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Das Heldenlied Neu ヘルデンリート・ノイ  作者: Siberius
Neu Drei Orpheus
78/196

襲撃

その時、突然爆発が起きた。

閃光が辺りを包み込む。

「なんだ!?」

「爆発!?」

「うわあああ!?」

「静まれい、皆の者!」

スルトが一喝を発した。

辺りは静まり返ったかのように静寂になった。

スルトには権威があった。

誰もがスルトに視線を向ける。

スルトのもとに報告の騎士がやって来た。

スルトは報告を受ける。

「一般信徒はこの聖堂に避難していろ! 我々聖堂騎士は出撃だ! 敵がこの時間帯を狙って攻めてきた! 我々は必ず一般信徒を守る! そのために騎士団は存在するのだから! では、聖堂騎士団よ、出撃だ!」

スルトたちはすみやかに迎撃に向かった。

セリオンもアンシャルも、アラゴンも、エスカローネも出撃していた。

「エスカローネ、おまえは回復役を頼む。傷ついた騎士を助けてくれ」

セリオンがエスカローネに指示した。

エスカローネはうなずいて。

「わかったわ!」

エスカローネは後方に去っていった。

「敵は……なんだ、あれは!?」

アラゴンが敵の威容に驚いた。

アラゴンが驚くのも無理はない。

なぜなら敵の姿は異様だったからだ。

敵はクマの体をベースにサソリの尾を持ち、ヤギの頭部が肩についていた。

このような怪物を今まで目にしたことがある騎士はいなかった。

「あれは……キメラという奴か? 闇の魔法によって造られる怪物だ。つまり、攻めてきたのは闇の魔道士か」

アンシャルが冷静に分析する。

このクマのキメラはクマイラという。

セリオン、アンシャル、アラゴンがテンペルの門の前で一列に並んだ。

クマイラはすばやくセリオンに接近すると、セリオンに鋭い爪で攻撃してきた。

クマの体が重量感を響かせて迫る。

しかし。

「甘い!」

セリオンは大剣で一薙ぎすると、クマイラの体を両断した。

「ガアアアアア!?」

クマイラは断末魔の悲鳴を上げると、ズシャーンと倒れ、灰色の粒子と化して消滅していった。

「誰だか知らないがなめたことをしてくれる。テンペルを攻撃するとはな」

セリオンが闘志を燃え上がらせた。

セリオンはクマイラの群れを見ると、クマイラの群れに大剣で斬りこんでいった。

それにアンシャルとアラゴンが続く。

セリオンはクマイラの急所を攻撃し、確実に倒していった。

クマイラの一体がセリオンにサソリの尾で攻撃してきた。

おそらく尾の先には毒があるだろう。

セリオンはクマイラの尾に大剣で斬りつけ、尾を斬り裂いた。

クマイラが悲鳴を上げる。

その隙にセリオンはクマイラの首を狙って、斬り落とした。

別のクマイラがヤギの頭から氷の息を出してきた。

これをくらったら体が凍り付くだろう。

セリオンは蒼気を大剣にまとわせると、蒼気の刃を氷の息にめがけて飛ばした。

蒼気の刃は氷の息を拡散させていく。

蒼気の刃はクマイラのヤギの頭にヒットした。

ヤギの頭が斬り裂かれる。

すかさず、セリオンはそのクマイラに接近し、一刀のもとに斬り捨てた。

クマイラはその意識を闇に落とした。

セリオンの活躍は獅子奮迅だった。

まるでつるぎの舞を踊るようにクマイラを斬り、突き、斬殺していく。

クマイラの群れからはまだんなく血が吹き荒れた。

「多連・風翔槍!」

アンシャルが風の魔法を放った。

多連・風翔槍は風の中級魔法で、風の槍を複数同時に発射する。

だいたい十本前後が一度に制御できる数だ。

アンシャルはこの魔法でクマイラの頭部を貫通し、爆散させた。

クマイラたちは一撃で絶命していく。

アラゴンが駆けぬけてクマイラに斬りかかった。

アラゴンは黒曜気を出すと、クマイラを分割した。

クマイラはズシャンと倒れる。

その重量を響かせて倒れた。

黒曜気はアラゴンの闘気だ。

その名の通り、黒い闘気だった。

黒はアラゴンの色である。

アラゴンの斬りは見事で、黒い闘気が吹き荒れた。

テンペルの前で攻防戦が切って落とされた。


一方、アリオンはシエルとノエルを女子寮に送り届けるところだった。

シエルとノエルも槍を持っている。

この二人も武術はシベリア学校で習っていた。

もっともアリオンがいるのはこの二人を護衛するためだ。

さすがにシエルとノエルではクマイラと直接戦闘はできない。

「グルウウウウウウ!」

「!? 敵か!」

アリオンは本能的に刀を抜いた。

武器を構えることは戦士の構えだ。

「な、何、あれ!?」

「怖いよう、アリオン!」

シエルとノエルが身じろぎする。

「おまえたち、そこでじっとしてろよ!」

アリオンは刀を構えてクマイラを威嚇する。

クマイラは四つ足で立ち、牙を口からのぞかせた。

さらにその尾が逆立っている。

「威嚇か? そんなの俺には通じないぜ! はああああ!」

アリオンの刀が炎に包まれた。

紅蓮の炎が燃え盛る。

クマイラはそれを見ておじけづいたようだ。

やや後退する。

「逃がしはしないぜ! 火炎刃!」

アリオンが炎の刃をクマイラに向けて飛ばした。

火炎刃は炎の刃を飛ばす技である。

「ギャオオオオン!?」

紅蓮の炎がクマイラを焼き尽くす。

クマイラ一匹が炎上し、息絶えた。

そしてそのまま灰色の粒子と化して消滅した。

「へっ、たいしたことないな!」

アリオンが刀を肩に乗せた。

「アリオン、危ない!」

シエルが叫んだ。

アリオンの側面からクマイラがもう一体現れ、アリオンに近づき、その爪で攻撃してきた。

「くっ!?」

アリオンは刀でクマイラの爪を受け止めた。

さすがにクマイラはパワーがあった。

アリオンの力では押し切られるだろう。

それに刀はパワーというより技で戦う武器だ。

力で勝負するのでは負けることになる。

アリオンは刀のその特性を知っていた。

アリオンは刀に紅蓮を燃え盛せる。

クマイラの顔が引きつった。

火炎柱かえんちゅう!」

炎の柱がアリオンを中心にして発生する。

紅蓮の色に輝く炎の柱はクマイラ一匹を焼き尽くすのに十分だった。

ドスーンと黒こげのクマイラが倒れる。

「アリオン、もう一匹いるよう!」

ノエルがアリオンに教えた。

「まだいたのか!」

アリオンがそのクマイラに鋭い視線を送る。

ヤギの頭がアリオンに氷の息を出してきた。

クマイラの氷のブレスだ。

アリオンは刀の炎を燃え上がらせると、紅蓮のきらめきを氷の息に叩きつけた。

アリオンの炎はまるで火炎放射のごとく氷の息を圧倒する。

氷の息が収まった。

「今だ!」

アリオンはそのクマイラに一気に接近すると、紅蓮の刀で下から上に斬り上げた。

紅蓮犬牙斬ぐれんけんがざん!」

紅蓮の刃はクマイラを通り抜けてクマイラを分断した。

肉は紅蓮の炎で焼かれたため、クマイラから血はあまり出ていない。

「よし、これで大丈夫だろう。おまえたち、寮から出るなよ?」

アリオンはシエルとノエルを女子寮に送り届けた。


セリオンたちは門の前でクマイラたちを押し戻すことに成功していた。

セリオンたちが剣を振るうたびにクマイラの叫び声が道路にこだました。

クマイラの戦闘力は高い。

それに牙や爪、氷のブレス、尾などはどれも致命傷になりうる。

クマイラが弱いのではない。

セリオンたちが強すぎるのである。

さすがに一般の騎士ではクマイラを一人で相手をするのは危険だ。

そのため、スルトはテンペル内に侵入したクマイラと戦う上で騎士たちに、三人一組で戦わせた。

敵を数で圧倒する戦術だ。

これは卑怯だろうか?

正々堂々戦えば、必ず犠牲が出る。

戦いとは勝たなければ意味がない。

いかに勝つか、それが重要だ。

それにスルトはただ味方の犠牲を恐れてこの戦術を採用したのではない。

これがクマイラ相手に有効だからだ。

そもそも、戦略とは「戦争に勝つすべ」、から生まれたのだ。

セリオンたちのような超人的な働きは一般の騎士たちにはできなかったが、スルトの戦術で優勢を確保しつつあった。

セリオンは一匹のクマイラを袈裟懸けに斬り捨てた。

あっさりとクマイラ一体の生命が霧散する。

「どうやら、敵は俺たちを過小評価していたようだな。この程度で俺たちに勝てると思っていたのか」

クマイラたちはもはや戦意を喪失していた。

セリオンたちの前にクマイラは敵ではなかった。

クマイラたちは恐怖に襲われた。

闇の魔法で造られたキメラとはいえ、生存本能はあるらしい。

死にたくないという本能がクマイラを逃亡へと駆り立てた。

何体かのクマイラがセリオンたちに背を向けて逃げ始めた。

その瞬間、闇の槍がクマイラの頭部を貫通し、死に至らしめた。

「何だと?」

クマイラが地響きと共に倒れる。

そこに二人の魔道士が現れた。

一人は男、もう一人は女だ。

「敵前逃亡は死、あるのみです」

女が冷たく告げる。

まるでカスを見ているようにクマイラを一瞥した。

彼らの基準では敵前逃亡するモンスターなど、死んで当然だった。

ゆえに逃亡したクマイラは殺処分されたのだ。

「フハハハハー! やるじゃないか、セリオン・シベルスク! まさかあのクマイラたちをここまで圧倒できるとは思っても見なかったよ!」

「おまえは?」

「私はマルキウス。秘密結社リュケイオンに属する魔道士だ」

「そして私はピュラ。同じくリュケイオンに属する召喚師です」

「召喚師? まさかあのフルゴルは……」

「そう、我々の仲間だった! よくもフルゴルを殺してくれたな!」

マルキウスが怒りの目を向けた。

マルキウスはフルゴルと親しかった。

フルゴルとはリュケイオンに入る前から交流があった。

フルゴルはマルキウスの友だった。

その友を殺された怒りが、マルキウスの顔全体に広がる。

「フルゴルを殺してくれた報いを、その身に思い知らせてあげますわ!」

ピュラも杖をかかげた。

「おまえたち二人でこの俺を倒すというのか?」

セリオンは大剣の刃を向けた。

「フハハハハ! 言ったはずだ。我らは召喚師だとな! その真価は召喚術にこそある! いでよ、フルカス(Furcas)!」

マルキウスの前に魔法陣が現れた。

その中から、斧を持った、筋骨たくましい老人が出てきた。

背が高いため、ドワーフには見えない。

そのたたずまいから、かなりの戦闘力を持っていることが分かる。

「いでよ、ナベリウス(Naberius)!」

ピュラの前にも魔法陣が展開された。

その中から、三つの頭を持つ大きな犬が出てきた。

その姿はまるでケルベロスだった。

その爪は大きくて鋭く、人間を一撃で死に至らしめる力を持っていた。

「アッハッハッハ! どうですか? 我々を相手にできますか? あなたがたには我々を倒せるだけの力がありますか? ウッフフフ」

ピュラの哄笑が響き渡った。

二人の召喚師に、二体の悪魔。

マルキウスとピュラは悪魔召喚師だった。

「セリオン、早まるな」

「アンシャル」

「私もいるぞ!」

「アラゴン」

「私も戦うわ!」

「エスカローネ」

三人の戦士たちがセリオンのもとに駆けつけた。

「ほう……これは壮観な……」

マルキウスが漏らした。

片刃の大剣を構えるセリオン、白銀の長剣を向けるアンシャル、黒い長剣を抜いたアラゴン、そして銀のハルバードを持ったエスカローネ……。

この四人がそろったら無双だ、天下無敵だ。

彼らに立ちふさがる存在は息絶える運命にある。

「こいつらが事件の首謀者か。よくもテンペルを襲撃するなどという大それたまねをしてくれたな」

アンシャルが長剣を彼らに向けて突き付ける。

この中でもアンシャルの美貌がひときわ目立った。

アンシャルは非常に整った顔つきをしている。

そして髪が長い。

金髪で碧眼だった。

それはディオドラと同じだ。

白いコートがトレードマークだ。

アンシャルはもてたが、セリオンを育てるために自分の人生の半分、つまり20年を捧げた。

それが神のみ旨にかなうと思ったからだ。

今のところアンシャルには特定の恋人はいない。

「セリオン、おまえはあの犬をやれ。あいつらの中では一番強いだろう。私はあの老人を相手をする」

「わかった」

「アラゴンはあの召喚師の男を、エスカローネは召喚師の女を、それぞれ相手をしてくれ」

「わかりました」

「はい!」

4者が戦いの構えをとる。

セリオンは三つの頭を持つ怪物、ナベリウスと対峙した。

セリオンはかつて戦ったケルベロスを思い浮かべた。

「ナベリウスか……ケルベロスと似ているな」

ナベリウスは青い体をしていた。

セリオンは大剣をナベリウスに向けた。

ナベリウスが大きく息を吸い込む。

これはブレスの前兆だ。

ナベリウスの口から炎が漏れる。

セリオンはそれを見て、炎のブレスが来ると確信した。

セリオンは氷の光の剣・氷星剣を出した。

それからはセリオンの予想通りだった。

ナベリウスの真ん中の口が炎をセリオンにはきつけてきた。

燃え盛る火炎がセリオンに吹き付ける。

セリオンとナベリウスとのあいだに衝撃が起きた。

青い光がナベリウスの炎の息に対抗した。

セリオンは氷の剣で押し切った。

ブレスが収まる。

セリオンはナベリウスに接近すると、大剣でナベリウスを連続で斬りつけた。

白銀のひらめきがナベリウスを斬り刻む。

セリオンの動きは力強かった。

これまでテンペルではスルト以外では大剣を武器とする騎士はいなかった。

セリオンはスルトから大剣の扱いを学んだ。

もっともセリオンはすぐに大剣を使い始めたのではない。

セリオンは複数の武器の扱いをトレーニングした。

まず、最初は斧、次にハンマー、そして投げ槍、それから大剣を扱うようになった。

セリオンの斬撃はスルトから学んだものと、セリオン自身の武器遍歴が反映されていた。

セリオンの攻撃がナベリウスを斬った。

しかし、ナベリウスの硬い体はセリオンの大剣でも傷をつけるのがやっとだった。

「くっ、硬いな」

ナベリウスがセリオンにかみついてきた。

ナベリウスの牙はまるでサメのようだ。

この牙でかみつかれたら、一撃で絶命するだろう。

セリオンは地面を蹴って後退した。

ナベリウスの牙が空を切る。

ナベリウスが怒りの目を向けた。

ナベリウスの目が赤く光っていた。

「感情はあるというわけか」

ナベリウスはセリオンに向かって跳躍してきた。

そのまま爪でセリオンを押しつぶすつもりだ。

セリオンはナベリウスの下をダッシュでくぐりぬけた。

ナベリウスの大きな体が路面を割った。

今度はナベリウスが疾駆してきた。

セリオンにかみつこうとする。

セリオンは脚力を強化して、ナベリウスを大きく跳び越えた。

「いつまでも守勢に回っていると思うな!」

セリオンは大剣に蒼気を収束させた。蒼い刃が伸びる。

ナベリウスが再び、疾駆してきた。

バカの一つ覚えだ。

もはやそのようなワンパターンな攻撃はセリオンに通じないということがわからないらしい。

ここまで理解が遅いと、哀れみすら覚えるな。

セリオンは蒼い大剣で、ナベリウスの首を斬り払った。

セリオンの技「蒼気凄晶斬そうきせいしょうざん」だ。

この技はセリオンの蒼気の技で最高のものだ。

セリオンが蒼気をもっとも練り、収束し、鋭い刃と化して敵を斬る技――。

この技は銀光斬と比べると劣るが、すさまじい切断力と切れ味を持っていた。

ナベリウスの体は倒れて、黒い粒子となり、消えていった。

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