カフェ・モカ
セリオンとエスカローネはデートしていた。
二人は行きつけの店「カフェ・モカ」にやって来た。
二人はテラス席に腰を下ろした。
二人はいつも通り、コーヒーを注文した。
「それにしても、久しぶりのデートだな」
「そうね。今までいろいろとミッションばかりだったものね」
「まあ、俺たちじゃないと解決できない事件が多いということだろう。まあ、俺たちはおカネと引き換えに業務を引きうけているから、いっぱい仕事をしているとは言えるんだが……」
「でも、セリオンに仕事が集中しているような気がするわ。いくらセリオンでも休まないで戦うことはできないでしょう? 私はそれが心配よ」
「ありがとう、エスカローネ。俺を心配してくれて。確かにテンペルのミッションは最近増えてきたような気がするな。それが気がかりだ。テンペルにとって闇との戦いは義務だ。俺も聖騎士の一人として、ミッションにコミットしたいと思っている。でも、エスカローネの言う通り、休みが少し少ないかもしれない。それは後でスルトに言ってみるよ。もっとも、スルトはスルトで頭をかかえているかもしれないが……」
「セリオンには私との時間をもっと取ってもらわないと困るんですから」
「ははは。ごめんな。今日はたっぷり楽しもう」
「あら、コーヒーが運ばれてきたわ」
セリオンとエスカローネのもとにコーヒーが届いた。
ドリップの香りが二人の鼻をくすぐる。
この匂いがたまらない。
二人はコーヒーにミルクをブレンドした。
二人はコーヒーに口をつけた。
コーヒーのコクが舌に広がる。
「うまい」
「ほんと、おいしいわね」
「失礼ですが……」
「?」
「あなたは?」
そこに一人の銀髪の男性が現れた。
男性は高級感のある紺のスーツを着こなしていた。
その隣には女性がいた。
女性は紫の長い髪に黒いスーツだった。
「あなたはセリオン・シベルスク殿ではありませんか?」
男性が尋ねてくる。
「はい、そうですが……?」
「そうですか。それではあなたが暴竜ファーブニルを倒した英雄なのですね。お会いできて光栄です。初めまして、私はヒルデブラント。ヒルデブラント・フォン・ローゼンクロイツ(Hildebrand von Rosenkreuz)と申します。そして、こちらの彼女は私の秘書クリスティーネ(Christine)。お見知りおきを。ところで、私たちも席についてよろしいでしょうか? できれば、ぜひともあなた方と話をしてみたいのですが……」
「ええ、いいですよ」
セリオンはエスカローネの方を見た。
エスカローネもうなずいた。
「それでは席につかせていただきます」
ヒルデブラントとクリスティーネは席に座った。
「こうして話をさせていただく機会を下さり、ありがとうございます。セリオン殿はテンペルの騎士でいらしましたね?」
「より正確には『聖』騎士です。聖騎士は聖堂騎士の中でも特に優れた者が選ばれます。今の聖騎士は俺とアラゴンの二人ですよ」
「そうですか。テンペルではどのような訓練をしていらっしゃるのですか?」
「主に武器を使っての訓練をやります。ちなみに護身術なども学びますよ」
「テンペルの訓練……私が思うより厳しいのでしょうね」
「ええ、まあ……戦闘員は主に男ですが、少数ですが女性の戦闘員もいますよ。こちらのエスカローネもその一人です」
「私も戦いと魔法の訓練をしています。厳しいですがやりがいはありますよ」
エスカローネが笑顔で語った。
「ところで、ヒルデブラントさんでしたか? あなたのお仕事は何でしょうか?」
ヒルデブラントはクリスティーネを一瞥してから。
「私の仕事は魔法アカデミーの校長です。彼女、クリスティーネはその秘書を務めております」
「その若さで、校長なんですか?」
エスカローネが軽く驚いた。
「よく、そう言われます。まだまだ私は若輩の身です。先人から学ぶことはたくさんあります。それにしてもお二人は仲がよろしいのですね?」
「俺たちは恋人同士なんです」
「なるほど、そうでしたか。フフフ……よくお似合いですね」
「ヒルデブラント様……次のご予定が控えております。これ以上ここで話をすると、支障が出るかと」
「おや、もうそんな時間かい?」
「予定があるのですか?」
とセリオン。
「はい、まあ、こう見えていそがしい身でして。ですが、後悔はしていません。それを楽しんでおります。ですが、せっかく知り合えたのですから、どうか私どもの魔法アカデミーにいらしてください。また時間がある時にゆっくりとお話しましょう。それではセリオン殿、エスカローネ殿、ごきげんよう」
ヒルデブラントとクリスティーネは席を立って雑踏の中に消えていった。
「なんだか紳士的な人だったわね?」
「そうだな。スーツも似合っていたし、大人の男性って感じがしたな」
「今度、ヒルデブラントさんと会えるのはいつになるのかしら?」
「うーん、次の休みに行ってみるか。魔法アカデミーって言ったら、魔法界で最高クラスの学校だ。そんな学校の校長を務めているなんてヒルデブラントさんはすごいんだろうな」
「それにしても……」
「? どうした?」
エスカローネは何かが気になっていた。
「あの女性、クリスティーネさんって人……」
「それがどうかしたのか?」
「うん、なんだか神秘的な雰囲気をしていたから少し、気になったの」
「確かに仕事ができる人ってイメージがあるな」
二人はコーヒーを飲み終わると、市街地を散策した。




