セリオンの派遣
「ふむ……シルフの里が魔物に占拠されたとはな……それで、女王は我々の力を貸してほしいと?」
「そうよ!」
スルトの発言にターニャがうなずく。
「だが、なぜ魔物たちはシルフの里を襲ったんだ?」
とアンシャル。
部屋にはスルト、アンシャル、セリオン、ターニャの四人がいた。
ここはスルトの執務室だった。
「たぶんこれよ。これを狙って、魔物たちはやって来たんだわ」
ターニャは緑色の玉を見せた。
「これは……風の力が集まっているな」
とセリオン。
「私も初めて見る。それは秘宝か?」
とスルト。
「そうよ! これは風のオーブ!」
「でも、どうして魔物は風のオーブを狙うんだ?」
セリオンが素朴な疑問を口にした。
「聖剣シルウィウス(Silvius)……狙いはそれか?」
「アンシャル?」
「うそ……よくわかったわね……」
ターニャは大きく目を見開いた。
「大樹グランシルヴァンに刺さる一振りの剣――聖剣シルウィウス――その力は世界を手にできると言われている。本当かどうかはわからないがな」
「なるほど……力を求めるやからのやりそうなことだ」
「私は早くシルフの里に戻らなければならないの! 人を貸してちょうだい!」
「女王よ、我々は騎士だ。傭兵ではない」
「何よ、力を貸してくれって言ってるだけでしょ?」
「……我々には目的や理念がある。我々は便利屋ではない」
「ターニャ、俺たちはカネを払ったからといって動く存在ではないんだ。確かにモンスター退治は請け負っているが、だからといってシルフの里にすぐに行けるわけじゃない」
「へー……何よ、めんどくさいわね!」
「さて、どう思う、アンシャル?」
「そうだな。ここはセリオンを派遣しよう。聖剣が悪しき者の手に渡るのは阻止しなければならないだろう? この事件にテンペルは介入すべきだ」
「私もそう思う。どうだ、行けるか、若き狼よ?」
「ああ、俺なら問題ない」
「決めるのがずいぶん早いのね。もっと時間がかかるかと思っていたんだけど……まあ、いいわ。じゃあ、セリオン、今すぐ出発するわよ!」
「ああ、いいだろう」
セリオンはバイクでターニャを乗せて走った。
「この方向で合っているのか?」
セリオンが疑問を口にした。
「ええ、合っているわ。風の力に索敵や方向性なんてお手の物よ。このまま道沿いに進んでくれればいいわ」
「信用しよう」
「何よ、私が方向違いをしていたって言いたいの?」
「別に……本当にこの道でいいかとは思っているが」
「ムキ―! あんたねえ! 私はこれでもシルフの女王! 精霊王なのよ! 変な誘導なんてするわけがないじゃない! 少しは私を信用しなさいよ!」
「ふーん、そういうものか?」
「何?」
「いや、精霊と話をするのは初めてだが、人間味があるんだな。喜怒哀楽がはっきりしている」
「精霊だって人格を持っているのよ? 人間的に決まっているじゃない!」
「人間的、あまりに人間的、か……」
そうこうやり取りしているあいだにセリオンとターニャはシルフの里にやって来た。
「ウソ……何これ……?」
「これは一体……?」
セリオンたちの前には闇で包まれたドーム状の膜があった。
それが外界と現世を隔てている。
「私が逃げてきたとき、こんなものはなかったわ」
「これは闇の結界だな。これでは先に進めないぞ」
「ムキー! 何よ、これ!」
ターニャは結界を蹴り飛ばした。
すると電撃が流れてターニャをしびれさせた。
「ダダダダダダダ!?」
「……やれやれ、とんだ女王陛下だ。頭が悪いのか? 普通、結界に触れたらそうなるだろう?」
セリオンはターニャにポーションを振りかけた。
「ウワーン! 結界嫌いー!」
「それにしても困ったな。これではここから先には進めそうもないぞ? 中では何が起こっている?」
「それならちょっと寄り道しましょう!」
「寄り道?」
「子の結界を解くために、光の玉を使うのよ!」




