サタンの陰謀
「サタン様、ご機嫌いかがですかな?」
大男が尋ねた。
男はハイデッガー(Heidegger)といい、国防省長官という表の顔を持っていた。
緑色の軍服にコートを着ていた。
たくましいあごひげを備えていた。
サタンは缶コーヒーを飲んでいた。
「フフフ、最近は役立たずどもに失望させられる日々だ。一人の男……つまりセリオン・シベルスクに次々と部下たちが倒されていくのでな。このまま部下たちを殺されてしまっては我々のレーベンスラウムを支配できる人材がいなくなってしまう。それは困ったことだ。それにしても、ベートホーフェン大統領はどうしている?」
「大統領は精神的に追い詰められているようですな。我らの同志が活動してから、大統領は確実に我々の手中に落ちつつあります。これもサタン様の深謀遠慮のせいですな。ガッハッハ!」
ハイデッガーは笑った。
「ふむ。それは喜ばしきことだ。それにしても、このコーヒーという飲み物はすばらしいな。私はブラックで飲むのだが、独特の苦みとコクがある。人間の発明にしてはすばらしい一品だ」
サタンは缶コーヒーを一気にに飲み干した。
「それにしても、テンペルか……テンペルは予想以上に手ごわい。あの組織があるうちは我が野望が阻止されかねん。特にスルト、アンシャル、セリオン、この三人は最大の脅威だ」
「サタン様のお手をわずらわせることはないかと。私が軍を使って、テンペルをこの手で落としてみせましょう。サタン様は高みの見物をしていればいいかと」
「うむ……ぬかるなよ。テンペルは手ごわいぞ」
「肝に銘じておきます」
サタンは缶コーヒーを片手で握りつぶした。
セリオンはエスカローネと共にある島に来ていた。
最近戦いばかりでエスカローネといっしょにいられる時間がなかったからだ。
エスカローネはセリオンの恋人だった。
セリオンとエスカローネは小さいころからいっしょだった。
セリオンとエスカローネは幼なじみで、セリオンは18歳の成人の日にエスカローネに告白した。
セリオンはハーフパンツの水着、エスカローネは黒地に金のストライプが入ったビキニを着ていた。
「ねえ、セリオン」
「? なんだ、エスカローネ?」
「日焼け止めをぬってくれる?」
「ああ、いいぞ」
エスカローネは横になった。
セリオンはクリームをエスカローネに塗っていく。
「ふう……とても気持ちがいいわね。私はここでリラックスしているから、セリオンは泳いで来たら?」
「ああ、そうするよ」
セリオンは海へと向かった。
セリオンは海でひと泳ぎすると、エスカローネのもとに戻ってきた。
「なあ、エスカローネ?」
「何、セリオン?」
「最近いっしょにいられなくてごめんな」
「いいのよ。セリオンにとって戦いは仕事でしょ?」
「まあ、それはそうなんだが……」
「? どうかしたの?」
エスカローネが起き上がった。
「俺の中には戦いを喜び、快感としている自分がいるんだ。だから、わからなくなってくる。俺の手は血で塗られているんじゃないかと……」
「セリオン……」
エスカローネはセリオンを見つめた。
「セリオンは闇との戦いを気にしているだけよ。神は私たちを祝福してくれる。セリオンの戦いは神が望んだことでもあるのよ。セリオンにとって戦いは本質なのよ。あなたが『愛』を本質としているように。そろそろ、食事にしましょう」
「そうだな」
「キャーーー!?」
「何だ!?」
「セリオン、あそこ!」
島で一人の女の子がモンスターに襲われていた。
「助けてください!」
「今、助ける!」
モンスターはヤドカリのような姿をしていた。
ヤドカリゴである。
セリオンは少女とヤドカリゴとのあいだに入った。
セリオンは大剣を出す。
「一撃で、決める! 雷鳴剣!」
セリオンは雷電の一撃を叩き込んだ。
ヤドカリゴは全身を感電させ、ショートするように死んだ。
「ふう……モンスターは倒せたな。ところで君は?」
「私はヴェロニカ(Veronika)。それしか覚えていません」
「エスカローネ、バカンスは中止だ。いったん、聖堂に戻ろう」
「ええ、そうね」




