ゴーレム
「フッフッフ……どうやらツヴェーデン国民のあいだに虚無感が広がっているようだな」
「虚無感、ですか?」
サタンとハイデッガーが一室で会話していた。
「専門用語では『実存的空虚』というのだがね」
「ツヴェーデンは繫栄している国ですからな」
「フッフッフ、その繁栄こそが人に「虚無感」をもたらし、「人生の意味」を考えさせるものなのだ。経済が活性化すればするほど、虚無感は多くの大衆に広がるものなのだ。人生の意味とは何か? それを問わずにはいられなくなる。人は意味への意思を持つ存在だ。この意味とは結局、その人間自身が見つけなくてはならないのだ。しかし、すべての人間が答えを見つけられるわけではない。薬物、女、物、酒、仕事、それらによってその虚無感を消そうとする。正しい人間は信仰やボランティアにでも向かうであろう。多くの者たちがこのテーマに挑んだが、それを見つけられなかった者も多い。最初は簡単だと思ったが、実のところかなり難しい問題だと悟った者もいる。この空虚感、虚無感こそ、我々悪魔がつけ込むべきところだ」
「それではサタン様ご自身はこの問題についてどう考えているのですか?」
「フフフ、それはな。私が地上に悪魔たちのためのレーベンスラウムを建設することだ。そしてこの私自らが指導者(Der Führer)として君臨する。この世界エーリュシオンを闇の理のもとに動かすのだ! すべては支配への意思なのだよ。ファーハハハハハハハ!!」
「さすがはサタン様でございます」
「それで、ファウの回収はどうなった?」
「はっ、それが……」
「つまり、失敗したのだな?」
「申しわけありません、サタン様! ファウは必ず回収してみせますので、もうしばらくお待ちください!」
「よかろう。さらなる狂化人間を投入するのだな」
ハイデッガーは別室で待機させておいた狂化人間と会った。
「シャーニ(Schani)、オーデル(Odel)、マクス(Max)よ、おまえたちの仕事だ」
「仕事? で、今度は何をすればいいわけ?」
とシャーニ。
「前回は簡単すぎて退屈だったぜ」
とオーデル。
「んで? 何をすればいいんだ、俺たちは?」
ろマクス。
「おまえたちにゴーレムを与える。そのゴーレムを使い、テンペルを襲撃しろ」
「襲撃って、正面から堂々とやれってこと?」
「そうだ。今回の仕事はサタン様も注目しておられる。よいか、失敗は許されんぞ? わかっているな?」
「はい、はい」
「ま、いいさ」
「わーってるよ」
狂化人間は強いのだが、その代償として性格が悪い連中が多い。
これも「狂化」の代償なのだが……
三人は部屋から去っていった。
「聞いていたな、ヴィルヘルミーネ?」
「はっ!」
「おまえは三人が聖堂を攻撃しているあいだにファウを回収しろ」
「かしこまりました」
「ス、スルト様!」
スルトの執務室に血相を変えた騎士が駆け込んできた。
「? どうした?」
「大型ゴーレムが、テンペルに侵入しました。
「何!?」
「現在、迎撃しておりますが、一般の騎士では歯が立ちません!」
「セリオン、アンシャル、アラゴンに至急伝達しろ! ゴーレムと戦えとな! 私もすぐに現場に向かう!」
「はっ!」
騎士が退出すると。
「一般のブルーダーやシュヴェスターを守らねばならんな。いったいどこのどいつがテンペルを攻撃したのか……」
セリオンとアラゴンはすでにテンペルの敷地でゴーレムと戦っていた。
セリオンとアラゴンは10歳の年の差があったが、親友であった。
「いったい、誰がこんなことを仕掛けてきたんだ?」
「セリオン、考えている暇はないぞ。ここでゴーレムを迎え撃つ!」
まずはセリオンがゴーレムを迎え撃った。
ゴーレムは胸からレーザーを撃った。
セリオンは光波刃でそれをかき消した。
ゴーレムがミサイルを発射した。
セリオンは蒼気を集めてミサイルをすべて叩き落す。
ミサイルは爆発した。
ゴーレムは口からビームをはいた。
ビームが薙ぎ払われる。
セリオンは後退してビームをよけた。
ゴーレムはレーザーを三方向に向けて発射してきた。
ゴーレムの装甲は隙なしの硬さを誇る。
「一刀両断だ!」
セリオンは光子斬を出し、レーザーの合間をくぐって、ゴーレムに近づく。
セリオンの光子斬はゴーレムを一刀両断にした。
ゴーレムは左右に分離し、爆発を起こした。
アラゴン対ゴーレム。
「ゴーレムなどをテンペルの敷地に送り込んでくるとはな。ダキの安全も危険にさらされるではないか」
赤いゴーレムが火炎放射を出してきた。
アラゴンはすぐに反応した。
アラゴンは黒炎の剣を出した。
「真の炎を、我が炭の炎を見せてやろう!」
アラゴンは黒炎剣を火炎放射にぶつけた。
炎と炎がぶつかり合う。
「!? やるな……ただの傀儡ではないようだな! だが!」
アラゴンは長剣から黒い炎を湧きあがらせた。
ゴーレムの炎が押され始める。
ゴーレムは炎を消した。
アラゴンはその瞬間前に出た。
俊足のアラゴンと呼ばれるほど、スピードは速かった。
その秘密は彼の脚力であった。
アラゴンは一気にゴーレムに近づくと、ゴーレムの右腕を斬りつけた。
炎の剣がゴーレムの腕の付け根に傷をつける。
これによってゴーレムの右腕はぐらりと下がった。
ゴーレムは大きな炎の輪を作った。
アラゴンはいったん距離を取る。
アラゴンに向かって炎の輪が迫る。
「そんな攻撃が私に通じると思うな!」
アラゴンは炎の輪を器用に跳び越した。
炎の輪をやり過ごしたアラゴンは黒炎剣でゴーレムを攻撃した。
ゴーレムの核が胸からあらわになる。
「あれがゴーレムの核か! よし、あれを砕こう!」
アラゴンがゴーレムの核を攻撃しようとした時、ゴーレムはナパーム弾を撃ちだした。
「おっと!」
アラゴンは後退して間合いを取った。
ナパーム弾が地面で爆発する。
ゴーレムはアラゴンに向けて、ナパーム弾を「正確に」出してきた。
アラゴンは一気にゴーレムとの間合いをつめた。
ゴーレムは反応しなかった。
どうやらアラゴンの接近に気づいていないらしい。
「くらえ!」
アラゴンは黒炎剣でゴーレムの核を攻撃した。
かくにヒビが入り、ゴーレムは倒れて爆発した。




