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Das Heldenlied Neu ヘルデンリート・ノイ  作者: Siberius
Neu Vier Aschtoreth
105/196

イェリコ

ツヴェーデン軍は無事にヌミディア領に上陸した。

ヌミディア領に上陸したツヴェーデン軍は上陸部隊をすみやかに上陸させ、橋頭保きょうとうほを確保した。

それは見事でユグルタ軍のどぎもを抜いた。

ユグルタ軍は眺めているうちに攻撃の機会を逃した。

ちなみにユグルタ軍という呼称は『ヌミディア』軍と言わないためであり、あくまでユグルタは簒奪者であるとにおわせていた。

次の日の朝――セリオンは上陸部隊とは離れた所に漂着していた。

「う、うううううう……」

セリオンに意識はなかった。

セリオンは波打ち際に倒れていた。

セリオンの隣を赤いカニが通り過ぎていく。

日差しが徐々に強くなりつつあった。

そんな時である。

一人の少女がセリオンの近くにやって来た。

少女は黒髪で褐色の肌をしていた。

少女は自分の水筒から、セリオンに水を飲ませた。

「うっ!?」

セリオンが飲みきれなかった水をはき出す。

その瞬間、セリオンは目を覚ました。

「うっ……俺はいったい……? そうだ、あのダエムスとかいう上級悪魔にやられたんだったか……はっ!? 君は?」

セリオンはゆっくりと立ち上がった。

セリオンは少女が水筒を持っているのを見た。

「君が水を飲ませてくれたのか?」

「そうだよ」

「俺はセリオンという。君は?」

「私はアマナ(Amana)。イェリコ(Jeliko)村の娘」

「イェリコ? 確かヌミディアの地図にそんな地名があったな……そうだ! ツヴェーデン軍は……ここからではどこに上陸したのかわからないな」

アマナはセリオンをのぞきこむように見た。

「お兄ちゃん、困ってる?」

「ああ、頼みがある。俺をその村に連れてってくれないだろうか?」

「……」

アマナはセリオンをじっと見た。

アマナはセリオンの目をじっと見ていた。

おそらく自分は試されているのだろう。

口ではだませても、目はだませない。

「ふーん、お兄さん、悪い人じゃなさそうだし、いいよ。村に連れて行ってあげる」

どうやらセリオンは試験に合格したらしい。

アマナは後姿を見せた。

「ついてきて」

「ああ」

アマナは軽快に歩き出していった。


セリオンはアマナについていって、イェリコ村にやって来た。

村にはヤシの木がいくつも生えており、住居はテントだった。

アマナはセリオンを村長のジスラン(Jchisran)のもとに連れて行った。

「おじいちゃん、困っている人を連れてきたよ」

「アマナ、困っている人を助けるなんて偉いぞ」

ジスランはアマナの頭をなでた。

「若人よ、おぬしの名を聞いてもよいかの?」

「俺はセリオン・シベルスクだ」

「セリオン殿ですな。この村はアルギ(Argi)族という部族の土地ですじゃ。部族は血の規律を持っております。我らは客人をもてなすという文化を持っております。それゆえ、客人を拒めませぬ。まずはこの地の料理でも出しましょう」

「ああ、助かる。腹がすいていて……」

その時、セリオンのおなかがグーっと鳴った。

セリオンは赤面した。

「ほっほっほ。おなかは正直ということですかな。まあ、座りなされ」

「そうさせてもらう」

セリオンはあぐらをかいた。

「客人は酒はたしなみますかな?」

「酒は宗教的にあまりよくないとされている。俺個人としても、飲む気はない」

「そうですか。なら、果物のジュースでも出しましょう。これがパイナップルのジュースです」

「ありがたい。いただくとしよう」

セリオンはジュースを飲んだ。

一気に飲み干す。

セリオンはのどが渇いていたのでこれは良いもてなしだった。

「ところで、客人はツヴェーデン軍の軍人ですかな?」

「いや、違う。俺はテンペル(Der Tempel)の騎士だ。ただ、今回はユグルタ討伐のため、一時的にツヴェーデン軍に所属している。村長はツヴェーデン軍がどこに上陸したか知っているか?」

「私どもの情報ではカイルヴァーン(Keilwaan)に橋頭保を築いたということですが……」

「カイルヴァーン?」

「ここからはさほど離れてはおりませんな。よろしければアマナに案内させましょう……!?」

その時、村から怪物の声がした。

同時にラッパの音がした。

「皆の者! 武器を取れ!」

ジスラン村長が声を張り上げた。

「いったい何があったんだ?」

「お客人は下がっていてくだされ。これは『キバイノシシ』がやって来たという合図でしてな。男たちは戦いの準備をいつでもできようテントに武器を携帯しておりますのじゃ。それでは、私は指揮をとらねばならないので、ごめん!」

ジスランは弓を構えてモンスターのいるところに向かった。

モンスター『キバイノシシ』は四メートルはあるという大きなイノシシだった。

セリオンは黙っていられず、大剣を持ってキバイノシシを見た。

村長の指示のもとアルギ族の戦士たちは弓矢でキバイノシシを牽制していた。

やがて大太刀を持つ者たちがキバイノシシにとどめを刺すべく斬りつけた。

しかし、キバイノシシは抵抗した。

どうやらキバイノシシは怒っているようだ。

キバイノシシは烈火のごとく怒り、肌の色を変えて突進してきた。

「うわあああああ!?」

「ぐああああああ!?」

「くっ! ひるむな! 矢を射よ! キバイノシシを今日こそ討ち取るのだ!」

ジスラン村長の声が虚しく響き渡る。

男たちはキバイノシシの突進で吹き飛ばされていった。

「くっ!? このままでは……!?」

「ジスラン村長、俺が手を貸そう」

「セリオン殿!? キバイノシシは一度暴走したら容易には手が付けられないのですぞ!?」

「まあ、見ていてくれ」

セリオンはキバイノシシに近づいた。

そして石を投げた。

石がドカンとキバイノシシに当たる。

キバイノシシがセリオンを見た。

その目は怒りに燃えていた。

全身の毛を逆立たせる。

セリオンは神剣サンダルフォンを構えた。

「かかってこい。俺はここだ」

セリオンはキバイノシシを挑発する。

キバイノシシがセリオンに突進してきた。

セリオンは銀色の光を神剣から発した。

銀色の光が刀身からきらめく。

その光は幻想的だった。

キバイノシシは何の警戒もせずにセリオンに突っ込んできた。

これを見た村人たちはセリオンが死ぬと思った。

セリオンはタイミングを測って、キバイノシシに銀光の斬撃を放った。

「銀光斬!」

キバイノシシは止まった。

それも真っ二つにされて。

キバイノシシのボディーが左右に分かれて倒れこむ。

『銀光斬』はすさまじい切断力を持つ技で、この技なら戦車や装甲車さえも斬り捨てることができる。

死んだキバイノシシなどセリオンにはもはやただの肉塊にすぎなかった。

「なっ、まさか……こんなことが……」

ジスラン村長は絶句した。

「村長、これは俺からの礼として受け取ってもらいたい」

「おお、セリオン殿!」

その後キバイノシシは全身を解体された。

肉はステーキになって村人たちのおなかの中に入った。

大型とはいえイノシシの肉なので、硬さがあった。

その日は夜の宴が催された。

宴の主役はもちろんセリオンだった。

セリオンはヌミディアにワインがあることも知った。

もっとも輸入品だそうだ。

現在は経済制裁を受けて、輸入がストップしてしまったとのこと。

村人たちはあまりユグルタのいい話を語らなかった。

アルギ族は『部族』という『血の掟』で生きていた。

部族は血族主義で、血にもとづく連合である。

アルギ族は基本的に政府を信用しない。

基本的に彼らは『王』を信用していなかった。

ユグルタの王権がイェリコまで及ばないのはその典型であった。

部族主義が中央からのコントロールを抑えているのだ。

部族はそれ自体として自己完結した集団である。

そのため、血の掟に反した場合、最悪死刑になりうる。

ヌミディアはおもにこのような部族と、土着勢力が割拠している国である。

もともとは土着勢力の国だったが、部族連合が東からヌミディアに侵入した。

そうして現在のヌミディアができた。

セリオンはエスカローネのことを想って寝た。

朝日がまぶしい。

セリオンは暖かい空気と共に目を覚ました。

セリオンは軽く朝食を食べると、アマナと馬に乗って、ツヴェーデン軍が上陸したというカイルヴァーンに向かった。

セリオンはアマナに馬を急がせた。

ツヴェーデン軍は無事に上陸していた。

遠くからツヴェーデン人の姿も確認できた。

「アマナ、ここまででいい。後は歩いていける。ここまで送ってくれて本当にありがとう」

アマナが首を振った。

「ううん、感謝するのはこっちのほう。キバイノシシを倒してくれたし、その肉も食べさせてくれた。セリオンさんがいなかったらどちらも実現しなかった」

「達者でな」

セリオンはツヴェーデン軍の橋頭保フスターム(Fustaam)までやって来た。

兵士はすぐにセリオンに気づき、エーリカがやって来た。

「セリオン様! ご無事で何よりです! ただ今アラゴン様を呼んでまいります!」

エーリカはアラゴンを連れて再びやって来た。

セリオンは部屋に戻っていた。

「セリオン!」

「アラゴン、声が大きい」

「はっはっはっははは……私はもうおまえは死んだものと思っていた……亡霊が現れたのではあるまいな?」

「亡霊がこんなに食べ物を食べると思うのか?」

セリオンの前には昼食があった。

「そうだな……とにかく、無事でよかった。いったい何があった?」

「ああ、イェリコという村の娘に助けられた。この村はアルギ族という部族の村で客人を持てなす文化があるそうだ」」

アラゴンは安堵して。

「そうか……何はともあれ、よく私たちのもとに帰ってきてくれた。わが友よ!」

セリオンとアラゴンは互いの生存を喜び合った。

「そうだ。エスカローネちゃんとディオドラさんには通信機で報告しておいたほうがいいな」

「ああ、わかっている」

セリオンは無線通信機をテンペルにつないだ。

「セリオン! 無事だったのね! よかった! 私はずっとセリオンの無事を祈っていたのよ! セリオンが無事だって信じていたから!」

エスカローネの声が感極まった。

通信機の奥からエスカローネの喜びが見える。

「ありがとう、エスカローネ。心配させたようだな。だが、善良な人たちに助けられてツヴェーデン軍と合流することができた」

セリオンのほおが自然と緩む。

「それも含めて神の力の働きに感謝するわ! ああ、なんて今日はうれしい、すがすがしい日なのかしら! セリオンが無事だって知らせは私の心を憂いから解放したわ。ディオドラさんに何か伝えることはある?」

「そうだな……祈りが通じたと伝えてくれ」

「わかったわ。それじゃあ、セリオン、またあとでね」

「ああ、またあとで」

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