怨念
「これで討伐完了だ。けがはないか?」
セリオンはビジネスウーマンに声をかけた。
「あ、はい、助けてくださり、ありがとうございました」
「一人で帰れるか?」
「ええ、なんとか……」
「そうか。では」
セリオンはその場を後にした。
セリオンは朝、スルトの執務室にやって来た。
アンシャルはいなかった。
「? アンシャルはどうしたんだ?」
「アンシャルは後方支援部隊の訓練に参加している。聖堂騎士団の副団長だからな」
聖堂騎士団は補給を重視する。
聖堂騎士団は「補給」で勝つとも言われる。
後方業務はナンバー2の仕事だった。
セリオンはスルトの言葉に納得した。
「で、首尾はどうだった?」
「ああ、人を襲っていた魔物は倒した。奴は自らをシュパイダーと名乗った。毒の攻撃をしてくる奴だったよ。昨夜も一人のビジネスウーマンを襲おうとしていた。俺はそこに駆けつけた。そしてシュパイダーを倒した。討伐完了だ」
「そうか。それは良き知らせだ。よくやってくれた。眠くはないか?」
「ああ、少し眠いな」
「本日は休みにしてよろしい。部屋に帰ってゆっくりと休むがいい」
スルトが穏やかな目を見せた。
スルトは厳しいことで有名だったが、セリオンには実の息子のように接し、愛していた。
スルトはセリオンにとって、父であると同時に師でもあった。
「ありがとう。俺は休ませてもらうよ」
再び、影が動き出した。
影は怨念を伴っていた。
「おおお、シュパイダー! あなたはどうして殺されてしまったの!? おのれえ! シュパイダーを殺した奴め! 許さない……! 決して許さない! この私が必ずあなたの仇を討ってあげる! 私たちの子供が産まれる日も近い……そのためにも多くのエサを喰わねばならぬ……シュパイダーを殺したやからには生きたまま喰らいついてくれるわ!」
影は肉を必要としていた。
体内にある卵のためにも、食料が必要だった。
用意されたのは人肉四人分。
この四人は街の不良だった。
影は四人を糸でからめると、四人を毒殺してからその肉を喰らった。
事件はまだ終わっていなかった。
セリオンは再びスルトとアンシャルのもとに呼ばれた。
「スルト、アンシャル、いったい俺に何の用だ? 事件は解決したんじゃなかったのか?」
「うむ、それがな、また被害が出た。今回は目撃情報もある」
「目撃情報?」
アンシャルが代わって。
「そうだ。今回もクモの魔物が犯人だった。情報によると、人の言葉をしゃべるらしい。そして『卵』とか『子供』とか言っていたそうだ」
「……つまり、メスというわけか?」
スルトはうなずいて。
「うむ、そうだろう。おまえが前に倒したのはオスの魔物だったのだろう。つがいのメスが出現したようだな」
「事件は解決したと思ったんだがな……」
「セリオン、おまえに任務を与える。そのメスの魔物を討伐せよ!」
アンシャルが述べた。
「わかった。今度こそ事件を解決してみせる!」




