表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ROAR OF DRAGONS  作者: 紫鷹丸
8/31

グランヴェル

 リリースから三週間。


 草原のウルフから始まり、アーマードリザード、スパインリザード、より深いフィールドへ。稼いだロドーで装備を整え、装備が整えばまた強い敵へ挑む。その繰り返しだった。そして強くなっていった。


 リクレーンを拠点とし、じっくりと力を付けていった彼等は、この辺りでは既に脅威となるモンスターは存在しなくなっていた。


 そして今日、二人はリクレーンの桟橋を後にする。

 少しの名残惜しさ。短い期間だが、二人には本当の故郷のように感じていた。湖の揺れる音。夜の帳。全てが記憶に残る良い街だった。いつかまた帰りたい。そんな思いに浸る。


 街を出る前に、陽はウィンドウを開いた。

 三週間分の成長が、数字に刻まれている。


═══════════════════════

PLAYER STATUS

═══════════════════════


【雨宮 陽】

LV : 18

HP : 580

SP : 310

MP : 95

STR : 42

AGI : 55

DEF : 33

INT : 48

装備 : セントラルダガー

   ウィンドカッター・ローブ

   シャドウレザー・コート

   スウィフトブーツ


───────────────────────


【橘 ヒロ】

LV : 18

HP : 650

SP : 380

MP : 60

STR : 68

AGI : 44

DEF : 55

INT : 35

装備 : ブレイジングソード

   アイアンクレスト・ベスト

   ストームライダー・マント改

   グラビティブーツ


═══════════════════════

DRAGON STATUS

═══════════════════════


【セラ】

分類 : 飛竜

タイプ : アルカナ

HP : 420

SP : 280

MP : 310

STR : 22

AGI : 78

DEF : 18

GC : Out of Spec

スキル : フェイタルリード

 

 装備

爪 : シャープネイル・クロー

牙 : アイアンファングサポート

角 : 未装着

頭 : ウィルムバンド

胸 : スケイルコア

鱗 : 未装着

鞍 : 未装着

翼 : 未装着

脚 : スケイルレッグ

尾 : スケイルテイル

心核 : 未装着


───────────────────────


【レオン】

分類 : 翼竜

タイプ : ブレイド

HP : 720

SP : 460

MP : 95

STR : 95

AGI : 62

DEF : 78

GC : 18 / 18

スキル : ラムチャージ/アイアンファング/

ブレイクタスク


 装備

爪 : アイアン・クロー

牙 : 未装着

角 : 未装着

頭 : 未装着

胸 : アイアン・チェスト

鱗 : 未装着

鞍 : 未装着

翼 : 未装着

脚 : スケイルレッグ

尾 : テイルガード

心核 : 未装着


═══════════════════════


 最初のステータスと比べると、別の竜みたいだと陽は思った。特にセラ。GCの規格外という特性を活かして装備を積み上げた結果、AGIは他のプレイヤーの竜と比較しても、かなり高い数値になっていた。STRとDEFは依然低いが、その分動きの鋭さは他の追随を許さない。

 煌竜鱗はランクが高く、リクレーンで生産加工できる店がなかったので、それを武具にして装備できればますます強くなるだろう。

 

 体躯は以前より一回り大きくなり、仔竜だった頃の丸みが薄れ、全身の輪郭に“鋭さ”が混じり始めている。白い鱗はより滑らかな光沢を帯び、動くたび淡く光を反射した。

 

 特に変化していたのは翼だった。翼膜は以前より広がり、羽ばたくたび空気が強く震える。細かった首筋にもわずかに筋肉が付き始め、静かに立っているだけで以前とは違う存在感があった。 


 そして何より、金色の瞳。

 幼さを残しながらも、その視線だけは妙に落ち着いている。まるで周囲を観察しているような、不思議な眼差しだった。

 

 一方、レオンは分かりやすく“強く”なっていた。

 翼竜らしく、翼はさらに厚みを増し、四肢には明確な筋肉の隆起が浮かんでいる。濃い赤鉄色の鱗は硬質化が進み、光を鈍く弾いていた。

 

 特に前脚の発達が顕著だった。

 低く構えた姿勢から一気に飛ぶ戦闘スタイルが、そのまま身体へ表れているようだった。目つきも鋭い。獲物を見つけた瞬間、空気が変わる。

 対して、セラは静かだった。威圧するわけでもない。吠えるわけでもない。なのに、隣へ並ぶと妙に目を引く。

 まるで、違う生き物みたいに。


 二体とも、飛行が可能になり、許可証を入手すればプレイヤーが騎乗可能になった。順調に育っているが、少しの気掛かりが一つ。レオンが三つスキルを覚えたのに対して、アーマーボア戦以降、セラがスキルを一つも覚えていないということだった。


「行くか」


 ヒロが言った。レオンが低く鳴く。


「うん」


 陽はウィンドウを閉じた。セラが隣に並ぶ。



 グランヴェルへの道は、リクレーンから東へ一時間半ほどの道のりだった。


 途中にも街はあった。だが二人はほとんど立ち寄らなかった。稼ぎと装備強化に集中するあまり、気づけば中間の街を素通りできるだけの実力がついていた。


 それでもリクレーンから離れるにつれて、道中のモンスターは強くなっていった。リクレーン周辺とは比べ物にならない。それでも二人は足を止めなかった。セラが先頭に立ち、敵の攻撃を躱す。レオンのブレイクタスクが敵の防御を崩し、ヒロが畳みかける。


 二人で組んだ時の戦闘スタイルが確立されていった。


 そして——


「あれか」


 ヒロが前方を見据えた。

 丘の向こうに、それは見えた。

 高い外壁。灰色の石が積み重なり、夕陽を受けて鈍く光っている。壁の高さはリクレーンの建物より遥かに高く、その向こうに街の輪郭が見えた。塔が二本、空に向かって伸びている。


 グランヴェル。


「でかい……」


 陽が思わず呟く。

 リクレーンも十分大きかった。でもグランヴェルは規模が違う。外壁だけで、リクレーンの街全体より広いんじゃないかと思えるほどだった。


 ここで竜の騎乗許可証を発行している

 門が見えてきた。巨大な鉄の扉。その両脇に、NPC——ゲームが用意した門番のキャラクターが立っていた。重厚な鎧を身に纏い、槍を手にしている。そして、その隣に竜。門番の竜は体格が大きく、陽たちの竜とは比べ物にならない威圧感を放っていた。


「……NPCの竜、強そうだな」


「街を守るための存在だ」とヒロが言った。

「モンスターが街に入れないのは、あいつらのおかげだ」


 門に近づくと、門番のNPCがこちらを見た。


「旅の者よ、グランヴェルへようこそ」


 低い声だった。


「ここは騎士の街。強き者たちが集う場所だ。存分に腕を磨くがいい」


 扉が、ゆっくりと開いた。


 門をくぐった瞬間、喧騒が押し寄せてきた。

 石畳の道が中央広場へ向かって伸びている。両脇には建物が立ち並び、露店が所狭しと広がっていた。武具、素材、食料、地図——あらゆるものが売られている。プレイヤーたちの声が重なり合い、竜の鳴き声が混じる。


 リクレーンの賑わいとは質が違った。ここにいるプレイヤーたちは、装備が明らかに上だ。連れている竜も体格がいい。リクレーンで感じた「みんな初心者」という空気がない。

 リリース直後ながら先に先にとどんどん進んできたプレイヤーだろう。


「レベル帯が上がってる」


 ヒロが周囲を見渡しながら言った。


「リクレーンより先に進んできたプレイヤーが集まってる。俺たちより強い奴も多そうだな」


 二人は広場へ向かって歩き出した。石畳が足元で鳴る。リクレーンの桟橋の軋みとは違う、硬くて重い音だ。


 露店を覗きながら歩く。武具屋の棚には、リクレーンでは見たことのない素材が並んでいた。見たことのない鱗、見たことのない金属。値札を見ると、桁が違う。


「高い……」

「ここの素材は質が違う。それだけ強いモンスターからしか取れない」


 ヒロが一つの素材を手に取り、ウィンドウで確認してから棚に戻した。


「ただ、レオンとセラに合う装備もありそうだ。稼いだら戻ってこよう」


 広場の中央には、大きな噴水があった。水が石造りの竜の口から流れ落ち、夕陽を受けてきらきらと光っている。その周りに露店が円を描くように並び、プレイヤーたちが行き交っていた。


 陽はその光景をしばらく眺めた。


 リクレーンは湖の上の街だった。水と光と、どこか柔らかい空気。グランヴェルは違う。石と鉄と、戦いの気配。でも、それが悪いわけじゃない。むしろ——


「強くなれそうな場所だね」


 自然と口に出ていた。

 セラが陽の足元で、広場をじっと見渡していた。金色の瞳が、あちこちの竜を観察している。


 広場の端に、大きな建物が見えた。入口の上に紋章が刻まれている。翼を広げた竜と、騎士の兜。


「あれが騎乗試験の受付か」と陽が言う。


「ああ」ヒロが頷いた。


「明日、受けよう。今日は街を把握する」

「うん」


 陽は建物を見つめた。あの扉の向こうに、セラに乗るために必要な許可証が。。

 そのとき、セラが小さく鳴いた。建物の方を向いて、尻尾がゆっくりと揺れている。


「……セラも気になってるのかな」

「竜も試験を受ける。プレイヤーと竜、両方が合格しないといけない」

「セラが?」

「そうだ。竜側の試験は騎乗に耐えられる体力と、基本的な指示への対応力を見る」とヒロは言った。


「セラのステータスだと体力面は不安が残るが——動きは問題ない」


 陽はセラを見た。白い竜が、まっすぐ受付の建物を見ている。


「大丈夫だよな、セラ」


 セラは短く鳴いた。

 夕暮れのグランヴェルに、街の灯りが一つずつ点り始めていた。石畳が橙色に染まり、露店の明かりが広場を温かく照らしている。

 リクレーンとは違う。でも、ここにも確かに——生きた世界があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ