!」

セリオンは氷の粒子を大剣にまとわせた。

この技はセリオンの上級氷技である。

「「行くぞ!!」」

セリオンとアラゴンがぶつかった。

両者ともに負けられない。

否、負けたくない!

互いに意地を張り、負けられない想いがあった。

それぞれ、想っている人がいるのだ。

自身の想いも、他者の想いもいっしょにして二人は剣と剣をぶつけ合う。

セリオンの大剣をアラゴンの大剣がまるで二頭のモンスターがぶつかり合うほどの強烈な衝撃を発する。

戦いはヒートアップし、二人はボルテージを上げていく。

二人の剣がより、一層力強く、激しく、打ちつけ合う。

二人の剣はクラリッサに危機感を抱かせた。

「うひゃあああああ!? これはなんて攻撃だー! このクラリッサ! 危ないため、一時、リングから降りさせていただきます!」

クラリッサはリングの陰に隠れた。

均衡は突然破られた。

セリオンの一撃により、アラゴンは場外にはじき飛ばされた。

セリオンの攻撃にはすさまじい衝撃が込められていた。

アラゴンは砂地の上に倒れた。

剣だけは意地でも離さないと言わんばかりだ。

やがてアラゴンは起き上がろうとしたものの、体から力が抜けて倒れこんだ。

右手から黒い長剣も手放してしまった。

アラゴンはピクリとも動かなかった。

様子を見るようにクラリッサがステージに登る。

「これはー! アラゴン選手、動けない! セリオン選手の勝利ですー!」

「わあああああああ!!」

セリオンに対して観客は声援を送った。

「きゃーー! セリオンが勝ったのねー!」

エスカローネが高い声音を出す。

「見事だ。こんな戦いはめったに見られるものではない。さすが、セリオン様」

と静かにライザ。

「やったー! セリオン様が勝ったー!」

とナターシャが声を張り上げる。

セリオンはエスカローネの存在に気づいた。

セリオンはエスカローネに向かって手を振った。

エスカローネもそれに気づき、手を振り返した。

アラゴンは担架で運ばれていった。

負傷した選手は医務室に送られる。

おそらくそこでダキと面会するだろう。


そしてとうとうこの時がやって来た。

「さあー! 期待のホープ、セリオン・シベルスク選手とアンシャル選手との戦いです! セリオン選手とアンシャル選手はおいとおじの関係にあるようです。セリオン選手が『青き狼』なら、アンシャル選手は『風の王』……さあ、二人ともステージに上がってください!」

「ついにこの時がやって来たな、セリオン」

「ああ、アンシャル」

アンシャルはいかにも嬉しそうで、嬉々としていた。

まるで宿命の対決を待ち望んでいたようだ。

「私たちは雌雄を決する時が来た。どちらが強いか、衆目の前ではっきりと白黒つけようか」

「勝つのは俺だ。アンシャルのことは尊敬している。だが、俺はいつまでも子供じゃない。今年こそは俺が勝って見せる」

セリオンが決意を秘めた目でアンシャルを見た。

それはアンシャルへの宣言だ。

俺はもう子供じゃない。

今度こそ俺が勝つという。

「セリオン、大丈夫かしら……?」

「どうした、エスカローネ?」

「心配でもあるの?」

エスカローネはステージ上のセリオンを見ながら。

「ええ、セリオンはアンシャルさんとはあまり相性がよくないのよね。アンシャルさんはセリオンが子供の時からセリオンの剣術指導をしているから、その癖もしぐさも何もかもお見通しなのよ。でも、セリオンにとって越えなければならない壁でもあるんだわ」

ディオドラたちは……。

「兄さん……セリオン……」

「大丈夫、ディオドラ? 無理して見ないほうがいいんじゃない?」

ダリアが心配してディオドラの顔を見る。

「いいえ、大丈夫よ。私はこの目で見たいの。不安はあるわ。でも、私はセリオンを信じたい。セリオンが壁を乗り越えるのをこの目で見たいの」

そこにはセリオンと同じ決意が秘められていた。

「ディオドラ……」

ディオドラとダリアは息をのんで二人を見守った。

そしてシエルたちは。

「はー、お兄ちゃん、アンシャル様に勝てるかなー!」

シエルが気難しそうな顔をした。

ノエルもうなずく。

「そうだね。お兄ちゃんはアンシャル様には一度も勝ったことがないって言っていたよ」

「でも、でも、今度こそ勝てるかもしれない。お兄ちゃーん! 勝ってー!」

「お兄ちゃーん! 負けないでねー!」

シエルとノエルが声援を送った。


セリオンはアンシャルと向かい合った。

セリオンはアンシャルを観察する。

アンシャルには隙が無い。

どんな攻撃をしてもはじき返されてしまいそうだ。

セリオンはアンシャルの強さの底が見えなかった。

「さて、では始めるとするか」

「そうだな」

二人は武器を構える。

もはや言葉はいらない。

純然たる力と技が競う戦いに入るだけだ。

それをほかならぬ二人が知っていた。

先制したのはアンシャルだった。

アンシャルは風の刃を放った。

アンシャルの「風切刃」である。

セリオンは蒼気の刃を大剣に出す。

セリオンは風切刃を蒼気の刃で叩き斬る。

この程度は様子見。

互いに互いの実力を測る。

アンシャルは風切刃を連発してきた。

縦に、斜めに、横に、風のカッターは角度を超えて放たれた。

セリオンはそれらを冷静にさばいていく。

セリオンは蒼気の刃でアンシャルを攻撃した。

アンシャルがセリオンの蒼気の刃で斬りつけられる。

アンシャルは二っと笑うと、その攻撃を余裕でガードした。

さらに、アンシャルはくるりと回転すると、風の衝撃をセリオンに向けて叩きつけた。

アンシャルの技「風王衝破ふうおうしょうは」だ。

風の衝撃がセリオンに打ち込まれる。

「うおああああ!?」

セリオンはガードしたものの、わずかに吹き飛ばされた。

幸い、リングからは落ちていない。

「フッ、セリオン、この程度の攻撃でダウンしたのか? まだまだ私は自分のカードを見せていないぞ?」

アンシャルが余裕そうにほほえみかける。

そのアンシャルも長剣を構えたままだ。

セリオンが斬りつけてくることを警戒している。

「まだだ! まだ終わらない!」

セリオンは立ち上がった。

すると、アンシャルはセリオンの上に気流の集まりを作り出した。

その気流は一気に下に下り、下にあるものを押しつぶそうとする。

風王降臨ふうおうこうりん!」

アンシャルは風の気流を真下に叩きつけた。

真下にはもちろんセリオンがいる。

とっさにセリオンは横に跳んでこの風を回避していた。

風王降臨の直撃を受けたリングは大きく砕け散った。

すさまじい威力。

この攻撃を直撃で受けたら医務室送りになることは確実だ。

セリオンは再びアンシャルに接近しようとした。

セリオンの間合いは近距離だ。

近づかなければセリオンに勝ちはない。

セリオンがアンシャルに接近しようとした時。

風月斬ふうげつざん!」

アンシャルは弧を描く風の斬撃を出した。

アンシャルの攻撃はセリオンの接近を許さない。

アンシャルは全周囲に風を集めた。

風がすさまじい量で回転する。

それは暴風というより、優雅な風だった。

この攻撃を操る者の異名は風の王。

これはアンシャルの最強技だ。

「これは……風の奥義か!」

「フフフ、その通り。この渦巻く風に指向性を与えたら最後、対象は荒ぶる風に斬り刻まれる。セリオン、おまえは強くなった。去年のおまえよりもだ。そのおまえに敬意を表し、この私の最強の技で倒してやろう。では、行くぞ! 風王烈衝破ふうおうれっしょうは!!」

すさまじい風がセリオンめがけて叩きつけられた。

圧倒的な量の風がセリオンを狙って突き進む。

セリオンは恐れなかった。

セリオンはこれに立ち向かった。

セリオンは戦士だ。

セリオンは蒼気を極限まで静かに収束した。

蒼白い闘気がセリオンの全身から放出される。

セリオンは正面から来た風に対して蒼気の衝撃波「翔破斬」で迎え撃った。

二つの衝撃はぶつかり合い、互いに相手を拒絶し、否定する。

すさまじい風とすさまじい闘気が衝突する。

それはまるで龍と龍が喰らいつこうとしているかのようだった。

ぶつかり合いは一瞬で均衡が崩れた。

セリオンの翔破斬が風の奔流を打ち破り、一気にアンシャルまで殺到する。

「何!?」

アンシャルは目を見開いた。

アンシャルは翔破斬に呑まれた。

アンシャルの悲鳴は蒼気の波にかき消された。

すべてが収まった後、アンシャルは倒れていた。

アンシャルの目に青い空が映る。

「私は……? そうか……私は負けたのか……ふふふ」

「アンシャル」

「セリオン……」

セリオンはアンシャルの感慨深い顔を見た。

それはようやく願いがかなったというような顔だった。

「アンシャル、立てそうか?」

「フフフ、しばらくは無理そうだ」

「やっと、アンシャルに勝てた」

「ああ、見事だ。フッ、おかしいな。おまえに負けたはずなのにおまえに喜んでいる自分がいるんだ。おかしいだろう?」

アンシャルは目をつぶった。

アンシャルの目から一粒のしずくが流れ落ちた。

「アンシャル、今は医務室に」

「ああ。私はしばらく寝させてもらう」

そこにクラリッサの絶叫がとどろいた。

「あああああああああ!! これはすごい展開になりました! 前回優勝選手が対戦から脱落してしまいました! 勝ったのは青き狼、英雄セリオン選手! これは大番狂わせだー!」

クラリッサが一気に言い切った。

一方、ディオドラは……。

「……ディオドラ、無理をしないで。アンシャル様のところに行って。試合なら私が見ているから」

そう、ダリアが気づかった。

「うん……ありがとう、ダリアちゃん。私、兄さんのことが心配だから、兄さんの看護をしてくるわ」

「あなたの息子は立派だったわ」

「そうね。私もあの子を誇りに思うわ。それじゃあ、ダリアちゃん、私行ってくるわね」

「ええ」

 

「やったー、セリオン様が勝ったー!」

「やったわね、セリオン!」

「見事の一言に尽きるな」

ナターシャ、エスカローネ、ライザがセリオンをたたえた。

ナターシャとエスカローネはハイタッチした。

「これでセリオンは決勝に行くことになったわね。決勝の相手は誰かしら?」

「これはもうセリオン様の優勝で決まりじゃないの?」

「いや、まだ早いな。次の戦いしだいで誰がセリオン様と戦うか決まる」


シエルとノエルは。

「やったー! お兄ちゃーん!」

「わーい! お兄ちゃーん!」

シエルとノエルは抱き合ってジャンプして、喜んだ。

「セリオンお兄ちゃんが初めて決勝に行くね!」

「お兄ちゃんにはもう優勝してもらうしかないでしょ!」

「楽しみだなあ!」

試合はアンシャルの敗北という大荒れの模様となった。

決勝まで勝ち進んだのはセリオン。

そして、もう一人は意外な人物だった。

「さーて! これでラストの試合です! 泣いても笑ってもこの戦いが最後になります! さあ、ステージに上がってください! セリオン選手、そしてアリオン選手!」

ステージに二人は上がった。

互いに反対方向からリングに上がる。

青き狼と赤き意思の持ち主との決戦。

「アリオン、まさかおまえと決勝で戦えるとは思っていなかった」

「俺も決勝まで行けるとは思ってなかったよ。運命は気がきいてるな?」

「フッ」

「ははっ」

二人は互いに笑いあった。

決勝だというのに二人にあるのはうちとけた雰囲気。

まるで兄と弟が慣れているよう。

しかし、

「さて、アリオン」

「何だい、セリオン?」

「これは訓練じゃない」

「ああ、そんなことわかっているさ」

「俺は本気で行く。だから、おまえも本気で来い」

「言われるまでもないさ。俺だっていつまでもセリオンの弟分じゃないんだからな。俺の真の力をセリオンに見せてやるよ」

二人の視線がぶつかった。

双方、譲れないものがある。

二人の瞳は決意を宿していた。


その時ダリアは。

ダリアはまるで悪寒にでも襲われているかのように青ざめた表情をしていた。

「ああ、(しゅよ! どうか二人をお守りください! まさか、セリオン君とアリオンが戦うことになるなんて……」


「それでは、試合を開始してください!」

セリオンが大剣を、アリオンが刀を構えた。

「はっ、紅蓮剣!」

アリオンが揺らめく紅蓮の炎を出した。

「氷結刃!」

セリオンが凍てつく氷の刃を出した。

先に動いたのはアリオンだった。

セリオンは氷の大剣で炎の刀を迎え撃つ。

二人は大剣と刀を互いにぶつけ合った。

アリオンが得意としているのは炎だ。

アリオンの炎の剣は紅蓮にきらめいていた。

セリオンはまず、アリオンの力量を測ろうとした。

まず、初級の技から出していく。

アリオンの斬撃は鋭かった。

アリオンは刀に炎をドッキングさせている。

アリオンはすばやく紅蓮の刀で斬りつけてくる。

アリオンは技とスピードでセリオンを翻弄する気だ。

アリオンの刀がセリオンを斬りつけた。

「やあああああああ!」

アリオンが裂ぱくの気合を入れた。

アリオンの斬撃は鋭い。

それに紅蓮の炎が合わさるのだからすさまじいというもの。

セリオンが軽く大剣を振るった。

アリオンはすぐに後退すると、再び前に出て技を出す。

アリオンは刀を下に構えて、斜め上へと斬り上げる。

翔炎斬しょうえんざん!」

下から鳥が飛びあがるように炎が湧きあがった。

セリオンは炎に呑み込まれた。

アリオンはいったん後退した。

セリオンが炎の中から姿を現す。

アリオンは理解していた、この程度の攻撃ではセリオンを倒すことはできないと。

それがゆえの様子見。

炎が収まると無傷のセリオンが現れた。

ただし、一つだけ違っているところがあった。

「あれで倒せるとは思っていなかったけど、まさか無傷だなんて……くっ!」

アリオンは悔しがる。

そう、セリオンは氷結刃では防げないと思い、氷星剣を出していた。

氷の光がアリオンの炎を無力化したのだ。

「この技を出させただけでも、おまえは強い」

「まだまだ、これからさ! 行くぜ! 紅蓮突ぐれんとつ!」

アリオンが紅蓮の突きを出した。

アリオンがセリオンに突きを繰り出す。

セリオンは氷の大剣でガードした。

「はああああ! 紅蓮一刀斬ぐれんいっとうざん!」

アリオンは居合のようにセリオンを一刀のもとに斬り捨てた。

セリオンは氷星剣で中和した。

セリオンはアリオンに反撃する。

セリオンの大剣の重みがアリオンに刀を通して伝わる。

「ぐっ!?」

アリオンの表情が曇る。

一方セリオンは不敵な笑みを浮かべていた。

セリオンからすれば、この攻撃はこの程度でしかない。

セリオンはアリオンを試しているのだ。

白刃がきらめき、振るわれる。

セリオンの武器は大剣だ。

それに対してアリオンの武器は刀だ。

力と力の勝負では勝負が見えている。

セリオンからすれば大剣のパワーを発揮できることが、アリオンからすれば刀の鋭さを発揮することが勝利につながる。

アリオンは刀を両手で持って、セリオンの攻撃をしのいだ。

アリオンはセリオンから距離を取って仕切りなおす。

「さすがはセリオン、か……なら、この技はどうだ! はっ!」

アリオンは真上にジャンプして、一回転し、刀をリングに突き立てた。

列火噴出剣れっかふんしゅつけん!」

炎が地面から噴き上げて、一直線にセリオンに迫る。

セリオンは氷星剣で守りを固める。

「はっ!」

アリオンが踏み込んだ。

紅蓮煉獄斬ぐれんれんごくざん!」

アリオンは膨大な炎をセリオンに対して叩きつけた。

すさまじい炎が燃え盛る。

紅蓮の炎が炎上した。

「これで、どうだ!」

紅蓮煉獄斬はアリオンの上級技である。

炎に包まれてセリオンは倒れたかに見えた。

観客たちは一様にそう思った。

アリオンの勝ちだと。

そこに炎が青白い刃によって両断された。

炎がかき消される。

その中から、氷の粒子をまとった剣を持つセリオンが現れた。

セリオンが本格的に攻めてくる。

氷粒剣はセリオンの上級氷技だ。

セリオンは氷粒剣でアリオンを攻撃した。

セリオンの大剣と氷の粒子が一つになり、一体としてアリオンに振るわれる。

アリオンは防戦一方となった。

「くそっ!」

「どうした? これまでか?」

セリオンからは余裕が感じられた。

かえってアリオンには苦しい展開となった。

あの技ですら防がれるのなら、セリオンには自分の技がもうほとんど通用しないだろう……そう、最後の切り札をのぞいて。

「セリオン、さすがだよ。あの技、紅蓮煉獄斬が防がれるとは思わなかった。これから俺は真の切り札を出す。これはまだセリオンも知らない技だ。俺はこの一撃にかける! 行くぜ!」

「ああ、来い! その技も俺が打ち砕いてやろう!」

「つどえ、炎よ! そうして、紅蓮の形と成せ!」

アリオンが刀を真上にかかげた。

アリオンの前で炎が形を取り始める。

それは紅蓮の鳥だった。

これこそアリオンの真の最強技。

その名は。

「くらえ! アガルタ(Agharta)!」

アリオンの紅蓮の鳥がセリオンに飛来する。

セリオンはアガルタを凝視した。

氷の大剣を構えて、アガルタを斬り裂くべく氷の粒子を一層強く練り上げる。

セリオンはアガルタに氷粒剣をぶつける。

紅蓮の炎と凍てつく氷が互いに消し合い、消滅させようとする。

その瞬間、炎が爆ぜた。

すさまじい爆発と爆音がセリオンを呑み込む。

「はあ、はあ、はあ……これで、どうだ? さすがのセリオンも無傷ってわけには……!?」

爆発の中からセリオンが姿を現した。

セリオンの手には氷の粒子をまとう剣があった。

セリオンはアガルタとその熱量を氷粒剣で無効化したのだ。

「やるな、アリオン。俺は手がしびれた」

「アガルタを出してもあの程度だなんて……」

アリオンは目を大きく見開いた。

「行くぞ、アリオン! これでケリをつける!」

セリオンは氷の大剣でアリオンを攻撃した。

それは今までの比ではなかった。

セリオンの重く冷たい大剣がアリオンにすばやく踊る。

白銀の刃が軽々と振るわれる。

セリオンの技量はアリオンの剣術のはるか上をいっていた。

アリオンにはもはや大技は残されていない。

ただ、剣で斬り合うのみ。

セリオンの必殺の一撃がアリオンの腹に当たる。

「ぐうっ、がはっ!?」

アリオンは気づくと、大剣で腹を打撃されていた。

「ちぇっ……さすがだぜ、セリオン……」

アリオンは倒れた。

最後の意地か、刀は手放さなかった。

その後、アリオンは医務室に運ばれた。

ダリアがアリオンに付き添った。

「決まったーー! セリオン選手の勝利ですーー!! 優勝はセリオン選手です!!」

クラリッサがこれ以上ないほど声を張り上げる。

「セリオン、すごい……」

エスカローネは大はしゃぎだった。

「やったーー! お兄ちゃんの勝ちだー!」

とシエル。

「うわーー! すごいよ!!」

とノエル。

「フフフ……優勝はセリオンか。私の息子が優勝とは誇らしいぞ」

スルトがつぶやいた。

表彰式が行われた。

優勝したセリオンには月桂冠が送られた。

「セリオン、おめでとう」

「ありがとう、スルト」

セリオンはスルトから月桂冠を授けられた。

こうして剣舞祭は幕を閉じた。

ある者には喜びを、ある者には涙をもたらして。



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