ジャッカー
ディオドラは祭壇で一人祈りを捧げていた。
「神よ、私の愛するセリオンとエスカローネちゃんをお守りください。二人にとこしえによよかぎりなく祝福がありますように」
ディオドラは目をつぶり、拳に手を添えてひざまずいた。
ディオドラは神と向かい合っていた。
「クックック。神との対話か。それにしても美しい。実に美しい祈りだ。そのような美しい祈りはこの私も初めて見るな」
「!? あなたは何者ですか!? 人を呼びますよ!」
男――サタンは歪んだ顔をした。
「ハハハ! 人など来ても無意味よ! ディオドラ・シベルスカ、おまえにはついてきてもらおうか」
「私はあなたの言いなりにはなりません!」
ディオドラは壁に立てかけてあった槍を持った。
「フム……この私にたてつくつもりかね? 無駄なことだ」
ディオドラは槍でサタンを突いた。
しかし、不可視のバリアがディオドラの槍を防いだ。
サタンはディオドラに近づくと、右手でディオドラの首を絞めた。
「ああ!?」
「フフフ……おまえをさらえばセリオンは怒り狂うだろう。そうは思わないかね? セリオン・シベルスクよ?」
「母さんから離れろ!」
セリオンは大剣を構えた。
「フハハハハハ! この女はさらっていく。返してほしかったらゲートの入り、あちらへとやってこい!」
サタンは闇の渦の中にディオドラと共に消えた。
「くっ! 母さんがさらわれたか! 急いでサタンを追うぞ!」
セリオンはゲートへと跳び込んだ。
亜空間サイバースペース。
セリオンは前方を確認した。
そこには銃で武装した兵士たちCSP(サイバーセキュリティ―ポリス)がいた。
「武装した兵士か」
セリオンは大剣を出した。
セリオンはCSPを見上げる。
「無駄な抵抗はよせ! すみやかに投降しろ!」
「さて、どちらかがバカか、確かめてみるか?」
セリオンは大剣を向けた。
「バカめ! この数を、しかも剣で戦おうとするなど! 頭がおかしいらしいな!」
セリオンは蒼気を放出した。
「死ぬがいい!」
CSPが銃弾をセリオンに浴びせた。
セリオンはハチの巣になるはずだった。
しかし、そうはならなかった。
蒼気はすべての銃弾を受け止めた。
「何だと!? バカな!? こんなはずでは……」
セリオンはCSPが呆然とした時間を見逃さなかった。
膨大な蒼気でCSPを薙ぎ払う。
セリオンの一撃で20人は宙を舞った。
セリオンはさらに斬りこんでいく。
兵士たちは次々とやられていった。
たった3分で兵士は全滅し、倒れてしまった。
「バ、バカな……」
「さて、ザコの兵は始末した。母さんを助けに行くか」
セリオンは亜空間を歩き出した。
「それにしてもこの空間は高度に発達したコンピューターの世界のようだな」
セリオンは大剣を持ちつつ、坂を上っていく。
頂まで来た。
セリオンはそこから道を下っていく。
ゴゴゴ……
「? なんだ?」
セリオンは後ろを向いた。
「あれは!」
セリオンが登った頂から巨大な岩が現れた。
行くりと転がってくる。
「ちっ! 来るか!」
セリオンは駆け出した。
岩はさらに勢いを増してセリオンに迫ってくる。
「!? あんな正確に岩が転がってくるはずがない! 何者かの意思か! なら!」
セリオンは大剣に魔力を送り込んだ。
「はああああああ! 魔光斬! セリオンは魔力の斬撃を繰り出した。
セリオンの攻撃を受けて、岩は粉々に砕け散った。
「やれやれだ。ほかにもこうしたトラップがあるのか? ん? あれは何だ? 矢印が付いているようだが?」
そこには「↑」という印がつけられていた。
セリオンはそこに足を踏み入れる。
すると、セリオンは反転して天井の側に着地した。
「これは重力の反転か! あの矢印は重力の方向を示していたのか!」
セリオンは前を見わたした。すると、矢印が付いたゾーンがしばらく続いていた。
「つまり、この重力の法則に従わなければならないというわけか。まあいい。一つずつクリアしていこう」
セリオンは根気よくこのゾーンに挑戦した。
このゾーンを抜けると、セリオンは大きなフロアに出た。
「ここは?」
セリオンは辺りを見わたした。
「キーキキキキ! よくここまで来たな。この亜空間のゾーンやトラップを破るとは……しかし、それもここまでよ。おまえはここで死ぬのだ!」
「声だけで姿を見せないなら、いくらでも言えるな。姿を見せろ!」
「キキキ! そんな挑発に乗るか! さあ、出でよ! シュパイダー! ガロッツォ! マシュラーム!」
セリオンの前にシュパイダー、ガロッツォ、マシュラームが現れた。
「こいつらは!? 復活したのか!? いや、違うな。こいつらからは生命の息吹を感じない。こいつらを再現したコピープログラムと言ったところか」
「キキキ! さあ、やっておしまい!」
ガロッツォがエネルギーブレードを構えて突貫してきた。
セリオンはジャンプでそれをかわした。
シュパイダーは電光の糸を放出してきた。
セリオンは光の大剣で糸を斬り裂いた。
マシュラームが分身を突撃させて自爆させようとする。
セリオンはマシュラームを通り過ぎるように斬り捨てた。
分身は次々と爆発した。
ガロッツォがセリオンに跳びかかってきた。
鋭い牙でかみつこうとする。
セリオンはとっさに後退した。
「くっ、三対一ではこちらが不利だ。一気に決めさせてもらう! 光、在れ! 閃光剣!」
セリオンの大剣から極大な光が放出される。
光は周囲に広がり、三体のボスを巻き込んだ。
セリオンの閃光剣で三体のボスは戦闘不能に追い込まれた。
三体のダミーボスたちはしぶとく立ち上がってくる。
セリオンは三体のあいだを通り抜けて斬撃で斬り伏せた。
三体のダミーボスは倒された。
「もう一度戦った相手だ。それを倒すなど他愛もない」
「キキキ、よくもやってくれたな! この俺はジャッカー(Jchacker)。このサイバースペースの主だ! 最上階まで昇ってこい! そこでおまえを待っているぞ!」
ジャッカーは一方的に通信を切った。
セリオンは身体強化魔術で脚力を強化して、壁を蹴って登り、最上階までたどり着いた。
扉らしきものを入る。
すると、そこには円形のフロアがあった。
そして空中のイスに座り、ジャッカーはいくつものウインドウを開いて、データを見ていた。
「潜在能力……測定不能!? まさかこれほどとはね……」
「ジャッカー、母さんはどこだ?」
「キキキ、それなら部屋の奥にいる」
「母さん!」
セリオンはディオドラに近づいた。
ディオドラは目を閉じて眠っていた。
「外傷はないな。ジャッカー、サタンはどこに行った?」
「キキ! サタン様はお忙しいお方だ。もうこの亜空間の外に出ていらっしゃる」
「そうか……ならあとはおまえを俺が倒せば済むわけだ」
「キキ! そううまくいくかな?」
ジャッカーは空中に浮遊し、戦闘態勢を整えた。
「さあ、ここでくたばるがいい!」
ジャッカーは弓を出した。
セリオンは大剣を構えた。
ジャッカーは羽のような矢をセリオンに撃った。
「そんな矢など!」
セリオンはあっさりとかわした。
ジャッカーはニヤリと笑った。
すると、かわされた矢がセリオンを狙って反転してきた。
「何!?」
セリオンは大剣で矢を斬りつけた。
「次々と行くぞ!」
ジャッカーは次々と羽の矢を出してきた。
セリオンはそれらの矢をすべて叩き斬る。
ジャッカーの羽からレーザーが放たれた。
「くっ!?」
セリオンは接近できずに、それらの回避に努める。
セリオンは光に刃を形成した。
セリオンは光波刃を放った。
ジャッカーがブロックでそれをガードする。
しかし、ブロックはあっさりと切断され、ジャッカーに向かった。
「なっ!?」
ジャッカーは消えてこの攻撃をかわした。
「キキキ! まったくなんて威力だ。危うくこの俺が両断されるところだったぜ! これで終わりにしてくれる! 死ねえ!」
ジャッカーは翼から羽を弾丸のように撃ちだした。
セリオンは蒼気を出す。
セリオンの蒼気は羽をすべて斬り払った。
「どうした、もう終わりか?」
「キキキ! この程度で終わりだと思うな! これで!」
ジャッカーは持っていた弓を消した。
「サテライトビーム!」
ジャッカーは上から巨大なビームを出した。
「キーキキキキ! これで小僧も消滅しているはず……!?」
セリオンがビームの中から現れた。
セリオンは跳んでジャッカーに大剣で突き刺した。
「ぐぼあ!?」
ジャッカーは口から血をはいた。
「こんなバカな……能力はすべて解析できていたはず……この俺が負けるなどありえない! サ、サタン様ー!」
青い粒子と化してジャッカーは消滅した。
セリオンはディオドラと共にサイバースペースを出た。




