ヒュエンナ
バイオラボラトリーにて。
生命研究所でサタンとキノコ型の悪魔が話をしていた。
「サタン様、生物のDNAに手を加える実験はすばらしいですな。『赤き祝福』の効果はその生物の戦闘力を爆発的に高めます」
「うむ。これは『神』を冒涜するためのものだ。神はすべての生物を創った。その神への反逆として、赤き祝福は存在するのだ。そして、神の子たるセリオン・シベルスクのDNAを手に入れれば、我々は神の領域へと足を踏み入れるようになる。神による万物の創造の領域へとな。それにしてもマシュラーム(Maschraam)よ、どうやら我々の存在がツヴェーデン政府に知られたらしいな。おそらくテンペルが情報を流したのであろう。何者かがこのバイオラボラトリーに侵入したようだぞ?」
「さすがはサタン様。よくお気づきになられましたな」
「フン……どうやらネズミどもが侵入したらしい。この施設も廃棄すべき時かもしれんな。だが、その前に、人間どもに地獄の苦しみを味合わせてやろうではないか」
サタンの邪悪な笑い声が研究室に響き渡った。
ツヴェーデン軍兵士たちは廃棄されたはずのバイオラボラトリーに侵入した。
「気をつけろ。ここはすでに廃棄されたはずだが、何者かがこの施設を動かしている!」
「隊長……不気味ですね。物音ひとつしませんよ。こんなところ誰が動かしているんでしょうね……?」
「キヒヒヒヒ! それはね、生命の進化のためだよ」
「誰だ!?」
「クヒヒヒヒ! ようこそ、バイオラボラトリーへ。歓迎するよ」
「何者だ!?」
「クヒヒヒヒ! ぼくはマシュラーム。キノコ型悪魔だよ。さあこの毒で互いに殺し合ってよ!」
マシュラームは毒を噴き出した。
マシュラームの毒霧はすぐさま周辺にいきわたった。
ツヴェーデン兵たちはサーベルを抜いた。
そして恐るべきことに、互いにサーベルで殺し合った。
「キヒヒヒヒ! そうだ! 互いに殺し合え!」
マシュラームの毒は幻惑によって互いに敵を作り出すというものだ。
幻惑の毒によってツヴェーデン軍は同士討ちを演じた。
通路が血で染まった。
「クヒヒヒヒ! キーヒヒヒヒヒ!」
サタンたちが暗躍しているころ、セリオンは夜の町を歩いていた。
電気によってツヴェーデンの首都シュヴェーデは明るい。
セリオンは人生の意味について考えていた。
この問題でアンシャルから問われたからだ。
この答えは自分が人生でやりたいことではなく、人生の方から何を求められているかということだった。
これはセリオンの認識を変えた。
アンシャルにとっては、アンシャルの答えは何だったのか?
アンシャルは答えた。
アンシャルはセリオンを育て、導くことだと。
かけがいのないセリオンの父となることだと、答えた。
スルトにも答えを聞いた。
スルトはテンペルを、シベリア人の共同体を作ることだと。
そして、シベリア人の国を作ることだとも言った。
セリオンにとっては何であろう?
ディオドラの答えは簡単だった。
それは神に仕えること、そして、セリオンを愛することだと……
と、そこに何者かが攻撃してきた。
セリオンはそれに気づいて回し蹴りを出した。
敵は背後からセリオンを攻撃してきた。
「!? 何者だ?」
「ちいっ! 考えに耽っているあいだに、隙をついて殺せると思ったんだが、そうはいかなかったか……」
セリオンは大剣を構えた。
襲ってきたのはハイエナ型の悪魔だった。
両手から爪を出している。
「俺様はヒュエンナ(Hyenna)。サタン様の部下だ」
「サタンの刺客か!」
「へへへ、その通りだぜ! セリオン・シベルスク! この赤き力でてめえらをぶち殺してやるぜ!」
「赤き祝福か!」
セリオンは険しい表情をした。
「へへへ! その通りだぜ! この赤き力はすさまじいパワーアップを俺にもたらしてくれる!」
「だが、それには代償もあるだろう?」
「ハッハッハ! 力が高まりみなぎっている! この力でてめえをぶち殺してやるぜ!」
ヒュエンナは炎の塊を投げつけてきた。
「燃えろ! 燃え上がれ!」
ヒュエンナの炎の塊をセリオンは氷結刃で斬り裂く。
「炎の技か……なら相性はよさそうだ」
セリオンは大剣でヒュエンナを斬りつけた。
ヒュエンナは炎の爪を出してセリオンの氷の刃を防ぐ。
「こいつで燃えやがれ! 炎牙爪!」
ヒュエンナは炎の爪でセリオンを攻撃してきた。
炎の爪がセリオンに迫り来る。
二人の戦いを、周囲で人々が眺めていた。
「ハハハ! ちょうどギャラリーがいるようだ。このギャラリーの前で俺がおまえをぶちのめしてやるぜ!」
ヒュエンナが両手の爪で攻めてきた。
「くっ!?」
セリオンはヒュエンナの猛攻の前にたじたじとなった。
セリオンは一度ヒュエンナと距離を取った。
「逃がさないぜ! 爆噴炎!」
ヒュエンナが地面から炎を噴出させた。
ヒュエンナの炎がセリオンを襲う。
セリオンは氷星剣を出した。
炎の噴出を、氷の剣で防ぐ。
「な、なんだ、それは!?」
ヒュエンナが驚愕する。
「この氷の技は、炎をより強く無力化できる」
「けっ! それがなんだって! こいつが俺の最強の技だ! はああああああ!」
ヒュエンナの全身が炎で包まれた。
それはまるで一つの太陽だった。
「ハッハッハー! この陽火炎の力でてめえをぶち殺してやるぜ! くらいやがれ! 陽獄爆炎拳!」
灼熱の炎の塊がセリオンにやってくる。
セリオンは氷の粒子を大剣にまとわせた。
氷の粒子がきらめく。
セリオンは氷粒剣で灼熱の太陽を斬り裂いた。
「なっ、なに!?」
ヒュエンナは信じられないという顔をした。
「これは氷粒剣。俺の最強の氷の剣だ」
セリオンは氷粒剣でヒュエンナを攻撃した。
ヒュエンナは炎の爪でガードした。
セリオンの技はヒュエンナのガードを切り崩し、ヒュエンナを斬り捨てた。
「ぐはああっ!? マ、マジかよ……このヒュエンナ様が……この俺様がやられるとは……」




