オンディーヌ
「やあ、そこに座ってもいいかい?」
「!?」
オンディーヌは少し警戒したようだった。
セリオンはゆっくり近づいてそばに座った。
オンディーヌはスケッチブックを取り出すと、デッサンを始めた。
「絵を描いているのか?」
「(コクン)」
とうなずく。
「見せてもらってもいいか?」
オンディーヌは絵を見せる。
「これは……」
セリオンは絶句した。
そこには写実的な風景が描かれていた。
「すごいな。俺には絵心がないからわからないが、この絵がすばらしいできなのはわかる」
オンディーヌはスケッチブックをセリオンに差し出した。
セリオンはスケッチブックをのぞいてみた。
そこには自然を描いた絵やスケッチがたくさんあった。
「君は純粋な心を持っているんだな。友達はいないのか?」
コクンとオンディーヌはうなずいた。
「ありがとう。これは返すよ。邪魔したな」
セリオンはオンディーヌがスケッチをしていく様を見ていた。
「……君はどうして他者に心を閉ざしたんだい?」
「……」
オンディーヌがスケッチブックに何かを描き始めた。
(私は人間と精霊のハーフなの。だからどっちでもない存在……同胞でない存在なの)
「だから心を閉ざしたのか?」
(うん)
「今日はこのくらいにしよう。邪魔して悪かったな。また来ていいか?」
(うん)
「そうか、ありがとう」
セリオンはオンディーヌのもとを去った。
「で、どうだったのよ、セリオン? あの子の心は大丈夫なの?」
「ああ、スケッチブックを見せてもらった。きれいな絵が描かれてあった」
「そうでしたか……珍しいですね。あのオンディーヌが心を開くなんて……」
「あまり急すぎるのもよくない。今日はここまでと思って帰ってきたんだ」
セリオンは次の日も次の日も、オンディーヌの絵を見た。
オンディーヌは絵を描いているとき最も充実しているようだった。
そのうちセリオンとコミュニケーション、スケッチブックを通してだが、やり取りをするようになった。
セリオンはオンディーヌの絵をほめた。
ある日セリオンがオンディーヌのもとに来ると、三人の女がオンディーヌを取り巻いていた。
「オンディーヌ!」
そこにセリオンが割って入った。
「何をしている?」
「おやおや、いつの間にか人間の男なんて作ったのかねえ。このビッチが!」
「コウモリさん! 絵なんて描いているからほかの人と交われないんだ!」
「やめろ!」
セリオンはスケッチブックを取り上げると、それをオンディーヌに返した。
「いい加減にしろ。これ以上は俺が見てみぬふりをすると思うな」
「……ケッ! 行こうよ!」
女三人はどこかに行ってしまった。
「あ、ありがとう」
「オンディーヌ、しゃべれるのか!?」
(少しだけ。セリオンさんはウンディーネ様に言われて私のところに来たんでしょ?)
「ああ、そうだ」
(私はウンディーネ様のところに行く)
オンディーヌはウンディーネのもとを訪れた。
そこで二人きりで話をしたらしい。
ウンディーネは出てきて。
「セリオン殿。第一の試練は合格です。よくオンディーヌの心を癒してくれましたね。私は結構ハードルが高いことを条件にしたつもりでしたが……セリオン殿は見事合格でした。それでは第二の試練に移りましょう。川にいるニクシーを倒してください」




