外法魔道士
ツヴェーデンの首都シュヴェーデ、その通りアルベルト・シュトラーセ(Albertstraße)にて。
男たちは昼間からケンカしていた。
厄介なことに男たちは魔法を使うことができた。
しかし、男たちは正式な魔道士ではなかった。
男たちは外法魔道士だった。
外法魔道士とは正規の道に外れて魔法を習得した者を指す。
現在ツヴェーデンでは魔法は専門の学校で教わって習得するのが一般的である。
現在はたとえ弟子でも魔法を直接教えることは法で禁止されている。
昔は師・弟子の関係で魔法は習得するしかなかったが、カネを払って魔法を習得した者たちが外法魔道士と呼ばれていた。
今でもカネと引き換えに魔法を教える者がいるが、それは犯罪者である。
さて、もっかその外法魔道士たちがケンカをしているのだった。
周囲の人たちは魔法を警戒して距離を取っている。
「てめえの方がぶつかって来たんだろ、このボケ!」
「うっせ! てめえがよけないからぶつかったんだろ!」
この会話で彼らの品性の無さが分かるというものだ。
つまるところきっかけは些細なことだった。
互いの肩をぶつけたのがケンカの原因だったのだ。
実に低次元な動機だったが、このバカどもには理を説いても無駄である。
「口で言ってもきりがねえな。なら魔法でケリをつけてやるぜ! はああ、炎よ!」
一人の男が手から炎を出した。
「けけけ! そんなの潰してやるよう! 氷よ!」
もう一人の男が氷を出した。
厄介なことに二人の力は拮抗していた。
アルベルト・シュトラーセは騒然としてきた。
「市内で、魔法を使うな」
「なっ!?」
一人の青年が男ののど元に大剣の刃を突き付けた。
鋭い刃が光る。
青年は大剣をひっくり返すと、刃の無い向きで男を打撃した。
「がはあ!?」
男は倒れた。
「おい、てめえはいったい何なんだ!?」
もう一人の男は混乱した。
「何、俺も善良な一市民だ。こんなところで魔法を使ったケンカは見過ごせない」
「ふざけるなあ! 死ねやあ!」
もう一人の男が氷を撃とうとしてきた。
その瞬間大剣が男の腹にめり込んだ。
「ぐほっ!?」
男は白目を向けて倒れた。
「やれやれ、人間性の質が問われるな」
青年――セリオンは男たちを一瞥すると、大剣を消した。
「そこを開けてくれ!」
人だかりの中から魔道士と思われる男性がやって来た。
「これは……君が倒したのか?」
「そうだ」
「私は魔法省の役人でニクラス(Niklas)という。君は?」
「俺はテンペルの騎士でセリオン・シベルスクという」
「テンペルか……あの宗教軍事組織か……まあ、とにかく暴動の鎮圧に対して感謝する!」
「ああ、こいつらを頼む」
「わかった。おい、この二人を拘束してくれ!」
ニクラスは背後にいた一般の魔道士に言った。
「君がこいつらをしばいてくれて助かった。下手をしていたら通りで魔法の撃ち合いになるところだったよ」
「それにしても、こいつらのような犯罪者は多いのか?」
「実はそのことで魔法省でも頭を痛めている。どうやら。組織的な犯行の気配があって、それは闇の魔法結社ではないかと言われている」
「闇の魔法結社?」
「ああ……まだしっぽはつかめてないが、こんなちんけな奴らとは違う本物の恐るべき結社だ。……おやおや、つい話が長くなってしまったな。こいつらは私が責任をもって逮捕するので安心してほしい。できれば背後にいる組織につながるといいんだが……それでは」
ニクラスはそう言うと、一般魔道士を連れて去っていった。
「魔法の犯罪か……」
セリオンは小さくつぶやいた。




