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Das Heldenlied Neu ヘルデンリート・ノイ  作者: Siberius
Neu Drei Orpheus
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大雪

悪魔ガープ(Gaap)は夜、テンペルの中を歩いていた。

「せいー! ここが宗教軍事組織テンペルかー! へっへっへ! まさに悪魔の敵の本拠地だな……さて……」

ガープはテンペルの下調べのために侵入していたのだ。

ガープにとっては夜遊びではなく調査なのである。

テンペルは外部の組織からは不明な点も多いのだ。

これはテンペルの機密保持であった。

そのためガープはテンペルに侵入し、調べてたのである。

「あなた、誰!?」

そこにエスカローネが現れた。

エスカローネはハルバードで武装していた。

ガープが目の色を変える

「おやあ、かわいこちゃんだー! ねえ、君は一人? 今夜ぼくとお茶しない?」

「ここはテンペルです! 無関係者が入っていい場所ではありません!」

エスカローネが怒気を込めて言った。

ガープはふざけたように。

「や―だなー、かわいこちゃん! そんなこと気にするなって!」

「エスカローネから離れろ!」

「おんや?」

そこにセリオンが現れた。

セリオンは大剣を構えていた。

白刃の刃がひるがえる。

月の光が大剣を照らした。

それはその存在感を強く醸し出していた。

しかし、それを気にすることなくガープは。

「君は誰かなー?」

ガープは小ばかにしたような顔を見せる。

「俺はセリオン・シベルスクだ。何者かは知らないが、おまえを拘束する!」

「はっはっはー! さすがにそれはまずいかなー! じゃー、ぼくはここらで退散させてもらいますかね。アデュー!」

ガープは夜の闇を翼で疾駆した。その様は大慌てだった。

「くっ! 飛行されたか……。あれでは追跡のしようがない。やれやれ……俺ともあろう者が不審者を逃がすとはな……エスカローネ、大丈夫か?」

セリオンは苦々しい表情をしながら大剣を下ろした。

「ええ、私は大丈夫よ。それにしてもあんな奴がいるなんて……」

「夜間の警戒を厳重にする必要があるな。俺からスルトに頼んでみよう」

セリオンの瞳は夜を駆け抜けていったガープの姿を追っていた。


秘密結社リュケイオン(Lykeion)――

それは闇の魔法使いの秘密結社であった。

その結社は、一人の総帥によって治められていた。

その総帥の名はオルフェウス卿(Orpheus)。

闇のあるじである。

「ガープは戻ったか?」

オルフェウス卿の声は氷のごとく冷たかった。

オルフェウス卿は紺のフードで頭を覆い、青い仮面をつけ、紺のローブを着用していた。

ここはオルフェウス卿の部屋だった。

オルフェウス卿の前には一人の男性がいた。

年はまだ20代だろうか。

「ガープは戻りました。ガープからの報告では、テンペルのセリオン・シベルスクと会ったそうです」

「それだけか……。悪魔ともあろう者が、バカげた悪ふざけなどするからだ。フルゴル(Fulgor)、召喚師であるおまえの責任だぞ?」

「はっ、申しわけありません、我がきみ!」

「まあ、いい……。我らが何を為すか、フルゴルよ、おまえはわかっているな?」

「はい、大いなる闇の理と共に、ですね?」

「そうだ。秘密結社リュケイオンはそのために存在している。すべては大いなる闇の理のために。闇が世界を暗く閉ざすのだ。我ら、闇の魔道士の理想――すなわち、闇の支配!」

オルフェウス卿の言葉に熱がこもった。

まるで口からマグマが出てくるようだ。

「それでは、フルゴルよ、ガープのことをコントロールしておけ。そして、すべては計画通りに進めるのだ」

「わかっております、我が君。すべては大いなる闇の理のために!」

フルゴルがオルフェウス卿の言葉を繰り返した。

その言葉には熱さがこもっていた。

フルゴルは本気で闇の到来を信じているのだ。

それはこのオルフェウス卿も同じだった。

闇の支配こそあるべき理想だったのだ、彼らの……。


その日は大雪だった。

たくさんの雪が夜からシュヴェーデ中を白く染めていった。

それは異常気象だった。

ラベンダーが咲くのは5~7月だが、この月に雪が降るなどと誰が予想し得ようか。

氷雪がシュヴェーデ中に降り注ぐ。

セリオンとアリオンは雪かきをしていた。

二人は厚着していた。

「フウウウウウ……さみーー! いったい何で今ごろ、季節外れの雪が降るんだ!」

アリオンがあまりの雪の多さに悪態をつく。

「アリオン、口よりも体を動かせ。不平不満を言っても問題は解決しない。今の俺たちにできることは雪を払いのけて道を作ることだ」

「わかってるよ! 俺は早く大人になりたいんだからな! 見てろよ、セリオン! 俺は必ず、テンペルの聖堂騎士になって見せるぜ!」

聖堂騎士になる――それはアリオンの理想だった。

アリオンは15歳の今からすでに聖堂騎士になるという将来像を持っていた。

セリオンの口元が緩む。

「ああ、期待しているぞ?」

「よっしゃーー! 雪かきなんて燃えるぜ!」

アリオンは勢いよく除雪していった。


「セリオン・シベルスク入ります」

「うむ、入ってくれ」

中から鋭い男性の声がした。

セリオンはスルトの執務室に呼び出された。

セリオンは真剣な表情で。

「また、俺向けの仕事か、スルト?」

「その通りだ。おまえは今起きている雪現象をどう見る?」

「そうだな。雪の重みで家や建物がつぶれないか心配だな」

「フム……セリオンよ、この雪はただの雪ではない」

「何だと?」

「これからはアンシャルに話をしてもらおう」

スルトは隣にいたアンシャルを見やった。

「どういうことだ、アンシャル?」

セリオンがアンシャルに向かいなおった。

「私の予測では、この氷雪は何者かが意図的に降らせていると思っている」

「それは、いったい誰が?」

「それが何者かまでは突き止められていない。ただ、闇の存在であるのは確かだ。何者かが雪を降らせて、市民生活をマヒさせている。となれば原因となっている存在を除去するしかない。そこで私とおまえがこの事件の調査に向かうことになった。まず、防寒着を整えよう。それから二人で出発だ」

「わかった。俺も雪用の装具を整える」

「期待しているぞ、アンシャル、そして若き狼よ」


一方、女子寮では備え付けの大オフロにエスカローネは来ていた。

ほかにライザ(Leisa)、ナターシャ(Natascha)といっしょだ。

「ふうー……。こんな寒い日にはやっぱりオフロに限るわねー!」

ナターシャが発言した。

ナターシャは銀色の髪をかき上げ、湯船の中で大きく手と足を伸ばした。

「こらこら、ナターシャ。いくら三人で独占しているからって、はしゃぎすぎだぞ?」

この発言はライザのものだ。

ライザは赤い髪を、ほどき、垂らしていた。

ライザもナターシャもエスカローネの同僚にして親友だった。

つまり、この二人ともヴァルキューレ隊のメンバーだった。

この三人の付き合いは長い。

二人とも20歳で、10年以上三人は交流がある。

「二人とも体を洗うのが速いわね。少し待っていて。私ももう少しで洗い終えるから」

エスカローネは自慢の長い金髪を洗っていた。

長い髪のケアは時間がかかる。

それでもエスカローネは手入れを怠らない。

セリオンがこの長い髪を好んでいることを知っているからだ。

「エスカローネちゃんは髪が長いからねー。ケアも大変じゃないの?」

「そうね。でもセリオンがこの髪を好きって言ってくれるから……」

エスカローネのほおが朱色に染まった。

それを見てナターシャが抗議する。

断固抗議する。

なぜなら。

「あーー! のろけたーー! いーなー! エスカローネちゃんは! 私も恋人が欲しいー!」

「こら、ナターシャ、声が大きいぞ」

ライザがすかさずたしなめる。

「セリオン様の恋人だなんていーなー! あのセリオン様のことを少なからず想っている人っているんだよ?」

実際、セリオンのことはヴァルキューレ隊でも話題になる。

セリオンはテンペルの中でも注目を引く。

聖騎士にして、青き狼、そして英雄――いやがおうにもセリオンの存在は目立っていた。

そんなセリオンがもてないはずがなく、ひそかに、中には公然と想いを吐露する者もいた。

エスカローネは髪をまとめて湯船につかった。

ナターシャの髪は肩まで垂れていた。

「エスカローネちゃん!」

「ちょっと、何!?」

ナターシャがエスカローネの胸をもみしだいた。

「げへへへへ! 相変わらずいい胸をしてますな。この胸か! この胸がええんか! この胸でセリオン様を誘惑したんか!」

ナターシャの中でオヤジが全開になる。

実年齢より20は上のもう一つの人格なのだろうか。

実際、ナターシャのオヤジぶりはこの二人の注意事項だった。

この人格が出てくるときはろくでもないことが多い。

二人はそれを経験で知っていた。

「ちょっと、ナターシャ! いい加減にしないと怒るわよ!」

「はい、はーい!」

ナターシャはエスカローネから未練ありありで離れた。

「でもいーなー、エスカローネちゃんは。そんなにいやらしい体して、金髪なんだもの。セリオン様も魅了されちゃったのかな?」

ナターシャは胸囲という点ではさほど発達してるわけではない。

「確かに、エスカローネはスタイルがいいな。でも、ナターシャ、セリオン様はそんなところだけが好きじゃないと思うぞ?」

「え? どういうこと?」

ナターシャがライザの指摘に目を丸くする。

ライザはほほえむと。

「あのかたは人を見る。その人の人間性を見る。殿方だから、女性の体を全く意識していないとは思わないが、先に精神的なものがあると私は思うぞ?」

「むう、そーなんだー……」

「そうね、セリオンはまずその人自身を見ているわね。ナターシャが言っているように体だけを見ているわけじゃないわ」

「わかったよー! あーあ、それにしても私も恋人が欲しいなー!」

「フフフ……ナターシャはまずその子供っぽそうな口調を直すべきではないか?」

「何よ、ライザちゃん。私が子供っぽいって言っているの?」

ナターシャがすねる。

「だが、事実だろう?」

「ああ、それは私もそう思うわね」

エスカローネが追撃する。

「セリオンは私を一個の人間として愛してくれるわ。私の人格、パーソナリティーを愛していると思うの。セリオンが私を愛するとはそういうことなのよ」

エスカローネが想いを述べる。

「はあ、何? のろけ? いいですねえ、エスカローネちゃんは」

ナターシャがむきになる。

「それにしても……」

ライザは湯船から上がって、腰かけた。

「? どうしたの、ライザ?」

「ああ、この雪のことだ。いくら季節外れであろうと、やはり私はどこかおかしいと感じる」

「? どういうこと? ライザちゃん?」

ライザは深刻な表情をして。

「むしろ、何者かが意図的に雪を降らせているんじゃないかと」

「人為的に?」

エスカローネが相槌を打つ。

「そうだ。もっとも、私の勘で確証があるわけじゃないんだが……」

「せっかく冬物しまったのにこの雪のおかげで、クローゼットから引きずり出すことにしたよ。ほんと、嫌になるよね」

「セリオンとアンシャルさんがこの雪の調査に行くことにしたらしいの。スルト様もやっぱり、何者かの存在を感じ取っているのかしらね」

「さて、あったまったことだし、上がるとしようか」

「そうね」

「そだねー」 

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