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Das Heldenlied Neu ヘルデンリート・ノイ  作者: Siberius
Neu Drei Orpheus
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説教

オルフェウス卿は自らの執務室に二人の人物を呼び寄せた。

一人は召喚師マルキウス(Marcius)。

もう一人は女召喚師ピュラ(Pyrrha)であった。

「お呼びでございましょうか、総帥閣下」

「私たちに何の御用でしょう?」

「二人ともよく来てくれた。単刀直入に言う。フルゴルとガープが死んだ」

オルフェウス卿はさして驚きもせず、淡々と客観的事実を述べた。

この事実はオルフェウス卿を不快にさせたが、説明を受けると納得したようだった。

「何ですと!?」

「そんな!?」

マルキウスとピュラは驚いた。

彼らは召喚師としてフルゴルの腕を知っていた。

フルゴルは闇の魔道士としては上位に立つ男だ。

そのフルゴルを倒すなど、普通の戦士にできることではない。

一体だれがフルゴルを倒したのか……。

オルフェウス卿は淡々とわざと前置きもなくフルゴルとガープの死を告げた。

「あのフルゴルが、敗れたというのですか!?」

「それは本当ですか!?」

「これは事実だ。二人はセリオン・シベルスクとアンシャル・シベルスクによって倒された」

オルフェウス卿は淡々と事実を語る。

その仮面に隠された顔はどのような表情をしているのか。

オルフェウス卿の声には暖かさはなかった。

オルフェウス卿の声からはフルゴルとガープの死をただ事実を客観的に認識しているようにしか聞こえなかった。

「おまえたちを呼びだしたのはほかでもない。おまえたち二人にはテンペルを襲撃してほしいのだ。そのためあの『クマイラ(Kumaira)』を使うことを許可する」

「テンペルの襲撃ですか……?」

ピュラが不安を口にする。

「そうだ。テンペルは我々リュケイオンと対立しうる組織だ。目障りなこの組織を潰す必要がある。そして、テンペルの信徒は皆殺しにしてかまわない。一人たりとも生かしておくな」

「「は!」」

オルフェウス卿の顔は仮面で見えないが、笑っているようにマルキウスとピュラには感じた。

マルキウスはクマイラのことが気になった。

「ただ一つ、懸念があります」

「何かね?」

「クマイラの制御は今だ不完全です。いつ、どこで、どのように暴走するか、わかりません」

「それはかまわない。暴走したクマイラは殺処分してかまわない」

「さようで」

マルキウスとピュラは互いに視線を合わせた。

改めてオルフェウス卿の恐ろしさを感じたからだ。

このかたはなんと恐ろしいのだ……

マルキウスは心からそう感じた。

それはピュラも同様だった。

オルフェウス卿の表情は仮面で見えなかったがゆえ、その声から冷たさがにじみ出ていた。

背筋が凍るのが二人にはわかった。

「テンペルは光の勢力だ。それに対してリュケイオンは闇の勢力だ。我らがぶつかり合うのは必然。ゆめゆめそれを忘れるな。以上だ。それでは行動に移ってくれたまえ」

「「は!」」


日曜日、恒例の説教がベルナルド(Bernard)総主教によって行われた。

ベルナルド総主教はシベリウス教テンペルに所属する最高位の聖職者であった。

ちなみに聖職者の位は総主教、大主教、主教、司祭の順となっている。

日曜の午前は祈りの時間で多くの信徒が聖堂を訪れる。

テンペルの説教は人気で、聖堂に入れない人が続出するありさまだった。

そのため、一部の信徒のため、テレビを設置して対応している。

「おお、汝ら、信仰者よ。シベリウス教とは何か? それは二原理が対立する宗教である。原初の時、神は天と地を創造した。そして時間と空間を創造し、光と闇を分けられた。それまでは光も闇もなかった。この世のものは二つの対立する事物からなっている。光と闇しかり、右と左しかり、男と女しかり、天使と悪魔しかり……。シベリウス教とは対立する二つの事物を認識し、知覚し、ペアとしてとらえるということである。これこそがシベリウス教の認識であり、預言者シベリウスそのものなのだ。二つのヨゲンシャが存在する。一つは予言者。もう一つは預言者。一つ目は未来をあらかじめ語るにすぎないが、二つ目の預言者とは神の言葉を預かったものを言う。シベリウスは二つ目の意味で預言者なのであり、間違えることのないように。預言者シベリウスはそれまでの宗教的状況に革新的な在り方をもたらした。それまではシベリアでも漠然とした多神教が信じられていた。シベリウスはそれを神、天使、悪魔、と秩序化したのだ。シベリウスは唯一の、(しゅなる神を説いた。おお、汝ら、信仰者よ。シベリウスの教えを忘れてはならない。シベリウスは真理を認識した。神はこの世界エーリュシオンができる以前より存在していた。

神は父であり、(しゅであり、唯一であられるかたである。神が人間を創造したのであって、人が神を創作したのではない。シベリウスは言った。この世界は対立する二つの原理で存在している。一つは光、すなわち善。もう一つは闇、すなわち悪。光と闇は倫理性を持っているのだ。そして光と闇はそれぞれ価値を持つ。

光は愛や希望を、闇は憎しみや絶望、恐怖を。光と闇は互いに対立し、衝突し、戦いへと移る。この世界は光と闇の闘争の舞台なのである。シベリウスが現れる前は、無道時代には思想がなかった。真の宗教が存在しなかったのだ。今や、シベリウス教はシベリア人のアイデンティティーになっている。シベリア人のナショナリズムは必ずこの宗教に立ち返らねばならない。彼は一個の人間の野心としてシベリウス教をもたらしたのではない。彼は共同体のために、シベリウス教をもたらしたのだ。およそあらゆる価値は宗教的バックボーンを持たなければ虚しい。宗教は物事に正当な価値を付与するのだ。最後に語らねばならないことがある。それは宗教と科学についてである。宗教と科学は共に真理を認識することで共通する。宗教は物事の説明に物語を用いるが、科学は理論を用いる。そもそも宗教から科学が分離したのであって、その逆ではない。つまり、この二つの根は同根なのである。また、宗教とビジネスも時に対立することがある。シベリウス教では預言者シベリウス自身がビジネスを営んでいた。ビジネスはシベリウス教では肯定されているのだ。ただし、貧者のために定めの喜捨を出すことが条件であるが……さあ、汝ら信仰者よ。私はシベリウス教の根本教義について語り終えた。汝らは神と共に在るだろうか? 神と共に在るということは光と共に在ることに他ならない。神は光であり、闇が全くない。人間は神の側に属し、闇と戦わねばならない。忌まわしいことに、人間でも闇に堕ちる者は存在する。それらの者は悪となったのであって、彼らに続いてはならない。我々は神と共に在る。我々は光に属することが肝心なのである。光に栄光あれ!」

ベルナルド総主教が説教を終えた。

聖堂内に拍手がこだました。

多くの人たちがベルナルド総主教の言葉に感激を受けていた。

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