プロセルピナ
セリオンはエスカローネと出撃前に話をした。
「なあ、エスカローネ……」
「何?」
「あのマグノリアたちにも生きている意味はあったんだろうか?」
「セリオン……」
「あいつらはただ戦うために生み出された。それこそが存在意義だった。だが、それは悲しいことだ、俺はそう思う」
「そうね……それだけが存在の意味なんて……」
「俺はこの戦いで自分の人生の答えを出すつもりだ。だから、行ってくる。俺はエスカローネのところに帰ってくるよ」
「ええ、私のもとに帰ってきてね。約束よ?」
セリオンはエスカローネとキスをした。
「セリオンお兄ちゃん、今どこ? 出撃だよー!」
「わかった、今向かう」
セリオンはクレーターの穴に入った。
そこは地底空間ができていた。
「おどろいたな……まさかこんな空間ができているなんて……」
モンスターは一匹もこの内部にいなかった。
セリオンは膨大なエネルギー噴出する地点に到達した。
「ここは……地下からエネルギーが噴出しているのか……足場をたどって地下へと進めそうだな」
「そうはいかない」
「おまえはここで果てるのだ、セリオン・シベルスクよ」
「誰だ!?」
そこに夜叉丸と金剛鬼が現れた。
「久しぶりだな、セリオン・シベルスクよ」
「我は会うのは初めてだな。我が名は金剛鬼。邪鬼どもの指揮官だ」
「おまえたちか……いったい俺に何の用だ? そもそもどうしておまえたちが生きている?」
「違うな」
「何だと?」
「俺たちは一度死んだ。俺たちはプロセルピナ様のお力によってよみがえったのだ!」
「今度こそおまえを殺してくれるわ、小僧!」
「なら、おまえたちは何のために生き返った? なんのために生に執着する?」
「……」
「……」
「答えはないのか? ならばおまえたちが生きている意味は何だ?」
「ええい、うるさい! そんなことはどうでもよい! 我らは我らの務めを果たすのみ! それだけだ! 行くぞ! 金剛鬼!」
「わかった、夜叉丸!」
「何だ?」
夜叉丸と金剛鬼が一つに重なった。
「金剛夜叉明王! 我は金剛夜叉明王なり!」
「合体したのか!?」
夜叉丸と金剛鬼は金剛鬼が四つん這いになり、その背中に夜叉丸がくっついていた。
「フハハハハハ! 力がみなぎる! 力があふれる! これぞ闇よ!」
「哀れだな……」
「何!?」
「おまえたちはただの戦闘マシンか。なら一気にケリをつけてやる。雷鳴剣!」
「ぐうあああああああああ!?」
雷電が激しく打ち寄せる。
「続けて、雷光剣!」
雷光の一撃が金剛夜叉明王を襲った。
「がああああああああああ!?」
金剛夜叉明王はあっさりと青い粒子と化して消えていった。
「ふう……地下に向かうぞ」
セリオンは足場を跳んで、地下へと向かった。
そこには大きな足場があった。
「ここは?」
「フフフ、ようこそ、青き狼よ。歓迎しましょう」
「何者だ?」
「私はプロセルピナ。邪鬼たちの主です。ホホホ、ここまでやってくるとはあなたの有志には敬意を表しますわ」
プロセルピナは青白い姿の美女だった。
「おまえが邪鬼たちのボスか。俺はおまえと決着をつけるため、ここにやって来た。勝負だ」
「フフフ、いいでしょう。この私の氷の技であなたを冥土へと送ってあげましょう」
「来い!」
プロセルピナは氷の魔法を唱えた。
「氷矢!」
氷の矢をいくつもプロセルピナは放った。
セリオンは蒼気で迎撃する。
蒼気の波でセリオンは氷の矢を叩き落した。
「多弾・氷結弾!」
氷の結晶の弾丸がセリオンに襲いかかる。
セリオンは氷の結晶を大剣で砕いて迎撃した。
「氷結槍!」
氷の槍をプロセルピナは放った。
セリオンは迫り飛来する、氷の槍を大剣で砕く。
「ウフフフフ……やりますわね。初級魔法ではあなたの足止めにもならないようですね。ですが、これはどうでしょう? ブリザード!」
プロセルピナは上方から猛吹雪を起こした。
氷のつぶてがセリオンを襲う。
セリオンは大剣を上にかかげた。
そして蒼気を放ち、迫る氷のつぶてを無力化した。
「くっ!? この魔法でも無力化できるのですか……なら、これを受けなさい! 氷結花!」
氷の花が咲く。氷の花が刃をセリオンに突き付ける。
「翔破斬!」
セリオンの蒼気の波が氷結花ごと、プロセルピナを呑み込んだ。
「あああああああああ!!??」
プロセルピナは翔破斬に呑まれて、地下へと落ちていった。
「終わった、か……」
セリオンはつぶやいた。
その時セリオンは大きなプレッシャーを感じた。
「この圧倒的なプレッシャーは!? まだプロセルピナは生きているのか!」
「ホーホホホホホ! まだわたくしは敗れてはおりませんよ! わたくしはプロセルピナ=アブソルタ(Proserpina-Absoluta)!」
プロセルピナはハチの女王のような肉腫を持っていた。
さらに触手が二本ついていた。
女の上半身があった。
プロセルピナは浮遊していた。
「オーホホホホホ! このわたくしの真の力を思い知らせてああげますわ! 死になさい!」
プロセルピナは影出を出した。
影の波がセリオンに向かう。
セリオンは大剣で闇をくい止めた。
「獄門!」
闇のゲートが現れた。
闇のゲートはセリオンから生命力を吸い取ろうとする。
セリオンは一気に獄門に近づき、獄門を大剣で斬った。
プロセルピナは両手に闇の魔力を集中した。
「闇黒砲!」
プロセルピナは闇の砲を放出した。
すさまじい闇の放流がセリオンに放たれた。
セリオンは光の大剣でこの攻撃を受け止めようとした。
しかし、すさまじい闇の砲流の前にセリオンは呑み込まれた。
「オーホッホッホッホ! しょせんはその程度です! 本気を出したわたくしにシベリア人の英雄など無力にすぎません! さあ、このナイフで殺してあげましょう!」
プロセルピナは触手の先端をナイフに変えて、セリオンに近づいてきた。
セリオンはすぐに起き上がると、ナイフを大剣で切断した。
「ぎいやあああああ!? この私の触手を!?」
「フン、やられたと思ったか? 甘いな。俺は青き狼だ。俺の『牙』が折れると思うなよ!」
「よくも!」
プロセルピナの触手は再生した。
セリオンは大剣を上にかかげた。
「光、在れ! 閃光剣!」
光が大剣からあふれ出る。
それは闇を切り裂く光だ。
「ぎいやああああああ!?」
プロセルピナは悲鳴を上げる。
「今だ!」
セリオンは光輝刃でプロセルピナの胸を貫いた。
「がっ!? まさか、まさか、まさか……この、わたくしが……!? このプロセルピナが敗れるというの!? あああああああああ!!??」
プロセルピナは地下へと落下していった。
今度こそ、プロセルピナは死んだようだ。
セリオンはシーベリオンに帰還した。
「若き狼よ、おまえが帰還すると私は信じていたぞ」
「スルト、ありがとう」
セリオンはブリッジのクルーからもみくしゃにされた。
「スルト、おれはやっとわかったんだ。俺の人生の意味が」
セリオンがディオドラに向かいなおる。
「それは俺の存在と切り離せないものだった。俺は光に属し、闇と戦う。それが俺の人生だ。それが俺の使命だ。俺は神に仕える戦士だ。母さん」
「何、セリオン?」
セリオンは母ディオドラを抱きしめた。
「俺を産んでくれてありがとう」
これは母親に対する最大限の賛辞だった。
ディオドラは涙を流すと。
「いいえ、生まれてきてくれてありがとう、セリオン」
「そして、エスカローネ!」
「セリオン……」
セリオンはエスカローネを抱きしめた。
「俺はエスカローネを愛している。それに気づいたんだ。俺の人生は他者を愛するためにあると。ほかならぬ人生がそれを求めていると。大切な人を、愛する人を愛するということ、それが俺の愛だ」
続いてシエルとノエルの番だった。
シエルとノエルはセリオンに抱きついた。
「「お兄ちゃん!」」
「俺は二人の兄だよ。どこにいても、どんなときでも……」
感涙に涙しながら、ディオドラはセリオンを見つめていた。
「ディオドラ、あなたの息子は立派だ」
「そうですね、スルト様。でもそれはスルト様の力もあったと思います」
「私がか?」
「そうです。スルト様はセリオンを息子と思って鍛えてくださいました。それはあの子にとって宝物なんですよ」
「そう言われると私もうれしい。さてテンペルに帰還しよう」
セリオンは戦う、闇と。
セリオンは愛する、愛すべき人を。
Amo ergo Sum.(我愛する、ゆえに我在り)
それがセリオンのモットーだった。




