ユピテル=ハイデッガー
シュヴェーデの中央公園に一本の巨大な象牙の塔が出現した。
その塔の前に、巨大なハイデッガーのホログラムが映し出された。
「テンペルの諸君、ごきげんよう。この私のことはご存じだろう? 私は国防長官のハイデッガーだ。パンツァー・ツァールは敗れたが、真の私が敗れたわけではないぞ。そこでテンペルの騎士諸君、この私と決着をつけようではないか。この塔は『天王の塔』。この塔の最上階に私はいる。青き狼、英雄セリオン・シベルスクよ。この私のもとまでやってきたまえ。フハハハハハ! 君が来るのを楽しんで待っているぞ!」
そう言うと映像は消えた。
「ハイデッガー国防長官もサタンの部下だったか……どうやら軍の一部にサタンの影響があるようだな」
セリオンは塔の前にいた。
ヴェロニカはアンシャルに任せてきた。
今テンペルで治療を受けている。
エスカローネはセリオンの隣にいた。
エスカローネは軍服上衣に、ボックス型のミニスカート、二―ソックス、白いマントといういで立ちだった。
「セリオン、行くのね?」
「ああ。ハイデッガーと決着をつける」
エスカローネは心配そうに。
「必ず帰ってきてね」
「ああ、わかっている。俺が返ってくる場所は同じさ。それはエスカローネの隣だ」
セリオンはエスカローネを抱きしめた。
「私はここで待っているから……愛してる、セリオン」
「俺もエスカローネを愛してる。じゃあ、行ってくる」
セリオンは巨大な塔に登り始めた。
塔は螺旋階段状になっていて、セリオンは小走りで上へと登っていった。
塔の真ん中にたどり着いた。
そこには一人の女性がいた。
「あなたは?」
「フフフ……私はヴィルヘルミーネ。ハイデッガー様の部下です」
「つまり、サタンの部下でもあるということか」
「うふふ、その通りですわ。さて、ここから先に行きたいのなら、この私を倒してからにしてもらいましょうか」
「いいだろう」
セリオンは大剣を構えた。
ヴィルヘルミーネが槍を構えた。
ヴィルヘルミーネは一気にセリオンに近づくと、槍で連続攻撃を仕掛けてきた。
セリオンはそれらをすべて大剣でガードする。
ヴィルヘルミーネは一時、後退した。
「闇力!」
ヴィルヘルミーネの闇力。
闇のドームがセリオンを包み込む。
セリオンは闇力に呑み込まれた。
「うふふふふ。青き狼といえども、この攻撃をやり過ごすことは……!?」
闇力が消えると同時に無傷のセリオンが現れた。
セリオンは大剣をかかげていた。
「まさか……闇力を無力化するとは……」
「その魔法は見慣れている。それにこの剣は魔法を無力化できる。さあ、戦いを続けよう」
「それではこれはどうですか!」
ヴィルヘルミーネが闇の力をまとわせた槍でセリオンを攻撃してくる。
セリオンは光の大剣で迎え撃った。
ヴィルヘルミーネが槍を上から下へと振り下ろした。
ヴィルヘルミーネは闇を槍にいきわたらせる。
「闇黒突!」
ヴィルヘルミーネは闇の突きを繰り出した。
セリオンは光の大剣で迎え撃つ。
セリオンは光輝かせた大剣でヴィルヘルミーネを斬り払った。
ヴィルヘルミーネは後退する。
ヴィルヘルミーネのスリットから煽情的な脚が見えた。
「くっ! やってくれますね! ですが、これで終わりです! 魔瘴雨!」
ヴィルヘルミーネが闇の雨のような攻撃をセリオンの上から落とした。
セリオンは間合いを縮めた。
そして、ヴィルヘルミーネに斬りかかる。
「がっ!?」
ヴィルヘルミーネは大剣で斬り倒された。
「これが、英雄の力……」
ヴィルヘルミーネは倒れた。
セリオンは塔をさらに上に向かって登っていった。
その最上階でセリオンはハイデッガーとまみえた。
「おまえの招待だ。わざわざ来てやったぞ」
「ハッハッハ! さすが、青き狼。ヴィルヘルミーネを倒すとはな。だが、それもここまでだ。この私の真の力をおまえに見せてやろう! はああああ!!」
ハイデッガーの周囲に雷が起こった。
それは放電し、火花を散らした。
ハイデッガーは雷をまとっていた。
ユピテル=ハイデッガー(Jupiter-Heidegger)である。
「ガッハッハ! 見よ、このすばらしい力を!」
ハイデッガーは上半身は裸で、腰に白い衣をまとっていた。
まるで多神教のカミのようだった。
「クックック! この私は雷の力をまとっている。君の雷の技はすべてこの私に通じんぞ?」
「なら、これはどうだ? 蒼波刃!」
セリオンは蒼気の刃をハイデッガーに向けて放った。
ハイデッガーは雷の力を腕にまとわせると、それを手で受け止めた。
「フハハハハ! ぬるいな!」
セリオンは蒼気をまとわせて、斬撃を放った。
「ふむ、その程度!」
ハイデッガーは魔法障壁をも作らず、斬撃を無力化した。
「今度はこちらから行くとしよう。少し力をこめるぞ? 雷電よ!」
ハイデッガーの「雷電落」。
雷が列をなして降り注ぐ。
セリオンは神剣の力で魔法を無効果した。
「ほう、私の技を無力化したのかね?」
「おまえの攻撃は魔法に準じていると思った。間違ってはいなかったようだな」
「むうん!」
ハイデッガーが雷の球を作り出した。
「これをくらうがいい!」
ハイデッガーは雷の球で正確にセリオンを狙った。
セリオンは大剣でそれを叩き斬った。
「どうした? この程度か?」
「フン、言うじゃないかね、小僧が! 雷電波動!」
ハイデッガーは雷電を波動にして拳から撃ち出した。
セリオンは蒼気の斬撃で抑えようとしたが、力及ばずくらってしまった。
「うおおあああ!?」
「ガッハッハ! どうかね、この私の力は? ではそろそろとどめを刺してやろう! 電光剣!」
ハイデッガーが雷の斬撃をセリオンに向けて放った。
セリオンは光の大剣でそれを受け止めた。
ハイデッガーが全身から雷の気を吹き上げた。
「むうん! これがバリアの正体だ。雷の気『雷気』だよ。さあ、終わりにしようではないか。我々の因縁もこれで最後だ!」
ハイデッガーは雷気で槍を形成すると、セリオンに斬りかかってきた。
これはセリオンにとっては逆にチャンスだった。
セリオンはハイデッガーと斬り結び、ハイデッガーの槍をはじいた。
「何!?」
セリオンは光子斬でハイデッガーを斬り捨てた。
「ぐはっ!?」
ハイデッガーは倒れた。
「終わったな」
「フフフフフ……」
「? 何がおかしい?」
「ふはははは……これが笑わずにはいられるか。セリオン・シベルスクよ、おまえが考えているよりも我々の闇は深い。我々はツヴェーデン全土に、ツヴェーデン政府に、ツヴェーデンの軍に我々の息のかかった者たちが大勢いる。我々サタン派はサタン様に永遠の忠誠を誓っている。今回は私が敗れたが、私は一人ではない。。ほかにも同志諸君がいる! 彼らが存在する限り、サタン様の栄光は揺るぎはせぬ! サタン様はじきにこの世界に君臨するだろう。私には見える、サタン様の未来ある栄光が! サタン様万歳!! ……」
ハイデッガーの饒舌な舌が彼らの描く未来像を語った。
とたんに天王の塔が震動を引きおこした。
「まずい、ここが崩落する! 天竜バハムート! 来い!」
セリオンは空に魔法陣を出現させた。
バハムートは青い体に二足歩行の脚をした竜だった。
バハムートが翼をはばたかせて塔に降りる。
「ずいぶんと、久しぶりだな。おまえに会えてうれしいよ。だが、今はそれどころじゃない。脱出するぞ、バハムート!」
バハムートはセリオンとは直接対決して以来、主従関係を結んでいる。もちろん、直接対決で勝ってからのことだが。
セリオンはバハムートの肩に乗ると、バハムートを離陸させた。
バハムートはセリオンを乗せて空を飛んだ。
エスカローネは天王の塔が崩れ落ちるところを見ていた。
「塔が崩れていく……それにあれはバハムート……セリオンが呼んだのね。セリオンがハイデッガーを倒したんだわ」
バハムートは宙を円を描くように回転すると、地上に降下した。
セリオンはバハムートの肩から跳び下りた。
「エスカローネ、帰って来たぞ」
「セリオン!」
エスカローネはセリオンの胸に跳び込んだ。
「これでサタンの野望もしばらくは沈静化するだろう。心配をかけてごめんな、エスカローネ」
セリオンはエスカローネを抱きしめた。




