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Das Heldenlied Neu ヘルデンリート・ノイ  作者: Siberius
Neu Drei Orpheus
79/196

オルフェウス卿

アンシャル対フルカスでは……。

「おぬしがアンシャル・シベルスクか? テンペルのナンバー2か? 相手にとって不足はないわい」

フルカスがバトルアックスを構える。

アンシャルは目を細めた。

「ほほー!」

それは一瞬だった。

フルカスは一瞬のうちにアンシャルとの間合いをつめて、斧を振り上げる。

「から竹割じゃ!」

フルカスが斧を振り下ろす。

そのスピードは圧巻だった。

しかし、アンシャルは反応できた。

アンシャルの目は反応した。

アンシャルは長剣を構えてフルカスの斧をガードする。

アンシャルにはこれくらいたやすい。

「ほう、我が一撃を防ぐか……。さすがはアンシャル・シベルスクよ! だが!」

フルカスは連続でアンシャルに斧で斬りかかった。

アンシャルは優美に、かつ、華麗に長剣で斧による攻撃を受け流す。

武器と武器がぶつかり合う金属音が辺りに響いた。

フルカスはニヤリと口元を吊り上げる。

「ホーホッホッホッホ! やりおるわい! これでどうじゃ? 土気斧どきふ!」

フルカスの土のオーラをまとった斧がアンシャルに迫る。

この土気斧は斧の威力を何倍にも引き上げる。

単純だが、威力は絶大だ。

フルカスの一撃の重みが上がる。

アンシャルは長剣に風をまとわせた。

風の流れが風王剣イクティオンに集中する。

風鳳剣ふうほうけん!」

風の剣が形成される。

風の剣は土の斧とぶつかり合い、大きな衝撃音を響かせた。

風と土、反対属性が火花を散らす。

風の剣はなんとフルカスの斧を打ち破った。

風がフルカスに脅威を与える。

「うおっ!?」

フルカスはすぐさま後退した。

アンシャルと間合いを開ける。

「ならば我が技を見せてくれるわ! くらえい! 地竜爆砕撃ちりゅうばくさいげき!」

大地が爆ぜながら一列になってアンシャルに迫る。

アンシャルはそれをにらんだ。

風を大量に長剣にまとわせると、アンシャルは風の衝撃を叩きつけた。

風王衝破ふうおうしょうは!」

二人の技がぶつかる。

すさまじい衝撃が一帯に巻き起こった。

それはさながら二つの列車が正面衝突したかのよう。

攻防を制したのはアンシャルだった。

アンシャルの技がフルカスの技を打ち負かした。

「なんじゃと!?」

フルカスが驚愕の色を見せる。

フルカスはこの技に自信があった。

アンシャルだろうと、この技は防げないだろうと思っていたのだ。

だが、当ては外れた。

事はフルカスの思い通りにはいかなかった。

一方、アンシャルは自分の優位を確信していた。

「風切刃!」

アンシャルが風のカッターを放つ。

風のカッターは三発フルカスに出された。

「フン! そんなもの!」

フルカスは土気斧を形成すると、斧で風のカッターを叩き斬る。

だが、これはアンシャルの狙い通り。

アンシャルは一気にフルカスに接近すると、風の刃を振るった。

風振剣ふうしんけん! 」

これはアンシャルの技だ。

風振剣は風の振動が鋭い切れ味を生じさせる。

極めて怜悧れいりな切断の技だ。

風の刃が直線状に斬り裂く。

斬り裂かれたのはフルカスの首だ。

フルカスの顔は驚異で目が見開かれていた。

フルカスの体は倒れ、茶色の粒子と化して消滅した。


そしてアラゴン対マルキウス。

「私がおまえの相手をしよう」

アラゴンが黒い長剣「黒曜剣こくようけん」をマルキウスに向けた。

マルキウスはそれがおかしそうに笑った。

それは哄笑。

マルキウスはアラゴンなど敵ではないと見下していた。

「クックック、アラゴン・ダンスクか……。おまえのことも調べてあるぞ? テンペルの聖騎士だとな」

「ほう、私のことを知っているのか。それなら話は早い」

「ククク、私はおまえに教えてやろう。私は炎の魔法を使う。くらうがいい!」

マルキウスの前にボール大の大きさの炎が集まった。

炎はぐるぐると渦巻き放たれるのを待っている。

「火炎弾!」

マルキウスは炎の弾丸を放った。

火炎弾は炎属性初級魔法だ。

とはいえ、魔法は使う者の魔力がものを言う。

マルキウスの火炎弾はやや大きかった。

それがアラゴンめがけて飛んでいく。

アラゴンはボールを打つバッターのように悠然と長剣を構えた。

そしてタイミングよく、長剣を振りかぶり、火炎弾を迎撃した。

アラゴンの剣からは黒い闘気がまとわれていた。

アラゴンの闘気「黒曜気こくようき」だ。

アラゴンの剣は優美でも、華麗でもなく、武骨だった。

アラゴンの黒い闘気は炭を連想させた。

「ほう、火炎弾を斬るか。ならこちらも手心は加えまい! はっ! 火炎槍!」

炎属性中級魔法「火炎槍」。

名前の通り、炎の槍を放つ魔法である。

使い勝手がいい魔法で、あまたの魔道士が好んで使う。

威力は火炎弾より上である。

火炎の槍が虚空に形成される。

マルキウスは杖を向けて、アラゴンに狙いを定め、火炎槍を撃った。

「フン、効かんぞ!」

アラゴンは長剣に黒曜気を収束し、黒曜気の斬撃で火炎槍を斬った。

「おのれ、よくも!」

マルキウスがいきり立つ。

「その程度で私に勝てると思うなよ! 火炎噴!」

火炎噴かえんふん」は炎属性中級魔法で地面から炎を噴出させる。

アラゴンの足元に、炎の魔力が集まった。

しかし、アラゴンはその瞬間に飛び出していた。

アラゴンは「俊足しゅんそくのアラゴン」という異名をもつ。

アラゴンは瞬発力だけなら、セリオンより上だ。

アラゴンがいた位置で炎が吹き上げた。

アラゴンはマルキウスの前で止まった。

そして長剣を振りかぶる。

「くっ!?」

マルキウスが杖で長剣を受け止める。

マルキウスの顔からは苦悶が映る。

マルキウスは不利な態勢にあった。

魔法を使うには接近戦は不利だ。

力はアラゴンのほうが上だ。

当然だ。

剣士のほうが魔法使いより力は高い。

「ぐっ……。おのれ……」

マルキウスは余裕を失った。

アラゴンは長剣でマルキウスの杖をはじくと、一気に横なぎの剣撃を叩き込んだ。

「がはっ!? バカな!? この、私が……」

マルキウスはアラゴンに敗れた。

マルキウスは血をはいて倒れた。


そしてエスカローネ対ピュラは……。

「フフフ、あなたがエスカローネさんですわね。噂はかねがね聞き及んでおりますわ」

エスカローネはハルバードを突きの構えで持った。

エスカローネはピュラとの会話中も油断していない。

「フフフ、英雄のセリオン様を誘惑した悪女とか、売女とか、そうそう体でセリオン様を誘惑したというのもありましたわね」

「……」

エスカローネは黙り込む。

実のところ、そう言った噂はエスカローネの耳に入っていた。

エスカローネは大きくため息を出した。

いちいち、噂にまいっているようではセリオンの恋人など務まらない。

そういう噂が出てくることがセリオンの隣にいるということなのだ。

セリオンは英雄だ。

もてないはずがない。

エスカローネはそれを理解していた。

それに噂の内容も取るに足りないものばかりなのだから。

批判や非難とはその人の器を測る物なのである。

品性の低さが分かるというものだ。

「あら、あまり気にしていないようですわね?」

「そんな噂を気にしているようでは、セリオンの隣にはいられませんから」

「さすがですわ。フフフ、それでは女同士で戦いましょうか」

エスカローネはハルバード「エスカリオス(Eskarios)」を構えた。

「さあ、凍りなさい! 多連・氷結槍!」

多く連なる、八発の氷の槍がエスカローネに迫った。

ただ武器を構えていては氷の槍に貫かれるだろう。

この魔法は一発の威力より、多連装で発射されることが危険だった。

エスカローネは光をハルバードに注いだ。

エスカローネが得意とするのは光属性だ。

エスカローネの技や魔法はみな光である。

エスカローネのハルバードが光輝いた。

エスカローネの技「光矛こうむ」である。

エスカローネは光のハルバードで氷の槍を叩きつぶした。

氷の槍が砕かれる。

エスカローネはハルバードでピュラに狙いを定めた。

これはハルバード砲撃モードで、遠距離攻撃を出すときの構えだった。

聖光矢せいこうや!」

聖なる光の矢が形成される。

エスカローネは二つの光の力を持っている。

一つは聖なる光、もう一つは金色こんじきの光。

エスカローネは後方で回復役を務めることも多いが、こうして武術や魔法も磨いており、セリオンと共に戦える強さを持っている。

いや、それをエスカローネ自身が何より意識していた。

セリオンの隣にいることは、守られている女では務まらない。

セリオンの隣で戦える女ではなくては、「セリオンの女」にはなれない。

エスカローネはハルバードの先端から光の矢を放った。

狙いに狂いはない。

狙いは正確だ。

ピュラはすぐさま反撃の態勢を取った。

水泡槍すいほうそう!」

水の槍がピュラの前に形づくられた。

ピュラは本能的に水泡槍を発射した。

理性的に考えてからでは、エスカローネの矢は防げなかっただろう。

聖光矢と水泡槍が衝突した。

光と水がぶつかり合いを演じる。

威力はエスカローネのほうが若干上だったようだ。

「くらいなさい、水滝みずたき!」

ピュラは水属性魔法「水滝」を使った。

水滝は水流が滝のように連続して起こる魔法で、連続ヒットする。

水の流れがエスカローネを叩きつぶすべく、降り下る。

エスカローネは真剣な表情をすると、再び光矛を出した。

エスカローネの意図はハルバードで水の流れそのものを断ち斬ってしまおうおいうもの。

エスカローネは近づいてきた水滝に、渾身の一撃をハルバードで繰り出した。

エスカローネの攻撃により、水滝は粉砕された。

「くっ、やりますね……」

ピュラが追いつめられる。

エスカローネは再び、聖光矢を出した。

それに対してピュラは自身の前に水の渦巻うずまきを発生させた。

「さあ、行きなさい、水の渦よ! あの女を引き裂くのです!」

ピュラから渦巻がエスカローネに向けられた。

聖光矢は渦巻の前に消え去った。

エスカローネは動じなかった。

エスカローネはハルバードを突きだし、砲撃モードの態勢を取った。

エスカローネのハルバードの先端に金色の光が集まり、金の粒子が乱舞し、輝いた。

それは幻想的で、神秘的だった。

それは思わず見とれるような美しさだった。

「なっ!? その魔力はいったい!?」

ピュラが驚愕を口にする。

この金光きんこう=Goldenlicht こそエスカローネの本当の光の力だった。

金光砲きんこうほう!」

エスカローネは金色こんじきの光を星のように輝かせると、ハルバードの先端から金色こんじきの砲撃を撃ちだした。

エスカローネの金光砲は渦巻をあっさりと突き抜け、そのままピュラを呑み込んだ。

「あああああああああ!?」

ピュラは金色こんじきの光に包まれ倒れた。

ピュラの意識は闇へと落ちた。


戦いは終わった。

四人はいずれも敵を倒した。

「どうやら、みな戦いに勝利したようだな」

アンシャルが周囲を見渡して、剣を下ろした。

「アンシャル、俺は勝ったぞ」

「アンシャル様、私も倒しました」

「アンシャルさん、私も勝ちました」

セリオン、アラゴン、エスカローネの順でアンシャルに勝利の報告をする三人。

そこに闇の黒い矢が、飛んできた。

狙いはアンシャルだった。

アンシャルはすばやく、光の剣「光明剣こうめいけん」を出した。

アンシャルの光は闇の矢を中和した。

「!? 何者だ!?」

市街地に二人の人物が現れた。

一人は紺のローブを着た男で、も一人は赤いローブを着た女だった。

性別は体格で分かった。

二人とも仮面をつけている。

「初めまして、私はオルフェウス卿。闇の探究者だ」

「オルフェウス卿?」

セリオンがつぶやいた。

セリオンは大剣を再び構えた。

これは防衛態勢だった。

セリオンは一瞬でこの二人がただものでないことに気づいた。

「アンシャル……。あの二人、強いぞ?」

「ああ、そうだな」

緊張をその場が支配する。

「アンシャル、オルフェウス卿という人物に心当たりは?」

「ないな。私も初めて聞く名だ。おそらく闇の魔道士なのだろう」

「私たちは魔法結社リュケイオンの者だ」

「リュケイオン?」

アンシャルが繰り返す。

「そうだ。もちろん、闇の組織だがね。フフフ……」

セリオンは今すぐにでも大剣で斬りかかりそうだった。

セリオンは大剣をバット状に構えた。

「まあ、待ちたまえ。我らの初対面に水を差すな。セリオン・シベルスク君」

「!? 俺のことを知っているのか?」

「ふふふ、君ほど有名人だと、知らないほうがどうかしていると思うがね。暴竜ファーブニルを倒した若き英雄?」

オルフェウス卿の顔は仮面で見えなかったが、セリオンには彼が笑っているように見えた。

「どうやら、マルキウスもピュラもやられたようだ。フルゴルも倒されたし、まったく使えない部下を持つと上に立つ者が苦労する」

「あの三人はおまえの部下だったのか!」

セリオンが問い詰める。

「敵とは言え、死んだ部下を侮辱するような奴は許せんな……」

アンシャルが顔を険しくする。

「フッフッフ、安心したまえ。今日はあいさつに現れただけだ」

「あいさつ?」

セリオンは怪訝けげんに思った。

「我らの理念はただ一つ――それは『闇の支配』だ。闇がツヴェーデン全土を支配する。そのために、リュケイオンは活動している。テンペルの者たちよ、我らはまた相まみえるであろう。そのときまでしばしさらばだ。それでは私は失礼する。ティーネ(Tine)、行くぞ」

「はっ、オルフェウス様」

オルフェウス卿は手を前にかざした。

すると闇の渦が現れて二人を呑み込んだ。

闇が収まると、二人の姿は消えていた。

「闇の探究者、オルフェウス卿か……。新しい敵だな」

セリオンは二人が消えた場所をじっと眺めていた。

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