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Das Heldenlied Neu ヘルデンリート・ノイ  作者: Siberius
Neu Vier Aschtoreth
102/196

戦争への準備

セリオンはエスカローネが務める糧食部を訪れた。

ヴァルキューレ隊にも、後方支援業務が命じられることがある。

基本的に、ヴァルキューレ隊は補助戦力であって、決定戦力ではないからである。

糧食部にはエプロンをつけたエスカローネがいた。

セリオンは明日の出撃前にエスカローネに会っておきたかった。

「エスカローネ、今時間は大丈夫か?」

「ええ、一仕事終わったところよ。どうしたの、セリオン?」

「明日、ツヴェーデン軍に出頭することになった」

「ツヴェーデン軍に? どうして?」

エスカローネはふしぎそうな顔をした。

「ユグルタという奴がいるだろう? 俺はそのユグルタがいるヌミディアに軍事派遣されるんだ」

「え? そんな……それじゃあ、しばらく会えないの?」

エスカローネは落ち込んだ顔をした。

「ツヴェーデンは公式にユグルタに戦争を行うつもりだ。俺とアラゴンはベートホーフェン大統領からスカウトされて、ツヴェーデン軍に参加する。無線で連絡できるから、毎晩通信で話せる」

「……私はセリオンに戦争に行ってほしくないわ。だって、それってセリオンがヌミディア人を殺すってことでしょう? 私はあまり好きになれないわ」

セリオンはエスカローネを説得した。

「エスカローネが言いたいことはもっともだ。だが俺も軍人だ。テンペルは宗教軍事組織だ。そして、そのテンペルがツヴェーデンと同盟を結んでいる以上、ツヴェーデン側からの要求を無視することはできない。テンペルはシベリア人の民族的信仰共同体だ。戦うことはテンペルのアイデンティティーなんだ。もちろん、俺にしても相手の側の兵士を殺害することが嫌なわけじゃない。結局は人殺しだ。その事実から目をそむけることはできない。その人殺しに正統性を与えるために大義が必要になる」

「今回の戦争の大義って何?」

エスカローネがセリオンに尋ねた。

「それはヌミディアに正統な王朝を樹立することだ。つまり、ユグルタは簒奪者ということになる。正統なる王朝とは、マシニッサ王子を王位につけることさ」

「マシニッサ王子ってあの、亡命してきた?」

「そうだ。そのマシニッサ王子さ。父王ミキプサの正嫡だよ。まあ、そういうことで明日から当分会えなくなる」

「じゃあ……」

エスカローネがもじもじする。

「どうした?」

「キスして」

「……ああ」

セリオンはエスカローネを抱きしめると、その場でキスをした。

唇が合わさる、重なる短いキス。だが、情熱的だった。

「それじゃあ、俺は戻るよ」

セリオンはこれ以上はエスカローネの邪魔になりそうな気がして去ることにした。


アラゴンは家族寮まで帰ってきた。

「あっ、パパ。おかえりなさい!」

ダキが頭からダイブする。

アラゴンはそれを軽やかに受け止める。

「ああ、ただいま、ダキ。いい子にしてたかあ?」

アラゴンはダキの頭をなでた。

ダキの髪は桃色だ。

それは母リナの髪の色だった。

「なあ、ダキ。お父さんはな、ツヴェーデン軍に行かねばならないんだ」

「? どういうこと?」

「それはな、ニュースでもやっているだろう? ユグルタって悪い奴をお父さんは討伐しに行くことになったんだよ」

「? よくわからない」

ダキが首を傾げた。

「ははは。まだダキは子供だからな。つまりお父さんはしばらく家を空ける。この戦争が終わらない限り、私は帰ってくることができない。マリナさんにはよく言っておくから、何かあったらいつでもマリナさんに頼るんだぞ?」

マリナとはホームヘルパーで現在アラゴンとは恋仲になりつつある女性である。

マリナは仕事の範囲を超えて、ダキの面倒を見てくれる。

「お父さんは正義の戦いに行くんだ。お父さんは悪い奴らを聖騎士として倒しに行くからな」

「わかった。ダキはいい子にしているからね!」

「よし、ダキ、今日はもう寝よう!」

アラゴンはダキが寝付くまで、添い寝した。


「アラゴン、待ったか?」

セリオンがアラゴンと合流した。

「いや、今来たところだ。そっちこそ、あいさつは済ませたのか?」

「ああ。俺はエスカローネとアンシャル、そして母さんにあいさつしてきた。おまえのほうはどうなんだ? ダキちゃんにうまく説明できたのか?」

「フフフ、正義の戦いに向かうと言っておいた!」

アラゴンはうれしそうだ。

おそらく、典型的な正義のヒーローをアラゴンは演じたのだろう。

「はあ? 正義の戦い? 俺たちは戦争に、人殺しに行くんだぞ? ダキちゃんはそれで納得してくれたのか?」

セリオンがけげんな視線を送った。

「うむ! ダキはまだ10歳だからな。あまり難しいことは言わなかった」

アラゴンは自信たっぷりに言った。

ちなみにアラゴンは30歳である。

「まあいい。おまえのほうもあいさつは済ませたようだな。それではツヴェーデン・シュヴェーデ軍管区基地に出発するとしよう」

セリオンはアラゴンといっしょにツヴェーデン軍の基地へと向かって歩き出した。


セリオンとアラゴンはツヴェーデン軍の基地で軍と合流した。

ツィマーマン大将が派遣軍司令官。

ミューレン少将が副司令官だった。

「はじめまして。司令官のツィマーマン(Zimmermann)だ」

「はじめまして。少将のミューレン(Mühlen)だ。よろしく頼む」

「セリオン・シベルスクです」

「アラゴン・ダンスクです」

四人は互いにあいさつをしあい、握手を交わした。

ここはツィマーマン大将の司令室だった。

「今回の戦争ではお二人の戦いぶりに期待している。二人の力があればヌミディア軍を殲滅できるだろう」

とツィマーマン大将。

「我々はツヴェーデン海軍の船でヌミディアに向かう。補給とロジスティクスはツヴェーデン海軍が行う。もし、現地で物資が必要になったら、その時は『購入』する。『徴発』は絶対にしない。一般のヌミディア人を敵に回したくはないのでね」

ミューレン少将が言った。

「それはいい考えだ。Das ist eine gute Idee.現地は敵地だ。敵に地の理がある。それに敵はホームで戦うが、俺たちはアウェーで戦う。原住民の心情はよくしておくに限る」

とセリオンが指摘した。

「エーリカ(Erika)!」

「はっ!」

司令室に、金髪のショートボブの髪をした女性士官が入ってきた。

ミューレン少将が紹介する。

「この者はエーリカ。君たちの行動をバックアップする者だ。何か私たちに用があったり、何か困ったことがあったら、このエーリカに言うといい。要望に応えてくれるだろう。それではエーリカ。二人を案内してやってくれ」

「は! かしこまりました!」


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