赤サソリ
セリオンはスルトとアンシャルがいる騎士団執務室に呼び出された。
「セリオン、入ります」
「うむ、入ってくれ」
執務室の中ではスルトとアンシャルがイスに座っていた。
「また事件か?」
「ああ、そうだ。場所はホーエンベルク(Hohenberg)。どうも赤いサソリによる被害が起きたらしい」
とアンシャルが説明する。
「そのサソリは巨大な大きさだそうだ。普通の騎士ではとてもかなわないと見た。そこで我々はおまえを派遣することにした。依頼人の女性とはホーエンベルク中央駅前で待ち合わせだ。今回もファーブニルほどではないが危険な敵だ。しっかりと、準備してから行くがいい」
とスルトが語った。
「わかった。気をつけておこう」
セリオンはシュヴェーデ中央駅から列車に乗った。
列車に乗って、セリオンはホーエンベルクにやって来た。
「確か依頼人はホーエンベルク駅前にいるんだったな」
「あのう……?」
「? はい、何でしょうか?」
セリオンは黒い長い髪にスーツを着ている女性から声をかけられた。
「あなたがテンペルからの仕事人でしょうか?」
「そうですが、どうしてそれを?」
「えっと、服に青・白・黄の三色旗が見えましたので」
「ああ、そういうことですか。俺はテンペルの聖騎士で、セリオン・シベルスクといいます。セリオンと呼んでください」
「初めまして。私はホーエンベルク市の秘書で、フローラ(Flora)といいます。早速ですが、セリオンさんには市庁舎に来ていただきたいのです。よろしいですか?」
「ああ、かまわない」
「それでは路面電車にお乗りください。切符は私が買います」
セリオンはフローラと路面電車に入った。
テンペルはモンスターの討伐業務を請け負っており、今回の赤サソリ退治もその一環だった。
路面電車は市庁舎に向けて出発した。
ガタン、ゴトンと音を立てて路面電車は進んでいった。
「へえ……列車よりも快適だな」
「そう言ってくれると、この町出身の私としてはうれしいですね」
フローラがニコリとほほえんだ。
セリオンたちはほどなくして市庁舎の前に到着した。
「市長とは面会の調整をしてきます。セリオンさんはソファーでおくつろぎください」
「わかった」
市庁舎は役所の業務で混雑していた。
少しだけ、セリオンは市庁舎内を観察した。
「お待たせしました、セリオンさん。市長のシューマン(Schuhmann)が面会するそうです。どうぞ、二階へ上がってください」
「ああ」
セリオンは市長室に入った。
市長室の調度品は高級感があった。
ソファーにもつやがあった。
「君がテンペルからの仕事人、セリオン・シベルスク君だったね?」
「はい、そうですが?」
「……若い……若すぎる。こんな若造で本当に大丈夫なのか? テンペルは何を考えている?」
「……」
シューマン市長は考えていることをすべて口に出した。
「それで、赤いサソリが出現したとのことでしたが?」
「うむ……剣で斬りつけても硬い体には傷がつかなくてね。さらに尾には毒があり、毒に侵されたら最後解毒のすべはない。つまり確実に死に至るというわけだ。赤サソリは口から炎をはく。両手にはハサミを持っている。ざっとこれだけの脅威がある。このデータを得るために何人もの州兵が死んでいる。死んでいった者たちが報われるために、私たちは勝たねばならない」
「一つ、質問してもいいでしょうか?」
「何かね?」
「その赤サソリはいつ、どこに出没するんですか?」
「時間は夜だ。出没する地点は決まったところではない。厄介なことにね。私たちは奴がどこに現れるか、経験的に予測できないんだ」
「それではどうやって発見するのですか?」
「監視員をホーエンベルク市全域に配置し、通信機で連絡を取り合っている。君のところにも連絡がいく予定だ」
「私はどこに配置されますか?」
「それはフローラに一任してある。わからないことは、フローラに聞きたまえ。フローラは優秀だ」
「わかりました」




