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Das Heldenlied Neu ヘルデンリート・ノイ  作者: Siberius
Neu Vier Aschtoreth
106/196

侵攻

ツヴェーデン軍はヌミディアに侵攻していった。

侵攻は不気味なほど抵抗がなかった。

「なあ、アラゴン、どう思う?」

「そうだな。敵は私たちをヌミディアの奥地に誘い出す戦略を取っているように思える。つまり、敵の狙いは補給線の寸断だ」

「俺もそう思う。敵の狙いは補給線を寸断することだ。司令部は気づいているのか?」

アラゴンは顔をしかめて。

「気づいているとは思うが……この近くにコンスタンティネ(Konstantine)という町がある。そこで補給物資の購入を行うつもりだろう」

「アラゴン、兵士たちのあいだに広まっているうわさはどう思う?」

「『あの』うわさか……」

「ユグルタが俺たちを恐れてヌミディアの奥地に後退しているといううわさだ」

セリオンは冷静である。

冷静であるがゆえ、現状を客観的に分析することができた。

「やはり補給線が伸び切るという弱点がある。ユグルタの狙いは補給線を長く伸ばすことではないか?」

「このうわさはツヴェーデン軍にとって都合のいい内容だ。誰が広めたのか知らないが、希望的観測にすがらなければいいが……」

ツヴェーデン軍はユグルタ軍の反撃を受けることなく、コンスタンティネに到着した。

コンスタンティネでツヴェーデン軍は歓迎された。

暴君ユグルタの圧政からの解放者だと。

ユグルタは人気がなかった。

ツヴェーデン軍はここで補給を済ませると、再びヌミディア奥地に侵攻した。

ツィマーマン大将はこの町がユグルタ側につかなかったことに安堵した。

ツヴェーデン軍は敵地で戦っているのである。

敵地に味方を作る必要は絶対にあった。

コンスタンティネはツヴェーデン軍に協力的だった。

ツィマーマン大将も一般の将兵も安心していた時である。

そこに緊急の報告が入った。

「たっ、大変です!」

「? 何が大変なのだ?」

ツィマーマン大将は不審の目を兵士に向けた。

「コンスタンティネで反乱が勃発しました! 町の行政権は反徒側にわたりました!」

ツィマーマン大将は血相を変えた。

「何だと!? それでは補給線が狙われてしまう! 全軍に反転を命じよ! コンスタンティネを反徒どもから解放する!」

ツィマーマン大将は全軍を反転させた。

そして最高速度でコンスタンティネに向かった。

コンスタンティネはゲルマ(Germa)族の町で情報によると、ゲルマ族内部で反乱が起きたらしい。

ツィマーマン大将は反徒は処刑するつもりだった。

ツヴェーデン軍はバリケードが張り巡らされたコンスタンティネに戻ってきた。

ツィマーマン大将は反徒は一人残さず殺害せよと命令を下し、コンスタンティネを包囲した。

コンスタンティネ包囲戦である。

コンスタンティネは補給を断たれて窮地に陥った。

ツィマーマン大将は時間をかければ援軍がやってくると考え、短時間で戦いを終結させるつもりだった。

ことはツィマーマン大将が考えている通りに進行した。

反乱を起こしたゲルマ族は降伏した。

ツィマーマン大将は軍の一部をコンスタンティネに残留させて反乱の首謀者を処刑させた。

そこにユグルタ軍がやって来た。

ユグルタはマゴ(Mago)とギスコ(Gisco)という二人の並立の最高司令官という愚挙を犯していた。

これは軍事的失策であった。

マゴとギスコはユグルタ側の有力者で、互いに軍事的名声を求めていた。

その対立はどちらも互いの下では働けないほどであった。

そのため、ユグルタは妥協案として並立の最高司令官に任命したのである。

軍の指揮系統は一本化される必要があるが、ユグルタにはこれに反することをしたのである。

ユグルタ軍で最も恐れられていたのは精強な『ヌミディア騎兵』だった。

マゴとギスコはヌミディア騎兵の実力を過信していた。

セリオンとアラゴンが片翼を担ってヌミディア騎兵と戦った。

セリオンの翔破斬でヌミディア騎兵は散り散りになった。

もう片翼はなんとかヌミディア騎兵の突撃をくい止めた。

そこにこれまでと見たのかマゴとギスコがセリオンとアラゴンに戦いを挑んできた。

「セリオン・シベルスクよ、我はマゴ! この我と勝負せよ!」

「アラゴン・ダンスク! 俺はギスコ! この俺と戦え!」

「エーリカ!」

セリオンがエーリカを呼んだ。

「はっ!」

「ツィマーマン大将につないでくれ。敵の指揮官と戦っていいか?」

「かしこまりました!」

しばらくするとエーリカが戻ってきた。

「エーリカ、戻りました!」

「それで、どうだった?」

セリオンが尋ねる。

「はっ! 戦いの許可を出すとのことです!」

「わかった。聞いたか、アラゴン?」

「ああ、聞いた。敵との一騎打ちだな」

セリオンはマゴと、アラゴンはギスコと向かい合った。

セリオン対マゴ。

「はああああああ!」

マゴが炎の剣を振りかぶる。

セリオンは大剣で防いだ。

マゴが得意とするのは炎の属性らしい。

マゴはこの地方特有の曲がった剣で攻撃してきた。

(まるで、アリオンと戦っているかのようだな)

セリオンはそう思った。

セリオンは炎の熱量に対抗するため、氷結刃を出した。

氷がセリオンの大剣の刃を覆っていく。

氷の大剣でセリオンは攻めた。

セリオンの大剣は速くかつ重かった。

とたんにマゴは防戦一方になる。

「ぐっ!? まさか……これほどとは!?」

マゴが苦い顔をした。

セリオンはマゴの剣をはじき飛ばすと、マゴに氷の斬撃を叩き込んだ。

「ぐはっ!?」

マゴは斬られた。

「くっ、我の負けだ……」

一方、アラゴン対ギスコは……。

「どおりゃあああああ!!」

ギスコは曲刀でアラゴンを斬りつけた。

ギスコの剣は荒ぶる剣だった。

土の力をまとわせて、アラゴンをギスコは攻撃してくる。

土の硬化の力がギスコの剣には備わっていた。

アラゴンは通常の状態では不利と感じたのか、『黒炎剣』を出した。

黒い炎がアラゴンの長剣に宿り燃える。

「うおおおおおお!? なんだ、その剣は!?」

「フッ、これが私の炎だ。さあ、ギスコ! 行くぞ!」

アラゴンは黒炎剣でギスコを攻める。

ギスコの硬化を上回る力を黒炎剣は持っていた。

アラゴンは黒い炎を縦横無尽に振るった。

アラゴンの攻撃にギスコはついていけなかった。

アラゴンの一撃が決まる。

「ぐおっ!?」

ギスコにアラゴンの一撃が叩き込まれた。

「がはあ……これが、アラゴン・ダンスク……」

ギスコは倒れた。

その戦いを見守っていたツヴェーデン軍の兵士たちが雄たけびを上げた。

「おおおおおおおおおおおお!!」

生き残ったユグルタ軍の兵士たちはツヴェーデン軍に降伏した。


ツヴェーデン軍司令部ではユグルタに関する情報を集めていた。

このような情報収集では敵地にいかに味方を作り出すかが決め手になる。

つまりスパイを育成するのである。

ツィマーマン大将もミューレン少将もツヴェーデン軍の軍人である。

愛国心は当然持っている。

それがなければ、危険な軍人という職業を選ばなかったであろう。

ツヴェーデンは自由民主主義の国である。

それゆえ、軍の最高司令官は文民シビリアンでなければならない。

ヌミディアは部族主義の国である。

それゆえ、部族の信頼を得られるかどうかで戦況が変わってくる。

そんなことを司令部が考えていたころ、セリオンとアラゴンは軍用食を食べていた。

ヌミディアのような高温な地では食べ物も持ちにくい。

「なあ、アラゴン」

「何だ?」

「この戦争は短期戦で済むかな?」

「どうした、セリオン。ママが恋しいのか?」

アラゴンが皮肉を言った。

「いや、俺は戦争に参加したくないわけではないんだ。でも、このような異国の地に来ると考えてしまうんだ。俺たちは何のために戦っているのかってね。それと同時にエスカローネに会いたいという想いもある。アラゴンはどうなんだ?」

「そうだな。私もダキに会いたいという想いはある。だが、そういう想いがあることで、戦況が短期で済むという予測は危険だ。それは希望的観測だからな」

「確かに、それは当然だな。希望的観測ほど愚かなことはない。ただそれとは別の想いさ。俺はエスカローネに会いたい。アラゴンはダキに会いたくないのか?」

セリオンは強いまなざしを向けた。

アラゴンは首を振った。

「私だってダキに会いたいさ。だからこそ、この戦いに真剣に臨んでいる」

「おや、恋人の話ですかな?」

そこにミューレン少将が現れた。

その豪奢な髪が印象深い。

「どうやら、食事は各人にいきわたっているようだな。私はそれをこの目で確かめに来たんだ」

「ミューレン少将は恋人はいないのか?」

セリオンが尋ねた。

「ああ、私にはそういう人はいない。セリオン殿にはいるのか?」

「俺にはエスカローネという恋人がいる」

「私にはダキという娘がいます」

「そうか……それではこの戦争も短く終わってほしいと思うだろう。その気持ちはわかる。私には特定の相手はいないが、妹がいて、私のことを心配してくれる」

「どうなんだ? この戦争は短気で終わるのか?」

ミューレン少将は髪をすくうと。

「政治家の頭の中では短期決戦で終わるという考えがあったようだ」

「なるほど……政治家のプランでは短期決戦か……彼らのお花畑思想で終わればいいが……」

セリオンがいぶかしんだ。

「ところで、作戦の話をしてもいいかな?」

「ああ、かまわないが?」

「ユグルタのアジトが発見できた。マウレタニア近くにあるという洞窟だ。ただ……」

「ただ……どうなんです?」

「ああ、このタイミングでユグルタのアジトが分かったのが不気味でな」

「罠の可能性もあるというわけか?」

「おそらく。情報自体は信頼できる筋からのものだ。そこで、セリオン殿とアラゴン殿にはその洞窟に向かってほしい。この砂地の地勢では装甲車は整備不良となるであろう。そこで馬と案内役をつけよう。ぜひともユグルタを捕らえてほしい。ユグルタは殺さないように。ユグルタをマシニッサ王子は法で裁いて処断したいようだからな」

「……結局は死刑になるんだろう?」

「まあ、そうなるだろうな」

「やれやれ……めんどうなことだ」

セリオンがため息をはいた。

「ただ、この戦争が早く終わるなら挑戦する価値はあるか」

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