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Das Heldenlied Neu ヘルデンリート・ノイ  作者: Siberius
Neu Drei Orpheus
72/196

テロリスト

「ヒルデブラント様!」

そこにクリスティーネが現れた。

ドアを勢いよく開ける。

「おや? どうしたんだい、クリスティーネ? 何かあったのか?」

「ヒルデブラント様! 大変です! テロリストです! 外法魔道士がテロを校内で起こそうとしています!」

「何!?」

「何だって!?」

ヒルデブラントとセリオンが同時に驚いた。

「彼らはグループで、オイレンシュピーゲル(Eulenspiegel)と名乗っているそうです!」

「オイレンシュピーゲル? ふざけた冗談だ!」


「ボス!」

「何だ?」

「生徒たちを拘束して一か所に集めました。全生徒は講堂にいて、仲間が生徒たちを見張っていやす」

「そうか、よくやった。クックック、これはいいビジネスチャンスだ。あのおかたもビジネスライクに考えたものだ」

テロリストたちはアカデミーを占拠した。

テロリストたちは全生徒を人質として講堂に集めた。

生徒たちは現状をまったく飲み込めず、ただひたすらテロリストの言いなりになっていた。

テロリストたちは学校を占拠すると、ヒルデブラントのもとに交渉役の人間ティル(Till)を送り込んできた。

校長室にて。

「よお、ヒルデブラントさんよお……ボスからの指示を伝えるぜ。100万ドゥカーテンのカネを用意しろ。生徒たちはカネを受け取りしだい解放する。ローゼンクロイツ財団なら簡単に用意できるだろ?」

「私のことを知っているのか?」

「ケケケ、あんたはローゼンクロイツ財団の跡取りだ。財団はいろんなところに資本を投下しているらしいじゃないか。そのうち一部でも俺たちオイレンシュピーゲルに回してくれよ。何も無理を言っているわけじゃないんだからよ」

ヒルデブラントは机の前で手を組んだ。

厳しい表情をティルに向ける。

「おっと、魔法省に連絡なんてしてねえだろうな? 全生徒が人質になっている現状を考えてくれよ。カネを用意できたんだったら、あんた一人で講堂まで来な。ボスがあとは話をつけてくれるぜ。それじゃあな」

ティルは去っていった。

ヒルデブラントは深くため息をついた。

「テロリストどもめ……どうやらただ、野蛮なだけではないようだな。我々のことも調べている」

そこで隣の部屋の扉が開いた。

セリオンとエスカローネ、クリスティーネが現れた。

「ヒルデブラントさん、どうやら事件が発生したようだな」

「セリオン殿?」

「俺に任せてくれないか? テロリストどもは一つを見逃した。いや、想定に入れていなかった。この俺の存在をな」

「どうするというのです、セリオン殿? 相手はテロリストですよ?」

「テンペルの騎士はテロリストには負けませんよ。クリスティーネさんを貸してもらってもいいですか?」

「セリオン殿、一人で戦われる気ですか? おやめなさい。ここはおとなしくカネを払うほうがいいでしょう」

「だからこそ、クリスティーネさんにアカデミーの案内を頼みたいんです。俺たちはこの建物の中をよく知らない。安心してください。俺が生徒たちを解放してみせますよ」

「……わかりました。私としても、テロリストの要求に屈するのはおもしろくない。教師たちもおそらく拘束されているでしょう。クリスティーネ、セリオン殿のサポートを頼む。セリオン殿、くれぐれも慎重に行動してください。生徒たちの命を危険にさらすことのないように。頼みましたよ」

ヒルデブラントは祈るような気持ちで、事の成り行きをセリオンに託した。


セリオンはさっそく校舎を見て回ることにした。

セリオンは校舎に誰もいないことを確かめた。

「どうやら本当に生徒たちはいないようだな。すべて講堂に集められたか……できればテロリストたちをこちらに招き寄せたい」

「さすがですね、セリオン様?」

「? どうした?」

「いえ、突発のできごとにも動揺なさらないので……」

「まあな。テンペルのような組織にいると動揺することも少なくなる。そもそも軍事訓練はテストじゃないんだ。事前に予想できるようなものじゃない。突発的に訓練の在り方が変わることもある。だからだろう」

「それでも私はあなた様をすごいと思いますよ」

クリスティーネが少し笑ったような気がした。

セリオンはクリスティーネがあまり笑わないような人だと思っていたのでこれは意外だった。

「何だ、きさまら!」

「ここでいったい何をしている!?」

「いますぐ投降しろ!」

「……やれやれ、テロリストのお出ましか。クリスティーネ、下がってくれ」

そこに三人のテロリストが現れた。

テロリストは手に剣を持っている。

セリオンは大剣を出した。

三人のテロリストがセリオンに斬りかかってくる。

セリオンは一人目のテロリストを斬りつけ、

「ぐはっ!?」

次のテロリストを斬り払い、

「ぎゃっ!?」

最後の一人を一刀のもとに斬り捨てた。

「があっ!?」

三人のテロリストは倒れた。

「おやおや、部下たちがこうもあっさりやられるとはね」

「誰だ?」

「ヘルマン・フリッシュ(Hermann Frisch)先生?」

クリスティーネが男の名を告げる。

「おまえは教師か? なるほど……教師の一人がテロリストと内通していたか。それならこれほどスムーズに事が進むわけだ」

「ククク、その通り。ところで君は何者かね?」

「俺はテンペルの騎士だ」

「テンペル? 宗教軍事組織テンペル? 厄介な相手だ」

フリッシュがいかにも忌々し気に顔をしかめた。

「安心しろ。すぐ終わる」

「ククク、それは傲慢というべきだな。私は君の相手などするつもりはない。私のしもべが君の相手をする。いでよ、アークデーモン!」

フリッシュの前に魔法陣が現れた。

「これは……召喚魔法!?」

「ククク、さあ、これでどうかね? アークデーモンよ、奴を殺せ!」

セリオンの前に赤い悪魔が現れた。

アークデーモンは屈強な体に鋭い爪を持っていた。

そのまとう気でセリオンを威圧してくる。

「グオオオオオオオ!」

アークデーモンが雄たけびを上げる。

セリオンは大剣を構えた。

アークデーモンは口から息を吸い込んだ。

セリオンはとっさに蒼気を発した。

アークデーモンは口から氷の息をはいた。

氷のつぶてが冷たい息と共にセリオンに飛来する。

アークデーモンの氷の息は何人もの人間たちを一度に凍らせるほどの威力を持つ。

それがセリオン一人に向けられた。

しかし……

それに対してセリオンは蒼気で応じた。

セリオンは蒼気の刃で氷の息を斬り裂く。

セリオンによって氷の息は撃退される。

アークデーモンは次の攻撃の準備をする。

「次はいったい何をするつもりだ? クリスティーネさん、下がってくれ」

「……わかりました」

「クックック! アークデーモンの力はまだまだこれからだ! さあ、やれ、アークデーモン!」

フリッシュが歪んだ笑みを浮かべる。

アークデーモンは両手に雷の力を収束し、雷の列を放った。

セリオンは蒼気を大剣にまとわせると、迫り来る雷をすべて蒼気で斬り裂いた。

「なっ!? バカな!? くっ! しかし、アークデーモンに対して決定的攻撃はできまい! きさまに勝ち目などないのは明白だ!」

「さて、それはどうかな?」

セリオンは大剣でアークデーモンを攻撃した。

アークデーモンは腕についていたかぎづめでセリオンの大剣をガードする。

「……防がれたか」

セリオンは攻撃を変えた。

セリオンは光の刃を出してアークデーモンに斬りつけた。

大剣の力と重さが加わってアークデーモンを押していく。

アークデーモンは口に炎をたくわえた。

この息は金属を溶解させるほどの火力を持つ。

人間の身では耐えきることは不可能だ。

アークデーモンは炎の息をはいた。

この息をセリオンはまじかで受けることになった。

セリオンは炎の息に呑み込まれた。

「はーはっはっはっは! 見たか! 小僧ごときがアークデーモンに勝てるわけがあるまい! どうやら息で燃え尽きたとみられる。フッ、愚かな小僧だ!」

「……」

クリスティーネはただ一点を見つめていた。

「さてクリスティーネ嬢、あなたにはローゼンクロイツ校長のための個人的な人質となってもらおう。私といっしょに来てもらおうか」

「ふふふ」

「? なんだ?」

フリッシュはいぶかしんだ。

クリスティーネがなぜ笑うのか、理解できなかった。

「いえ、あまりに視野が狭窄だと思いまして」

「何を言っている?」

フリッシュは表情を曇らせた。

「この戦いは彼の勝ちです」

「なに?」

炎の息が収まった。

そこには氷の光の剣を持ったセリオンがいた。

セリオンの大剣は青白い光を発していた。

この技は「氷星剣ひょうせいけん」。

セリオンの氷の技では二番目に強い技だ。

「バカな!? あのアークデーモンの炎に耐えたというのか!? ええい、これは何かの間違いだ! やれ! そいつを殺せ! 殺すのだ! アークデーモンよ!」

フリッシュはヒステリックに叫んだ。

もはやフリッシュに残されているのはただ命令を発することでしかない。

フリッシュにはアークデーモンが負けるとは思われなかった。

セリオンは構えた。

それは突きの構え。

その瞬間、セリオンの姿が消えた。

セリオンは氷星剣でアークデーモンを突き刺した。

「グギャオオオオオオオ!?」

セリオンの大剣はアークデーモンを深々と貫いた。

セリオンは大剣をアークデーモンから抜くと、きらめく大剣でアークデーモンの首を切断した。

アークデーモンの首と体が分離する。

そして前のめりに倒れた。

アークデーモンは赤い粒子と化して消えた。

「バカな!? アークデーモンが倒されただと!?」

フリッシュは動揺した。

フリッシュにとってこれはありえない事態だった。

フリッシュはアークデーモンの勝利を確信していた。

そのアークデーモンが倒されるなどど!? 

人の身でアークデーモンが倒されるはずがない!

しかし事実は認めなければならない。

フリッシュは自分の保身を考えた。

「っ!? わかった! 私は君たちに降参する! テロリストどもの情報を教えよう! この私と取引しようじゃないか!」

セリオンは目を細めた。

それは軽い侮蔑の瞳だった。

「取引? 俺たちにメリットがあるのか?」

「まず、私が君たちに情報を提示しよう! それから犯人たちのことをしゃべる! まずは聞いてくれ! そのうえで、私の逃亡を助けてほしい」

セリオンは隣のクリスティーネを見た。

彼女には戸惑いの色があった。

そこに一発の闇の槍が放たれた。

闇の槍はフリッシュの背後から貫通した。

「ぐはああ!? なっ、なぜ!?」

「はっはっは! フリッシュ先生よう、裏切りは死刑だぜ?」

「ヒュ、ヒュブリ……」

フリッシュは口から血をはいて倒れた。

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